少子化挽回の鍵は、30代~40代男女の妊娠力

この連載では、30代、40代男女が子どもを持ちたいときにぜひ知っておいてほしいことを語っていこうと思う。日本で今、一番子どもを産みたいのはこの年齢層だ。だから私は、少子化挽回の鍵を握るのは、当面この「駆け込み組」の妊娠力ではないかと思っている。

実際、少子化に歯止めがかかっている国では、この年齢層も堅調に出産している。2011年の出産平均年齢はフランスが30.0歳、スウェーデンが30.8歳。少子化対策のお手本国も、意外に晩産なのだ。

ところが日本では、このところこの年齢の出産についての認識が右へ左へと大きく揺れ動き、それを注視してきた専門ライターとしては、もう船酔いしそうである。

女性たちは1980年代には30歳になっても出産しないと「マル高になるわよ」と言い合っていた。当時は日本産科婦人科学会が30代の初産を「高齢初産」と定めていて、カルテや母子手帳に「マル高」のハンコを押していたためだ。しかし1992年、学会は全国の産科婦人科学教授たちにアンケート調査を行い基準を35歳に引き上げることを決定する。欧米で見直しが進んでいたことが直接のきっかけだと聞いているが、30代前半の出産も増え、女性たちからも、「不愉快だ」という声が上がっていた。英国の文化人類学者、シーラ・キッツィンガー女史は、このころ『30歳からのお産-マル高なんか怖くない』(邦訳版 1989年メディカ出版より発行)という本を著し妊婦を年齢によって区別することを強く非難している。

確かに30代では何の問題もなく妊娠して出産する人はたくさんいる。ときには40代であっても、そうした夫婦はいる。次の波は、その見本のような人たちが続々と40代出産をするようになって晩婚化していく女性たちの希望の星となったことだった。

NHKが「クローズアップ現代」などで放映した「卵子の老化」についての問題提起は、「40代女性たちが不妊治療の現場で激増している」という医師たちの警告から始まった。そして今や、20代女性までが動揺して「卵子の老化がこわい!」と思う極端な揺り戻しが始まっている。40代、特に43歳以降は体外受精の効果がかなり落ちてしまうのは現実だ。都心では「40代でなければ高齢出産と感じない」という人がほとんどになっているが、夫婦の妊娠力はまったく不公平である。国もついに動き出し、厚労省の有識者検討会により体外受精の治療費用の公的補助の対象に「42歳まで」という年齢の制限が提案されたことは記憶に新しい。