安倍晋三首相悲願の国家安全保障会議(日本版NSC)が年内に始動する運びだ。モデルは米国のNSC(National Security Council)。外交と安全保障政策の司令塔として一体的政策運用を行う。安倍氏は第一次安倍政権で設置を模索したが、果たせなかった。NSC事務局トップの「国家安全保障局(安保局)」初代局長には、首相の側近中の側近、谷内正太郎内閣官房参与(元外務事務次官)の就任が内定。NSC設置関連法案は11月中に参院で可決・成立する。

官邸筋によると、初代安保局長の候補は、当初、谷内氏ではなく、米政府・議会に太いパイプを持つ加藤良三元駐米大使(前プロ野球コミッショナー・現三菱商事取締役)が有力視されていたという。

「加藤氏の米国人脈は谷内氏以上。ところが加藤氏はプロ野球の統一球の仕様変更問題で、変更の公表を怠ったばかりか、記者会見で責任を追及されても“変更を知らされていなかった”“不祥事を起こしたとは思っていない”と居直り、ファンから苦情が殺到。加藤氏は“猛省している”と言いながらもポストに居座ろうとしたが、10月の日本シリーズ前に辞任に追い込まれた。このチョンボがなければ初代局長は加藤氏になっていたはず。もう1人の局長候補の谷内氏が局長就任をずっと嫌がっていたしね」(官邸筋)

谷内氏は、昨年暮れの第2次安倍政権発足時に、安倍首相のたっての要請で内閣官房参与に就任。首相の外交ブレーンとして訪中するなど側近として活躍した。

その一方、東京電力顧問、セーレン取締役、鹿島建設顧問、富士通取締役、インターグループ社顧問などを務め、「鹿島建設所有の赤坂のマンションに個人事務所を構え、秘書も置き、講演活動も自由にこなしてきた」(全国紙政治部記者)。

「内閣官房参与の場合は、役人と違い制約が少なく、講演でもある程度自由に発言できた。谷内氏はこの生活が気に入っていて“もう役人はこりごり”と以前から言っていた。加藤氏がチョンボでこけて、官邸から何度も安保局長就任を打診されても“せっかく政治家に気兼ねせずモノが言えるようになったのに、安保局長になったら、また発言と行動を制約される”と断り続けた。だが安倍首相が直接乗り出して何度も口説かれ、結局、断れなくなった」(全国紙政治部デスク)

長らくわが国の課題だった、明確な戦略を基にした国家運営を期待したい。

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