「求めること」と「今の行動」のギャップを埋める
今回は、外資系企業時代に世界142カ国の中で売り上げNo.2の営業実績を持つ和田裕美さんに、営業時代の経験を踏まえてコミュニケーションテクニックをうかがった。
「相手が本当に求めることと、今の行動のギャップを埋めていくことが、信頼され売れる営業の秘訣です」
和田さんは、これが営業における重要な作業であり、売れる秘訣だと語っている。
まずは“求めること”と“怖がっていること”のギャップを埋めることが必要になるというが、それはどういうことだろうか。たとえば英会話を勧める場合であれば、「英語が話せるようになりたい」というわくわくした欲求が「マスターできるかわからない」「お金が払えるか不安」などの恐怖を乗り越えて行動を起こしてもらうことだという。その最初のステージで何より必要なのは“相手に自分を受け入れてもらう”こと。特に自分の企業の知名度がない場合は、それを売る人間の“人柄”が勝負を決めることが多くなるだろう。
和田さんは、海外の企業に見られる営業方法で、店頭に立ってお客様に声を掛け、実際にスクールにお連れして契約をとる形の営業をしていたそうだ。その際、常に心がけたのは次のようなことだった。
「売りたいという気持ちが全面に出た営業然としたスタイルではなく、その場が温かくなるような存在となり、いつも笑顔で楽しそうにすること。書店員さんのように本のある場所をお答えするなど、その環境に同化してしまうことが最初の“会話のきっかけ”をつくります。そして、相手が安心して話を聞けるような環境を整えるために、自社の伝統や歴史を伝える“外堀トーク”から始めます」
信頼性がある人や情報源から勧められたものは受け入れるが、見ず知らずの人に「さあどうぞ」と言われても、すぐには受け入れられないことがある。こうした“信頼できる人からの情報”の価値が高いのは、近年のSNSの口コミ効果にもみられるとおり。まずは顧客との垣根を取り払い、自分自身を信用してもらうことから始めるわけだ。
これは、あらゆるプレゼンやコミュニケーションに有効であり、この連載でもいろんな形で登場してきた。つまり「信頼され好感をもたれ、『YES』と受け入れてもらった瞬間に、その説得は8割がた成功したようなもの」というわけだ。
では、どんな風にターゲットを絞り、会話を展開していけばいいのだろうか。