元商社マンが立ち上げたベンチャー

山梨県南都留郡山中湖村にあるアスペクトの富士技術センター。山の中にある建物の中にハイテクの「3Dプリンタ」が数多く並べられている。

ここまで3Dプリンタの利用方法にスポットを当ててきたが、プリンタそのものの製造にも触れておきたい。この分野で、日本でも古い歴史を持つベンチャー企業に「アスペクト」がある。同社は、96年11月の設立だから間もなく17年目を迎えるが、ベンチャーゆえの独自の切り口で3Dプリンタの開発を引っ張ってきた。アスペクトを興したのは、三菱商事出身の早野誠治社長で、商社マンの“第6感”からこの道一筋に歩んできたユニークな人物だ。

アスペクトの早野誠治社長が手に持つのも、3Dプリンタで作製した模型。

山梨県南都留郡山中湖村にあるアスペクトの富士技術センターを案内してもらうと、箪笥2棹分ほどの3Dプリンタが所狭しと置かれている部屋があった。その1台には「1号機」と書かれたマシンがあり、アスペクトの歴史を感じさせた。

この3Dプリンタは、一般に普及している「光造形装置」とは違い、ナイロンの樹脂に金属などを混ぜて立体物を生み出す「粉末焼結積層造形装置」と呼ばれるものだ。

この装置は、従来の切削、プレス、射出成型加工では不可能だった立体物の形状を自由自在に造形できる特徴があり、しかも樹脂に金属の強度や耐熱性をもたせたエンジニアリング・プラスチック(通称エンプラ)を材料に使っているので、単なる試作品としての用途だけでなく、最終製品の製造も可能になる強みを持つ。