今、「3Dプリンタ」が大きな話題を呼んでいる。この現象は単なるブームに終わるのか、それともモノづくりを大きく変える可能性があるのか? 3Dプリンタを積極的に活用し、道を切り開く企業の最前線に迫った。

試作時間90%減、試作費用80%減

パナソニックの「ウェアラブルカメラ」。体にぴったり固定した“フィット感”を生み出せるのも、3Dプリンタ導入の効果である。

3Dプリンタは、ベンチャーや中小企業の占有物ではない。大手メーカーも3Dプリンタを活用したモノづくりに取り組み始めた。3Dプリンタは、試作に掛かる時間や費用が大幅に削減される効果があるだけでなく、技能を伝える“社員教育”やコミュニケーションに役立つメリットがある。

米グーグルが開発したメガネ型情報端末「グーグルグラス」に象徴されるように、家電製品のトレンドに新しい動きが出てきている。例えば、カメラにおいても従来型の手に持つハンディタイプから身につけるウェアラブルタイプが出現してきたのだ。

ウェアラブルカメラを装着した状態。モデルは同社AVC第1開発グループSTチーム小西哲哉氏。

パナソニックは13年5月、身につけたまま手を使わずに撮影できる「ウェアラブルカメラ」を発売したが、この開発設計から試作までの工程で威力を発揮したのが、3Dプリンタだった。

ウェアラブルカメラは、カメラを本体から独立させているが、カメラ部分は耳にかけるイヤーフックで顔の横に固定し、自分の目線で映像を撮ることができる。本体部分は、アームバンドで腕に取りつけたり、胸ポケットにしまった状態から操作できるので、従来の手に持って撮影するムービーカメラとは、まったく違った使い方が可能になる。

このカメラは、体にぴったり固定した“フィット感”が商品の重要な要素である。耳にかけるイヤーフックの形状、フックを頭に固定するバンドの締めつけ具合、フックに取りつける小型カメラの位置……など、ウェアラブルゆえにぴったりと固定される感覚を究極まで追求した。この“フィット感”ある製品の開発に欠かせないのが、3Dプリンタである。