意中の女性へプロポーズしたら、彼女の黒目が右へ動いた。さて、彼女の本心は? 表情、しぐさは雄弁だ。その意味をマスターすれば、相手の深層心理が手に取るようにわかるのだ。

見分けやすいのは「相手の顔の左半面」

顔の表情の基本は大きく7つに分けることができる。すなわち、「驚き」「笑い」「恐れ」「嫌悪」「軽蔑」「怒り」「悲しみ」の7つである。実際には、これらが少しずつ入り交じることで多様な表情がつくられる。面白いことに、この7つの表情の典型的な写真を見せて、「この表情は何の表情か」と質問してみると、かなりの数の日本人が「恐怖」「怒り」「軽蔑」「嫌悪」の4つを他の表情と取り違えてしまう。日本人はあからさまなこれらの表情を目にする機会が、比較的少ないからである。

たとえば、典型的な「怒り」の表情では、まず眉が引き寄せられて眉間に皺ができる。上瞼が持ち上がって黒目が大きく見え、さらに唇は左右に引っ張られ、特に上唇がプレスされて赤い部分が見えなくなる。ところが、日本人の場合は、怒りを目だけで表現する場合が多いのだ。上瞼をクっと引き上げて、眼光鋭く相手を睨んでいたら、たとえ眉間に皺が寄っていなくても怒っている場合が多い。

また、スクイントといって目を細めるのも、「怒り」あるいは「反発」の表情のひとつ。会議中、あなたが発言するのを目を細めて聞いている人がいたら、あなたに反発を感じている可能性が高い。

「軽蔑」も日本人には見分けにくい表情のひとつだ。「軽蔑」の特徴は右か左、どちらか一方の口角を耳の方向にわずかに引いてプレスすることである。つまり、相手を軽蔑しているとき、人間の顔は左右が非対称になるわけだ。

たとえば上司であるあなたが部下へ、こう質問したとしよう。

「うちに梱包材を納入しているのは、A商事だったかな」
「いえ、B商事ですよ課長」

部下がこのように丁寧に答えてくれた後で、一方の唇の端を一瞬でもキュっと引いたら、部下はあなたのことを「課長のくせにそんなことも知らねぇのかよ」と心中で軽蔑していると考えていい。