「ゼロ×ゼロ」発泡酒戦争のゆくえ

キリンビールマーケティング部商品開発研究所の田山智広所長。

この9月、酒販店やスーパーのビールコーナーに「プリン体0・糖質0」を前面に打ち出した発泡酒が勢揃いした。サッポロビールの「極ZERO」が先行したが、健康志向を高める消費者の好反応を商機と見たキリンビール、アサヒビール、サントリーが追随。このところビールと格安な第三のビールの挟み撃ちで苦戦していた発泡酒市場が元気を取り戻している。

キリンビールでは、プリン体ゼロ×糖質ゼロの「淡麗プラチナダブル」を投入。発売から1週間で「極ZERO」を抜いて首位に立ち、発売から1カ月で、100万ケースを達成した。この熾烈な競争は“ゼロ×ゼロ発泡酒戦争”と呼ばれているが、早くもキリンとサッポロが抜け出した感がある。

「1998年の『麒麟淡麗〈生〉』発売以来、当社はこの発泡酒市場を牽引してきました。特に機能性発泡酒においては、2002年に糖質70%オフの『淡麗グリーンラベル』を発売。翌03年にプリン体90%カットの『淡麗アルファ』を、09年には99%カットした『淡麗W(ダブル)』を発売。時代と共に変化するお客様の声に答えるべく、これまで長い間、機能の研究を続けてきました。そんな中、今回のプリン体0.00、糖質0を実現した『淡麗プラチナダブル』は、発泡酒市場のパイオニアとしての矜持を持って挑んだ商品です」

こうアツく語るのは、キリンビールマーケティング部商品開発研究所の田山智広所長である。入社以来、ビールづくりの専門分野に関わり、この淡麗ブランドにおいては、発泡酒でありながらビールに負けない“うまさ”を追求し、幾度のリニューアルを重ねるなど、うまさの改善・改良を続けてきた。

結果として、この“うまさ”が多くのお客様に評価され、淡麗ブランドは発泡酒市場の約7割という高いシェアを獲得した。つまり、これまで発泡酒市場はキリンビールの独壇場であり、この発泡酒戦争の勃発により、厳しい戦いを強いられることになったのである。

そんな中、淡麗プラチナダブルが好スタートをきった要因を、田山氏はこう分析する。

「“淡麗”というトップブランドへの安心感・信頼感が大きいでしょう。糖質やプリン体を減らした発泡酒を購入するのは、自分の体のことを心配しなければならない人たち。この人たちは“機能”と“うまさ”にかなり敏感です。私自身も、どうせ飲むなら美味しいものが飲みたいですから。各社が足並みを揃えてゼロを強調する中、キリンが、これまで淡麗アルファや淡麗Wとプリン体カットの研究を誠実に続けてきたこと、そして淡麗ブランドとしての“うまさ”の確からしさ。この2つの事実が、多くのお客様に支持されたのだと思います」