土屋議員は「秘密会」の内容を漏らしたと懲戒処分になった

誰もがおかしいと思うようなことを指摘すると、罰せられるという理不尽。これでは、皆が結託して黙っていさえすれば、秘密会で何をしていてもおとがめなしで、誰もチェックできないことになる。そんな力を、私たちは議会に与えているだろうか。

滞納者リストの配布は、町民の間でも問題となった。市民団体「ゆがわら町民オンブズマン」が秘密会の議事録の公開を求めたが、町側の答えはノー。以後、訴訟に発展する。市民団体は2021年4月、横浜地裁に提訴し勝訴。東京高裁も町側の控訴を却下。ところが町側は判決に従わなかった。引き続き町民側の情報公開請求を拒否。司法判決すら無視するという事態だ。やむなく市民団体側は2023年1月にもう一度提訴。今年3月再び横浜地裁で勝訴した。全く同じことが繰り返された結果、町側はとうとう今月、控訴を断念した。

元々、秘密会にされていた町税委員会は、税金滞納対策のためのものだった。なのに、何度も繰り返された町側の高額な裁判費用は、税金から支払われるという皮肉。「控訴断念で、これ以上税金の無駄遣いをしなくてよかった」と市民団体側が語ったほどだ。その間、さすがに個人情報は伏せ、滞納額の上位とその人数を税目ごとに示す形に変わったというが、いまだに何のために、個人情報つきのリストを、秘密会で配布していたのかは不明のまま。

湯河原町議会議員選挙ポスター掲示板
写真=筆者提供

議員も追及しない湯河原町議会の文字通りの「秘密主義」

市民団体側の弁護をしてきた大川隆司弁護士によると、湯河原町議会は2011年以降25回にわたり、この町税委員会で秘密会を開いている。全国の自治体が約1700あるうち、秘密会の開催は年20回程度。「普通の自治体なら、百年に1回開くようなまれなもの。湯河原町はあまりに頻繁で異常だ」と指摘する。

そもそも議会は、公開が原則。秘密会は憲法に規定があるが、開催は極めて例外的であるべきだ。一方で湯河原町議会では、多くの自治体で導入済みのネットやケーブルテレビによる議会中継はゼロ。今年3月の神奈川新聞の報道によると、4年間の任期中、本会議の一般質問をしたことが1回以下という現職議員が半数以上に上る。ゼロだった議員も4人。うち1人は18年間1回も質問したことがなかった。

「湯河原町議会、一般質問1回以下が半数超え ベテラン議員ほど少ない傾向」神奈川新聞、2024年3月26日

「働いても働かなくても、議員報酬は変わらない。町の議案に反対すると、逆に仕事が増える。支援を受けている業界団体のため、補助金を獲得する必要があり、町長と仲良くしないと困る場合もある」と、土屋氏は背景事情を語る。でも、そのために行政にものを言いにくいということになるのであれば、本末転倒だ。