2014年7月29日(火)

事業は「社会を良くする」から逆算できない

働き方のリアル ベンチャー篇【19】レアジョブ 加藤智久

PRESIDENT Online スペシャル

著者
稲泉 連 いないずみ・れん
ノンフィクション作家

稲泉 連

1979年、東京都生まれ。2005年、『ぼくもいくさに征くのだけれど』で大宅壮一ノンフィクション賞を史上最年少で受賞。その他の著書に『仕事漂流』『復興の書店』など。

執筆記事一覧

稲泉連=インタビュー・構成
1
nextpage
レアジョブ 加藤智久
1980年生まれ。一橋大学商学部卒業後、外資系戦略コンサルティングファーム・モニターグループを経て2007年、レアジョブ設立。同社代表取締役社長。

新しい事業を成功させる上で第一に重要なのは「伸びる市場の波に乗ること」だと思います。確かにベンチャーでは優秀な人たちが集まって懸命に働くことはとても大切なんだけれど、波がなければ大きくはなりにくい。その「波」が何であるかを日常的に考えているので、最近の起業家は僕も含めて「社会を良くする」といったキーワードを結果的に語る人が多いんじゃないですかね。

僕は高校時代から大前研一さんの一新塾に通っていたような人間で、テックバブルだった1990年代の終わりに大学生活を過ごす中で、1年生の頃からITベンチャーでインターンをしたりしていました。その会社はもうなくなってしまいましたが、携帯電話のメールサービスやポイント制サイトなどの事業の立ち上げに携わって、ゼロから何かをつくることの面白さに初めて触れました。

ただ、当時はやっぱり「バブル」だったんですね。雰囲気としては、「IT」でありさえすれば事業内容に中身がなくても、どんどんお金が集まってしまう感じで。パワーポイントで社長に言われた通りにちょっとした資料を書いて、つくった自分自身が「うーん」と思っていても出資者がお金をポーンと出してくれた。でも、バブルは所詮バブルですから、いつかは破裂して終わるわけですね。一方で本物の時代の波というのは、盛り上がったままさらに大きな波へと変わっていくものです。

その意味で僕がITバブルの時代を経験して実感したのは、短期的にお金が儲かる方法は実際にあるけれど、中長期ではやっぱりそれは成り立ちえないんだということでした。

本物の波がいつまでも続いていくのは、それが社会のためになる、あるいは自分たちの生活を豊かにしてくれると多くの人が感じるからです。人類の長い歴史の中で自由主義経済が生まれ、無数の会社を生み落され、その中でいろんな科学技術が生み出された結果、いまの豊かな生活がある。100年後の未来に、自分たちのしていることが社会の中にどう位置づけられているか。そのことを切り離して事業を考えていては、短期的にはともかく長期的に成功できる道は見えてこない。

つまり何かの波に乗ってお金を稼ごうとすれば、常にその波が本物かどうかを見極めなきゃいけない。そのためにも、自分たちの事業が本当に社会に役立つことなのかを考えざるを得ないんです。だから起業家やベンチャー企業で働く人たちの多くは、意識的に未来の社会について考えようとするし、その社会を良くしたいと自ずと語り始めるのでしょうね。レアジョブも「Chances for everyone, everywhere.」という理念を掲げていますが、世界中の人々が国や言語の壁を越えて活躍できる社会をつくろうと、日々努力しているところです。

PickUp