確かな情報、データが
計画のベースに

──財産の把握はともかく、不動産財産の分類など、個人では難しそうです。

【小野】土地オーナーのなかには、不動産セミナーなどを活用し、自分で主体的にやっている方はいます。また「失敗しない正しい手順」の「(2)市場調査を徹底的にする」なども、住宅・不動産の情報サイトを使えば、相応のデータを得ることが可能。実際に自分で周辺を見て回り、不動産屋さんに聞いてみるとか、個人でできることも多い。もちろん不動産会社やハウスメーカーから情報を得てもいいし、当社のような第三者機関を使ってもいいでしょう。いずれにしても、確かな情報、データがあってこそ、「(3)基本計画を考える」ことが可能になります。

──「基本計画」はどういう内容になるのでしょうか。

【小野】賃貸住宅建築の時期やボリューム、構造、工法、資金計画などを明確にします。基本構造躯体が違えば、減価償却期間も変わります。それによって収支計画も影響を受ける。計画が本来の目的に合致しているかどうか。リスク回避がなされているか。自分の将来プランを含めて、何度もシミュレーションを重ねて决定していきます。

その手順を踏んで、「(4)施工会社の選定と実施計画」「(5)施工会社の決定」という段階に進みます。先に述べたとおり、ハウスメーカーなどでも市場調査を行ってくれますので、やはり複数の会社に声をかけ、プランや収支計算とあわせて提案してもらったり、必要に応じて、保証なども提案してもらうのがいいでしょう。

その際、営業担当との相性というのも案外大事になります。こちらのニーズや思い、さらには自分の性格まで理解してくれる営業担当かどうか。ここが噛み合わないと、結果的に大きな後悔につながることもあります。

多様な選択肢に
目を向けることが大事

──「賃貸アパート」以外にも、土地活用のバリエーションが増えているようですね。

【小野】最近だと遊休地への太陽光発電の設置も増えています。また幹線道路沿いであれば、コンビニやレストラン、倉庫などのニーズも高い。地代・賃料収入を得る目的なら、一般居住者だけでなく、事業者を対象にする手法も当然入ってきます。事業用定期借地権も近年整備されており、これを活用するのもケースによっては効果的。選択肢を狭めることなく、最も有効な活用方法を考えてほしいですね。

──最後に、土地所有者へアドバイスをお願いします。

【小野】現在、インフレへの動きも見られ、公共工事の活発化や東京五輪関連の建設需要もあり、建築資材や人件費も上昇しています。一方で借入金利は、史上最低です。もし、具体的に活用すべき土地があるならば、先延ばしするより、早く動いた方がいいかもしれません。収支のシミュレーションを行ってから、実際に建物を建てるまでにはタイムラグがありますから、仮にインフレが進めば、事前の計算が成り立たなくなることも考えられます。

もちろん、その大前提として冒頭述べたように、「自分の現状をしっかり把握」し「目的・目標を明確にする」こと。私のアドバイスは、これに尽きます。