2014年11月2日(日)

日本企業がリードする燃料電池車の実用化は

PRESIDENT 2014年10月13日号

著者
中西 孝樹 なかにし・たかき
ナカニシ自動車産業リサーチ 代表兼アナリスト

中西 孝樹1986年オレゴン大学ビジネス学部卒業。94年より一貫して自動車産業調査に従事。UBS証券、J.P.モルガン証券などを経て、2013年ナカニシ自動車産業リサーチを創業、独立。『トヨタ対VW』(日本経済新聞出版社)など著書多数。

ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト 中西孝樹 構成=衣谷 康

自動車産業は、日本経済を支える重要な基幹産業だ。その自動車業界が未来の柱として見据えるのが、“究極のエコカー”燃料電池車である。

トヨタは燃料電池車「FCV」を発売すると発表した。ホンダも来年、燃料電池車「FCEV」を国内で発売するとしている。

FCVの予定販売価格は700万円程度。かつて、燃料電池車が1台1億円と言われていたことを考えれば、隔世の感があるが、それでも燃料電池車の開発はいまだスタートの段階にすぎない。大きな問題は、コストとインフラだ。

燃料電池車のシステムコストは、内燃機関の何倍も高い。水素を加圧して収めるタンクも重量、容積ともに大きすぎる。価格競争力がある段階に到達するには、まだ20年はかかるというのが私の見立てだ。

水素を補給する水素ステーションも、まだ全国20カ所程度。3万を超えるガソリンスタンドとは比較にならない。コストとインフラは鶏と卵の関係に似ている。FCVが鶏、インフラが卵。どちらかが進歩しないと、もう一方も進化できない。

なんにせよ、燃料電池車がほかのパワートレイン(動力伝達機構)と比して競争力を持つようになるのは、早くて2030年代。それも、おそらく燃料電池車がいまのガソリン車のように一人勝ちになることはないだろう。将来的には、内燃機関にハイブリッド車、電気自動車に燃料電池車など、多様なパワートレインが混在する「パワートレインミックス」の時代が来ると考えている。

燃料電池車に対する取り組みも、国によってかなり温度差がある。しかし、原発事故を起こし、資源も持たない日本にとって、水素という有力なエネルギー源を活用しない手はない。20年の東京五輪などを一つの起爆剤として、国を挙げて取り組む価値は十分にある。

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