来年1月からスタートする「相続大増税」。さらに建築費高騰や消費再増税をにらみ、土地活用への関心が高まりを見せている。総合不動産コンサルタントの小野信一氏に、失敗しないためのポイントを聞いた。
──相続税改正などもあり、土地活用の環境が変化しています。専門家として現状をどう見ていますか。
小野信一●おの・しんいち
総合不動産コンサルタント
ネクスト・アイズ(株)代表取締役

1963年生まれ。不動産会社、大手ハウスメーカーを経て、第三者の立場で不動産や住宅資産に対し、公正・中立的なアドバイスをするコンサルティング会社、ネクスト・アイズを2004年に設立。消費者向けの講演活動も全国で展開している。著書に『家づくり必勝法』など。

【小野】相続税の増税が決まり、土地所有者はその対策に余念がありません。財産のなかで、一般に土地の占める割合は大きい上、課税対象者が東京都心部だと3人に1人になるとも予想されている。富裕層でなくても心配するのは当然でしょう。しかし一方で、全国平均だと対象者は4%が7%になる程度ともいわれ、多くの方は該当しない。ですから、まずは家族、親族で課税相続額を把握するのが、土地活用の大前提です。

そして、次にやってほしいのが不動産財産の分類です。土地を「収益性」と「流動性」の2つの観点から見直し、「残す」「利用する」「備える」「処分する」、いずれの対応をするか考えるのです。例えば、収益性も流動性も高い土地は、「残す」資産になるでしょう。相対的に収益性が高く、流動性がそこそこであれば、賃貸経営など「利用する」ことが考えられます。また、収益性はそれほどないが、流動性が高い土地は、駐車場などとして納税資金や代償分割資金に「備える」ことに利用できます。相続税の課税対象とならなくとも、財産があれば“争族”は起こる可能性がある。財産の現状をしっかり把握することは、やはり相続対策の出発点となります。

──では土地を活用するとして、どんなポイントが考えられますか。

【小野】例えば、賃貸経営のメリットは土地保有税や相続税の軽減のほか、レバレッジ効果のある収入が確保できること。一方で、空室リスクや管理リスクなどがあることも知っておきたい。そして、もっと気をつけたいのは「正しい手順を守りましょう」(次ページ図表参照)ということです。図の(1)(2)(3)を省いて、いきなり(4)に行く人が少なくありません。これは先に述べた相続額の把握とも関係するのですが、まずは賃貸住宅を建てる「(1)目的と目標を決定する」こと。これは分不相応な計画を避けるための絶対条件です。

具体的には賃貸経営の目的が、安定収入なのか、節税なのか、相続・贈与対策なのか、投資なのかをはっきりさせる。それによって「貸家建付地や小規模宅地の税の軽減」などを活用するときのボリュームと予算が変わってくる。相続対策なら例えば賃貸戸数を10戸程度に抑える、投資目的なら限度いっぱいの20戸にするなど、プランが変わってきます。