なぜ「500円」にしたのか

藤井太洋さん(略歴は第1回 http://president.jp/articles/-/10758 参照)。

『Gene Mapper』の価格は500円。99円本が氾濫するセルフ・パブリッシング電子書籍としては強気の設定だが、ここには藤井氏の強い意志と意図が働いている。

【藤井氏】セルフパブリッシングのチャネルというのは、概ね最低価格が決まっています。KDPだといま日本は99円。koboのマーケットも100円以下は付けられなかったはずです。でも、100円という金額は商品がほしくて買う金額じゃないですよね。値段に対して全然フィロソフィーが入っていないというか、内容に対して読者は何も言えない(笑)。チャネルの最低金額というのは投げ銭と一緒で、そのソフトの価値をまったく考えていない価格です。そこで何かするために必要な場代みたいなもので、「最低金額を使うんだ」という明確な意思がなければ使っちゃいけない。少なくとも、自分の本がどんなものかが知られていないうちは、そこまで安くしない方がいいと思います。

100円の商品なんて、内容が良ければ「儲けもの」、はずれれば「まあ、仕方がない」。私も含めて、どれだけ多くの人がそう考えて「ポチッ」と購入していることか。だから、価値を認めてもらうために100円という設定を切り捨てた藤井氏の選択は理解できる。だが、なぜ500円なのか。200円、300円、400円、あるいは600円という設定もありえたはずだ。

【藤井氏】200円という価格は、消費者心理で見たときに、高いか安いかわからないんですよ。本として考えるとじゅうぶんに安いんですが、はっきり安いとは感じられないすごく不安定な金額でもあるので、200円は使えないと判断しました。アプリの世界では200円の商品を100円に値下げして販売するという手法が一般化してきましたが、安くして200円というのは非常にきりが悪い。仮に50%オフで200円だった場合、400円じゃないですか。

この400円がまた不安定なんですよ。398円とか390円とかだったらきりがよくなって安定しますが、400円は安定しない。これね、桁を上げていくとよくわかります。4000円って付けちゃいけない金額なんですね。3980円でもいいし、4200円でもいいんですけど、4000円になるといきなり微妙になる。でも5000円ならしっくりくる。だから500円に設定しました。