市場の縮小が続くビール業界で、アサヒビールが健闘している。「スーパードライ」を基軸に据え、プレミアムビール分野にも本格参入するアサヒビールの戦略を小路明善社長に聞いた。

やりくり消費からメリハリ消費へ

アサヒビール社長 小路明善氏
――昨年のビール類販売実績が1億6320万箱(大瓶20本換算)と前年を超えた。加えて、この1月末にはアサヒグループHDの株式時価総額が上場後はじめてキリンHDを逆転した。

【小路】昨年の業績が良かったことで、今年は、好スタートが切れたと思う。昨年はビール類の総出荷量が前年比1%減るなか、前年を4万7000箱上回り、営業利益も1000億円を超え、過去最高を更新した。この勢いを駆って、今年は0.2%増の1億6350万箱を目指していく。株価については、グループに対する投資家の企業価値の認知であるとともに、企業の将来性を評価してもらったことだと理解している。その意味ではわれわれの自信につながったし、得意先や取引先が当社を事業パートナーとして、より一層高い期待をしてくれるものとプラスに受け止めている。

――ギフト専用だった「ドライプレミアム」を、この2月から通年で店頭販売するという。このプレミアムビール分野ではサッポロとサントリーが先行しているが勝算はあるか。

【小路】トップブランドをさらに強くしていく戦略だ。このところの景気回復感により、消費者行動が“やりくり消費”から、多少値段が高くても生活シーンに合わせて、飲みたいビールを選ぶ“メリハリ消費”に移った。そこに「スーパードライ」のプレミアムビールを投入すれば顧客の共感は得られるだろう。今年は320万箱の販売が目標。というのも、プレミアム市場は昨年1割伸びている。箱数にして2900万。今年も1~2割増加を予想していて、その増加分の何割かを獲得したいと考えている。

私が社長に就任して2年半、いちばん重視してきたのはブランド資産の最大化にほかならない。具体的には「スーパードライ」の進化とエクステンション、すなわち姉妹商品の拡充だ。実は「スーパードライ」は、発売28年目にして革新的な酵母管理技術を導入し泡のキメの細かさ、辛口のキレを1割向上させた。

一方、エクステンションでは一昨年「ドライブラック」を発売し、黒ビール市場全体を6倍に拡大した。プレミアム参入も、この路線の一環だ。ネームバリューがあるから一定の販売量が狙え、価格も高めなので売上高、利益率も見込める。いわば、ローリスク・ハイリターン経営になると考えている。