【PRESIDENT】例えば比較的安定している企業で仕事をしていて、危機感が実感しにくい人もいると思います。そんな人に、いきなり「独立するつもりで」と伝えてもピンとこないのではないでしょうか。そんな人でも、危機感を持つために意識できることはありますか?

【中司】危機感を持つためには、現状を数字などの指標で“見える化”することが大切です。中小企業、零細企業の社長たちが、なぜしたたかに仕事をできるかといったら、やはり売上や利益など数字と隣合わせだからだと思います。

【俣野】僕自身、30歳まで危機感が薄い状況でした。終身雇用のレールに自分が乗ったと思っていたので、定年前にそのレールが途切れてしまうことなんてないと考えていた。ところが現実はリストラの対象となってしまった。こういうショックなことが周りに起きれば、人間は考え方を変えて成長することができると思います。でも、それでも考えることができない人もいっぱいいました。そこでお薦めするのは、試しに会社に内緒で転職活動をしてみるんです。意外に自分が高く売れないとわかるので。例えば1カ月、真面目に転職活動をしてみると、「え? 俺、こんな価値でしか売れないの?」ということを実感させられる場合が多いと思います。「もうちょっと踏ん張って自分の価値を上げていかないと、この会社から切られたら、俺、終わりじゃん」。そういう現実がわかってくる。労働市場の中での自分の価値が意外に低いことに気づくと思うんですよね。

【中司】そこで、現状を認識できたら、少しずつでもいいから“自分を変化させて”いってほしいんです。その時に自分を認識するのを邪魔しがちなのが、今までの思い込みです。その思い込みを取っ払わないと、自分のどこを変えたらいいか気づけない。その固定概念を取り去る作業に有効なのが、考えていることを1度紙に書いて頭の中を整理すること。まず紙に書き出して、1度冷静に見直してみる。すると自分の考え方を客観視することになるので、現状の自分からまずどこを変えていけばいいのかがわかりやすい。直感だけで自分を改善して行こうとしたら、「自分はすべて正しいので、わざわざ変えることはない」と人間は思いがちです。そこで自分の考えを1度疑って、違う視点で見つめなおしてみる。