待ち合わせは「自宅近く」という港区のカフェ

2週間前に婚活個室パーティで出会った58歳のIT企業役員、眞一郎さんとカフェで再会することになった。パーティ終了後に眞一郎さんから連絡先をもらい、もう一度話してみようと思ったのだ。待ち合わせの港区のカフェは私がよく行くところだが、彼の勤務先も港区で、自宅もすぐそばというのでそこに決めた。

8月のお盆過ぎ、うだるような暑さの日。汗シミを気にしながらも、淡いベージュのシャツに膝丈の白いタイトスカートを合わせた。婚活アドバイザーでもある成人した娘が「お母さんはこれを着ると清楚な雰囲気になる」とアドバイスしてくれたからだ。

カフェに着くと、もう眞一郎さんは店内で座っていて、こちらを見ると微笑む。趣味はゴルフというだけあって色黒で、彫りが深い顔立ちだ。今日は青と白のチェックのシャツを着ていて、それもよく似合う。彼の写真を見た娘が勧めるくらいだから、女性から見て「生理的に受け付けないタイプ」ではないのだが、目が合った瞬間、“やっぱり違う”と感じてしまった。

世代が違う、仕事や趣味などの共通点もない

先日、同い年の女性で、既婚者である友人から言われた言葉を思い出す。

「仕事関係で好きになる場合も、一目惚れではなくて、徐々に相手のことを知って好きになるでしょう? だから婚活で出会った人ともすぐに拒絶しないで、まずは何度か話してみないと」

その言葉に納得して、今日ここに来た。それでもやっぱりこの人とは恋愛関係になれないという気持ちがわきあがってくる。

自分で誘った手前、帰りたくなる気持ちをおさえながら席に着く。

「お待たせしました。暑いですね」

ハンカチで汗をぬぐい、私はメニュー表を広げる。眞一郎さんがそれを覗き込む。近い距離になりたくなくて、さっと身を引いてしまう。

「ここはレアチーズケーキがおいしんですよ」

つとめて明るく言う。

「じゃあ、それも頼みましょう」と、眞一郎さん。

ニューヨークチーズケーキとブラックコーヒー
写真=iStock.com/Arx0nt
※写真はイメージです

彼は“いい人”なのだ。だんだん申し訳ない気持ちになる。よし、異性の友人を作るつもりで、と気合を入れて笑顔で向き合う。しかし、どんな話をすればいいのだろうか。世代が違う、仕事や趣味などの共通点もない――。