気落ちする必要はない

生まれつき、もしくは生後に何か問題があって精子を作る機能が落ちている「無精子症」や「乏精子症」がある男性は、若くても自然妊娠が難しい。でも、この場合も、若いうちに妊娠しようとすれば不妊治療の効果は上がる。

精子を作る機能の判定は自分ではできないので、医療施設での精液検査が必要だ。受ける場合は、インターネットで「精液検査」と検索し、できるだけ男性不妊専門医がいる、もしくは連携がある施設で受けたい。

精子老化は男性には少し気落ちする話だったかもしれないが、マイナス思考はやめよう。私は、この事実が知られることによって、卵子の時計が気になる女性の気持ちがわかり、彼女との距離が縮まる男性が増えてほしいと思っている。

精子も卵子も、共に限られた時間を生きている。男女が共感し合い、寄り添って未来を想う心から結婚も妊娠も始まる。

<参考文献>
Paternal age and reproduction 1.
Hum. Reprod. Update (2010) 16(1): 65-79.doi: 10.1093/humupd/dmp027First published online: August 20, 2009

河合 蘭(かわい・らん)
出産、不妊治療、新生児医療の現場を取材してきた出産専門のジャーナリスト。自身は2児を20代出産したのち末子を37歳で高齢出産。国立大学法人東京医科歯科大学、聖路加看護大学大学院、日本赤十字社助産師学校非常勤講師。著書に『卵子老化の真実』(文春新書)、『安全なお産、安心なお産-「つながり」で築く、壊れない医療』、『助産師と産む-病院でも、助産院でも、自宅でも』 (共に岩波書店)、『未妊-「産む」と決められない』(NHK出版生活人新書)など。 http://www.kawairan.com