鈴木謙一●すずき・けんいち
(株)セレコーポレーション
取締役 執行役員 営業本部長

2002年12月、セレコーポレーション入社。取締役営業本部長、執行役員集合住宅事業部 営業本部長を経て、2014年5月より現職。
入居者を「ゲスト」と呼び、住まう人に「感動空間」を提供する。そんな事業スタイルで注目を集めている企業がある。「アパート経営の専門店」──セレコーポレーションだ。2002年の設立以来、首都圏を事業エリアに、約1500棟・1万5000戸のアパートを手がけてきた。「入居率約95%」という安定感に加え、斬新な商品で賃貸アパートの分野に新風を吹き込んでいる。同社の鈴木謙一取締役に、独自性の高い事業を支える取り組みや理念について聞いた。

潜在的な要望を満たし
他社との差別化を図る

東京メトロ銀座線・京橋駅直結「相互館110TOWER」の5階に、セレコーポレーションの本社はある。同フロアに実際のモデルルームを併設し、イベントホールではアパート経営のセミナーなどが開催される。「税理士やファイナンシャルプランナーを招いたセミナーはおかげさまで好評。多くの方にご来場いただいています」と鈴木謙一取締役は言う。

セミナーが人気を集める背景には、同社の「My style」シリーズなどの順調な伸展もある。「My style」は、セレコーポレーションが3年前から展開するコンセプトアパート。主に単身者ゲスト(入居者)をターゲットに、独自の空間設計などで、他社との差別化を図っている。

日本の総人口が減少する中、人口集中が続く首都圏。なかでも単身世帯は増加傾向にあり、賃貸住宅へのニーズは依然高い。しかしこれまで、「そのニーズに、本当の意味では応えられていなかった」と鈴木氏は分析する。

「例えば、約25平方メートルの単身者向けの物件。かねてより6畳間にキッチンとユニットバスという仕様が一般的で、そこには多様性も、ゲストの感動や共感もほとんど存在しませんでした。住む人の潜在的な要望を満たすことが、長期間に及ぶアパート経営の成功の条件ではないか──そんな思いが『My style』をはじめとするオリジナル商品を開発する出発点となったのです」

通常1Kの広さに
ベッドスペースを実現

ゲストの満足こそが、結果的にアパートオーナーの利益にもつながる──。「feel」という商品も、そんな同社の理念を具現化したものの一つ。これまでの常識に挑戦した賃貸アパートだ。

「一般に単身者が最も望む間取りは、寝室を設けられる1LDKです。しかし、それを実現するには通常30平方メートルほどの床面積が必要で、家賃も相応のものになってしまいます。そこで私たちは、部屋の形を工夫することで、通常1Kの広さである約25平方メートルの中にベッドスペースをつくり出せないかと発想しました。そうすれば、家賃を抑えながら、1LDKの暮らしのように『食べる・くつろぐ・寝る』を分けられ、ゲストにより快適でメリハリのある暮らしを提供できる。そこに感動や共感が生まれると考えたのです。モデルルームを見ていただいても、それが25平方メートルだと分かる方はほとんどいないと思います」


「feel」の間取り例を俯瞰した図。斬新かつ効率的な設計であることがよく分かる。

25平方メートルの可能性を徹底的に追求した「feel」。実際のゲストも「帰るのが楽しい」「インテリアにこだわりたくなる」と高く評価。また「引っ越してから友人を招くようになった」と暮らし方にも変化が表れているようだ。