大企業の「働き方」を変えたい

で、僕の事業はそうした転換期にあるいま、企業と人材との間を可視化することで、企業の採用力を取り戻したいという思いでやっているんです。

企業が自分で考えて自分で採用することは、世界では当たり前です。一方、日本では人材業界が企業に採用力をつけさせなかった。それを修正する。そうすることで働いている人たちにとっての選択肢をより多く生み出して、より本質的に効率的で効果的な働き方を日本社会に広げる。それがこの会社を始めた理由であり目的なんです。

社会を変えるためにはベンチャーに優秀な人が来るのは大事だけれど、「働き方」というのはやっぱり大企業が変わらないと変わりません。

大企業の働き方を変えるためには、優秀な人材をより早く安く外部から採用できるようにする必要がある。働く人が健康診断を受けるように、自らのキャリアの市場価値を常にチェックできるようにする。楽天市場が卸売業者を介さずに買い手と売り手をつなげることで物販の世界で起こしたイノベーションと同じように、人材業界によって遮断されていた情報をすべてオープンにすることで、買い手と売り手を直接結びつけるようにする。その動きを巻き起こしたいのです。

そしてこの事業を進めていく上で、僕はこのビズリーチという会社を2次産業から3次産業への転換期に合わせた雇用体系、文化を体現する組織にしたいと考えています。具体的には徹底的な成果主義と仲間意識が両立している組織にね。

僕は小学校から大学までサッカー部だったんですが、それは部活みたいな組織と言い換えられると思う。走り込みもあれば合宿もある。つらいけれど、サッカーが好きだからやる。学校にも行く。

そうして大事な試合の時に活躍したり、勝ったりしてみんなで肩を組み合って喜んだあの瞬間を会社というもので再現したいんですね。一つひとつの出来事で本当に涙が出るような瞬間を、あと何回この会社で体験できるのか、演出できるのか。そういう瞬間をつくるためにこの会社を運営しているし、それを味わいたい人が集まってくるのが理想です。

いま企業を経営していて思うのは、会社にエキサイトメントがなくなり、感動や刺激がなくなったら社員は辞めるということ。優秀な人であればあるほどそれが普通の感覚になっているし、そういう時代になってきている。働く個人の側に「変わる準備」はもうできている。あとはそういう価値観を持つ人材を、企業や社会がどれだけ受け入れていこうとするかです。

ビズリーチ:ハイクラス人材に特化した会員制転職サイトを運営。設立は2009年。社員数310人。
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