日本が元気を取り戻すためには、グローバルよりローカル経済圏の立て直しが欠かせない――。そう主張するのは、経営共創基盤CEOの冨山和彦氏。なぜローカルが日本経済復活のカギを握るのか。田原氏が核心に迫る。
冨山和彦氏

最低賃金を払えない企業は退出

【田原】安倍さんは、アベノミクスで地方を創生するといっています。僕は地方にお金をばらまくだけになるんじゃないかと心配しています。冨山さんはどう思う?

【冨山】政策担当者の頭の中には20年間のすり込みがあって、いまでも需要が不足しているという感覚が残っている可能性があります。そうすると、ばらまきになるでしょうね。法人税の減税もそうです。単純に法人税を下げればいいという話ではないですよ。

【田原】税制は変えなくていい?

【冨山】企業が生産性を高めることに対してエンカレッジする税体系に変えるならいいんですよ。いま日本で法人税を払っているのは約30%です。つまり儲かっている生産性の高い会社だけが税金を払っていて、生産性の低くて利益が出ていない会社は払っていないのです。これでは企業は生産性を高めようという気になりません。生産性が高かろうが低かろうが、みんなが薄く広く税金を払う税制にしたほうがいい。

【田原】ローカルを活性化させるのに、ほかにどんな政策が考えられますか。

【冨山】あとは賃金です。賃金はいま上がりつつありますが、最低賃金を思い切って1000円くらいにしてしまえばいい。払えない会社は退出してもらえばいい。いまは、人が足りない状況なので、失業は生まれません。海外からの観光客誘致のような話も、それが高賃金で安定した雇用を生まないと意味がない。

【田原】これも新陳代謝を促す政策ですね。

【冨山】もう一つ、「コンパクトシティ化」する必要があります。ローカル型の産業は、規模より密度の経済です。たとえばバス会社でいうと、人がパラパラと分散しているより、密集して住んでくれているほうが効率はよくなる。人口100万人の県なら、40万人の中核都市2つに集まって住んでくれると、企業の生産性も劇的に改善するでしょう。

【田原】でも、日本には住む自由がある。コンパクトシティといっても、うまくいくかな。

【冨山】もちろん力ずくで移住させることはできないので、移住してもらうためにいろいろな動機づけが必要です。昨冬、大雪で山間部の集落が孤立したことがありました。あのような天災が起きると新しく道路をつくるべきだという話になりがちですが、あれはよくない。新たに道路をつくる予算があれば、その地域の人たちが都市圏に移住するときに補助金を出してあげたほうがいいです。