土地バブルが政治家や役人の不正蓄財の温床に

以前、胡錦濤前国家主席の給料を調べたことがある。年俸1300万円だった。一方、北京大学あたりを出て役人になった中国人の初任給は大体、年俸で60万円。それぐらい優秀な人材であれば、民間企業に行けばその10倍、600万円はもらえる。外資系ならさらに倍の1200万円はもらえるから、20代後半で運転手付きの生活が送れる。

だが、役人をやっている限りは年俸60万円から始まって、トップの国家主席に上り詰めても1300万円しかもらえないのだ。もちろん、そんな緩やかな給与カーブで桁外れの蓄財ができるわけがない。役人の給料が安いのは、国民の目を欺くための方便にすぎない。中国はすべて共産党の許認可行政。給料は少ないのに権限を持っていたら、それを使って実入りを増やそうとするのは、“人間の摂理”だろう。

この20年の中国の経済発展の原動力であり、政治家や役人の不正蓄財の温床になってきたのが土地バブルである。

中国の土地はすべて共産党のもので、その開発権限を握っているのは地方の共産党であり、各自治体だ。

農民に与えられた農地を、地方自治体は一方的に買い上げることができる。買い上げ価格は将来的に農業を続けた場合にどれくらいの収益が上がるかという収益還元法で決まってくるが、農地の収益などたかが知れている。そうやって安く買い叩いた土地を商業地などに指定替えして、民間のデベロッパーに49年リースとか74年リースで転売する。そのときには商業施設や工業団地をつくったり、物流基地や港湾として開発したときの将来価値で売りつけるから、50倍、100倍の値段になる。

土地の名目を変更しただけで莫大なリース料(に基づく現在価値に相当する現金)が入ってくるから、中国の各自治体は税金に依ることなく、都市建設や産業基盤の整備ができた。発展する地方都市では、この収入が税金とほぼ同額ある。この土地マジックによって中国は人口100万人以上の巨大な地方都市を180以上もつくり上げてきたのだ。