子どもたちが抱く「万能的な自己イメージ」

薮下遊、髙坂康雅『「叱らない」が子どもを苦しめる』(ちくまプリマー新書)
藪下遊、髙坂康雅『「叱らない」が子どもを苦しめる』(ちくまプリマー新書)

さて、「ネガティブな自分を認められない」というあり様について、もう少し詳しく考えていきましょう。なぜ彼らは「ネガティブな自分」に触れることが、それほどまでに苦しいのでしょうか?

「ネガティブな情報」を送られた経験が少なかったり、「ネガティブな情報」を送られたときの不快感を大人との関係で納めていくという経験をせずに育った子どもは、自分に対するイメージを創り上げていくときに、「失敗のない」「叱られるようなことのない」「いろんなことが上手くできる」などのような良い面だけで自己イメージを構成することになってしまいます。「ネガティブな情報」が少ない自己イメージは、どうしても「現実の姿」よりも優れたものになりやすく、子どもは「現実の自分よりも良い自己イメージ」を抱えることになるのです。

※参考
内田樹(2018)「学びとは「不全感」より始まる」
全国不登校新聞社(編)『学校に行きたくない君へ』ポプラ社(pp199–220)

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