2014年9月16日(火)

中国の反腐敗キャンペーン、習近平の思惑

大前研一の日本のカラクリ

PRESIDENT 2014年9月29日号

ビジネス・ブレークスルー大学学長 大前研一/小川 剛=構成 AP/AFLO=写真
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中央紀律委員会に摘発された大物政治家

「トラ(老虎)もハエ(蒼蠅)もまとめて叩く」

中国の習近平国家主席が中央紀律検査委員会の演説で言ったとされる言葉だ。共産党内部に蔓延する汚職・腐敗の一掃を宣言したもので、「トラ」は党中央で大きな腐敗を行っている指導幹部を、「ハエ」は地方レベルで小さな腐敗に手を染めている官僚や役人を意味するといわれる。要するにトラもハエも区別なく摘発する強い決意を国民に向けて示したのである。

そして今年7月、ついに一匹の大トラが狩り出された。胡錦濤政権で中央政治局常務委員(当時の党内序列は9位)を務めた大物政治家の周永康氏を中央紀律検査委員会が摘発、「重大な規律違反の疑い」で取り調べることが決まったと中国国営通信社の新華社が報じたのだ。

三権分立していない中国では共産党が取り調べを行うと発表した時点で、ほぼ容疑が固まっているのが通例。党の取り調べ後に検察が立件するので、周永康氏の起訴→有罪判決はほとんど確定したも同然である。

周永康氏は北京石油学院を卒業後、一貫して石油畑を歩き、中国石油天然気集団公司(CNPC)総経理や国土資源部長(大臣)を務めるなどエネルギー業界に影響力を持つ「石油閥」の有力者だ。2002年に党中央政治局委員に選出されて以降は公安部長、警視総監、国務委員などの要職を歴任、07年に中央政治局常務委員まで上り詰めた。

石油業界や公安閥を中心に積み上げた不正蓄財は900億元(約1兆5000億円)に上り、すでに当人と親族から押収したと報じられている。12年に失脚した薄煕来氏の場合、3億~4億円程度の収賄罪と横領罪で訴追されたが、当時、薄ファミリーの不正蓄財は2000億円を下らないといわれていた。

党中央では政治局委員、大連市や重慶市などでトップを張った薄煕来氏クラスで蓄財額は2000億円、石油利権や鉄道利権、軍事利権などを持っている指導幹部クラスになると1兆円といわれている。

かつて米ニューヨーク・タイムズ紙が、温家宝前首相の一族には2700億円の不正蓄財があると報じたことがあった。温家宝氏といえば被災地に赴いた映像の印象が強く、胡錦濤政権では庶民派で清廉潔白なイメージがあったが、そういう人物でさえ、である。習近平氏だって一族郎党を調べ上げたら、半端ではない額の蓄財が出てくるに違いない。

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