35歳を境に妊娠・出産率が大きく低下するといわれる。本当なのか。ジャーナリストの海老原嗣生さんは「20代に比べると確率が低下することは間違いのない事実だ。しかしその低下幅は、多くの人が思っているほどではない。30歳の出産可能性を100とした場合、40代前半なら70か、もしくはそれ以上はあるというのが、多くの先行研究の示唆するところだ」という――。
赤ちゃんと母親の手
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子どもを産むために生まれてくるのではない

当たり前ですが、女性は、子どもを産むために生まれてくるわけではありません。

女性は、結婚するため、キャリアを磨くために生まれて来るわけでもありません。

結婚も出産もキャリアもみな、生きていく過程の一選択肢にすぎないはずです。

それが、いつのまにか主客転倒し、結婚、家庭、子ども、キャリア、ともすれば夫の人生や国家、社会、経済が主語になってしまいます。

さすがに「お国のため」という感覚は消滅し、「夫の人生に尽くす」もどんどん薄れてきています。

一方で、キャリアや社会や経済のため、という感覚については、21世紀の現在でも何の後ろめたさもなく語られがちです。

そうした女性の人権を無視するような発言が、21世紀初頭に時代の流行となり、けっこう大きなムーブメントをつくることがありました。そうして生まれた言葉が、「婚活」や「妊活」でしょう。

いずれも、古くさい頭の男性諸氏からではなく、進歩的な女性から盛んに発せられた言葉です。

確かに、キャリアもお金も子どももすべてを手に入れ、偏差値的にいう「優れた生活」を送るためには、このムーブメントは有為なことだったかもしれません。

「初の女性総理候補」と目された野田聖子議員は、40歳を超えての不妊治療体験からこうおっしゃいました。

「もし(高齢での出産がこれほど大変だと)知っていたら」

野田さんは、そうした偏差値的に優れた生活をリードしたわけではありませんが、この言葉が、婚活・妊活ブームを煽った一面はあるはずです。

婚活・妊活に追い立てられ、責められた女性たち

でも、晩婚、未婚、高齢出産は、「無知」からばかり起きたわけではありません。

たとえ加齢が出産にマイナスであることを知っていたとしても、どうにもならない人は多いでしょう。大好きで信頼していた男性に、ある日突然裏切られて、捨てられてしまった人、生まれつきナイーブで異性とうまく付き合えない人、ルッキズムはびこる社会の中で自信が持てない人等々、晩婚・未婚の理由は多彩です。にもかかわらず、まるで、無知だ努力不足だ高望みだと言わんばかりの、婚活・妊活の大合唱……。責められる彼女らはいったい、どんな思いをしていたでしょうか。

逆に、婚活・妊活に血道を上げるがあまり、楽しくもない夫婦生活を送って、お金とキャリアと子どもには恵まれるけれど、人生そのものは空虚なものになってしまった人も少なくないはずです。

何よりも、こうした「婚活」「妊活」の多くが女性にばかり課された十字架であり、男女の非対称性を象徴しているということに、どれほどの人が気づいているでしょうか。

こんな風に、時代が変わっても形を変えて、見事なまでに、男女の負担の非対称性が息づくさまは、もはや滑稽と言うしかないでしょう。

現代の女性は、30歳になると、社会の逆風の中で、心が冷え冷えとしてしまいます。

30代中盤にもなれば、心はささくれ立ってくるでしょう。そして、40歳が近づくと、絶望感まで芽生えだす……。

こんなお決まりコースを少しでも変えていくために、本稿でささやかな抵抗を試みたいと思います。