孫正義氏がこれまでに経験したタフな場面をケーススタディの形で完全再現。
あなたは正しい判断を下せるだろうか。
Q. 出版する雑誌8誌のうち7誌が赤字に
ソフトバンクが創刊した「Oh!PC」はNECのPC8000シリーズなどを、また「Oh!MZ」はシャープのMZ-80Bシリーズなどを大々的に展開する特集が売りだった。出版事業の初年度の売上高は8億円、2年目に35億。しかし数年後、売れ行きはガタ落ちし、累積2億の赤字となった。そこで選択。A案は、工夫を重ねて立て直しを試みる。B案は、赤字削減を優先し赤字誌の廃刊を決行。
【A】立て直しを試みる【B】赤字の7誌は廃刊する(正答率50%)
主力事業2つのうち1つが大赤字になったらどうするか。部分撤退してその事業を立て直すか、スパッと見切って完全撤退し、残りのひとつに集中するか。業種や時代背景など前提条件によって結論は異なるでしょうが、僕は、部分撤退&立て直しを迷わず選択しました。
1982年、ソフト卸業とほぼ同時に始めた主力事業がパソコン雑誌の出版です。読者にパソコン関連の最新ニュースを提供することで、高度なデジタル情報化社会のベースとしてもらおう。「Oh!PC」「Oh!MZ」などは売り上げも好調で、発行点数も徐々に増えていきました。しかし85年頃、発行する8誌のうち1誌だけが黒字で、残りは全部赤字。年間赤字は2億に達しました。
当時の役員会議では僕以外の全員が、「出版事業はまずい。このままでは本体(ソフト卸業)がやられる」と出版部門は売却か完全閉鎖、という結論になりました。しかし僕は、そこで机を叩いて叫んだ。
「冗談じゃない。撤退論は絶対に受け入れられません」
出版事業は、来るデジタル情報革命へのプロセスとして欠くべからざるもの。だからこそ必死に立ち上げ、軌道に乗せた。何の人脈も実績もなかったため、苦労しました。それだけに簡単にやめるわけにはいかなかったのです。