ディズニープラスで配信中の歴史ドラマ『SHOGUN 将軍』(主演:真田広之)が世界中で大ヒットしている。歴史評論家の香原斗志さんは「一部では戦国時代の描写のリアルさが評価されているが、歴史的状況とは異なる。あくまでも外国人の創作したファンタジーであると伝える必要がある」という――。
2024年2月20日、外国特派員協会で行われた、ディズニープラス配信のドラマ「SHOGUN 将軍」の記者会見に出席した真田広之さん(東京都千代田区)
写真=時事通信フォト
2024年2月20日、外国特派員協会で行われた、ディズニープラス配信のドラマ「SHOGUN 将軍」の記者会見に出席した真田広之さん(東京都千代田区)

ディズニー配信ドラマで歴代1位となった「SHOGUN 将軍」

関ヶ原合戦にいたる時期の、徳川家康による覇権争いを描いた「SHOGUN 将軍」。ディズニー傘下のFXプロダクションが制作した全10話のドラマで、すでに世界的な大ヒットを記録し、現在、日本でもディズニープラスで独占配信されている。

撮影はバンクーバーなどで行われながら、FXはじまって以来の巨費を投じて、戦国日本を再現したという。その結果、過去の日本が非常にリアルに描かれていると、評判を呼んでいる。なにしろ、初回エピソードの世界配信がはじまるやいなや、6日間で再生回数900万回を記録。この数字は、スクリプテッド・ゼネラル・エンターテイメント・シリーズ作品で、歴代1位だそうだ。

日ごろは辛口の海外の大手メディアも、こぞって絶賛しており、いま絶賛の声が日本に広がろうとしている。

読売新聞の3月17日付朝刊でも、次のように称賛されていた。「時代背景を踏まえ、室内の撮影でも証明は自然光、灯明皿を使用。一方、1話目の嵐のシーンでは、船が激しく揺れる装置を使うなどハリウッドらしい豪勢なセットも効果的に用い、壮大に表現した。真田は衣装から髪型、メイク、言葉遣いにまでこだわり抜いたという」。

真田とは、徳川家康をモチーフにした吉井虎永役で主演し、プロデューサーも兼任した真田広之のことである。

「描写がリアル」は本当か

高く評価される理由は、日本の描写が「リアル」だということのほか、たとえば、こんなふうに語られている。

このドラマに登場する人物名は、いずれも史実の通りではない。徳川家康が吉井虎永となっているほか、石田三成が石堂和成(平岳大)、本多正信が樫木藪重(浅野忠信)、細川ガラシャが戸田鞠子(アンナ・サワイ)、淀殿が落葉の方(二階堂ふみ)などと、それぞれ替えられている。

つまり、歴史上の人物や事象をもとにしながらも、あえて史実に忠実であることが避けられている。史実に拘泥するあまり、状況をドラマティックに描けなくなってしまっては、ハリウッドのエンターテインメントとしては失格だ、という判断によるものだろう。史実の変更をいとわなかった結果、事件に連続性が生じ、人物の心の動きもリアルになり、ヒットにつながったというのだ。

日本が描かれ、世界が絶賛していると聞けば、日本人として悪い気はしない。出演者の多くは日本人で、セリフ全体の7割は日本語だが、それを外国人たちが字幕で読みながら評価してくれているというのは、うれしい話ではないか。

そこで、どんなにリアルなのか観てみたが、細部にまでこだわり抜いた、と聞きすぎていたせいもあろうか、まずはディテールへの違和感に襲われることになってしまった。