温暖化で北極海に航路ができる

ちなみに、第一列島線上ではないものの、対馬海峡と津軽海峡は今後重要性が増すと考えられます。なぜなら、今後数十年で、ここの通行量が一気に増大する可能性があるからです。

北極海航路とは、温暖化で北極海の氷が解けることによって夏に開通するといわれている新しい航路です。かつて北極海には一年中氷が漂っていたので、船はここを通ることができませんでした。しかし、近年は温暖化が進んだことで氷がかなり薄くなりつつあり、温暖化がこのまま進めば、数十年以内に普通の船でも夏だけ通れるようになるといわれています。

北極海航路になぜ注目が集まっているかというと、この航路が中国からヨーロッパまでの距離を短縮するからです。今のところ、中国とヨーロッパを結ぶ最短経路はスエズ運河を通過する航路で、およそ40日かかります。一方で、北極海航路を使えばおよそ30日まで短縮できます。

北極海航路が開通すると、中国・ヨーロッパ間の船は必ず対馬海峡、津軽海峡、宗谷海峡のいずれかを通ることになります。

いずれは北海道も標的に?

また、航路上にある北海道も同様に重要性を増すと思われます。ある中国高官は北海道の釧路に関して「将来は南のシンガポール、北の釧路といわれるような魅力がある」と発言し、駐日大使を2016年に釧路に派遣したことがあります。ただ、ここには日本・韓国・アメリカの海軍がすぐ近くに常駐しているため、中国が支配することは現実的ではないでしょう。

まとめ

中国軍は、米軍によって第一列島線の中に閉じ込められており、長期的にはこれを突破する目標を持っている。
マラッカ海峡は中国にとって最も重要な海峡であり、ここが閉鎖される危険(マラッカ・ジレンマ)を抱えている。この損失を最小限にするため陸路への転換を試みているが、依存から抜け出せてはいない。

南シナ海は広い割に陸地が少なく、空母を用いて制空権を確保する必要がある。
沖縄は中国本土に最も近い位置に米軍基地を擁する最前線の島々。特に宮古海峡と尖閣諸島は中国から太平洋への出口にあり、中国はここから米軍を追い出したい潜在意識を持っている。