リニア中央新幹線の工事を巡り、静岡県が協議開始を認めた「田代ダム案」の雲行きが怪しくなってきた。ジャーナリストの小林一哉さんは「川勝平太知事が『たられば』の懸念ばかりを持ち出して議論が一向に進まない。このままではリニア開通など永遠に実現しない」という――。
川勝知事の「妨害宣言」と「二枚舌」
静岡県のリニア議論の最大の焦点である水環境問題の解決策としてJR東海が提示し、川勝平太知事がようやく協議開始を認めた田代ダム案に暗雲が垂れ込めている。
JR東海は6月22日、静岡、山梨県境付近のリニアトンネル工事中の全量戻しの解決策・田代ダム案の協議を、東京電力リニューアブルパワー(東電RP)と開始したことを発表した。
ところが、23日には川勝平太知事が協議開始に当たって妨害を示唆するコメントを出した。続いて、27日の定例会見で、「田代ダム案の実現可能性にいくつかの論点がある」などと述べ、今後も妨害していく姿勢まで明らかにした。
さらに29日開催の静岡県議会で川勝知事は、沿線都府県の加盟する建設促進期成同盟会で田代ダム案を巡りリニア建設推進の発言をしたにもかかわらず、それを否定する相変わらずの“二枚舌”を使って、リニア妨害を宣言したのだ。
6月27日公開のプレジデントオンライン「ついにリニア妨害は論理破綻…県庁職員も頭を抱える川勝知事の『デタラメ会見』の中身」で、田代ダム案がまとまれば、リニア静岡工区の着工へ大きく前進すると伝えた。
ところが、川勝知事は、田代ダム案を妨害し続けることを明らかにした。このままでは、同案を静岡県が正式に認めるまでに長い時間が掛かる。つまり、水環境問題の全面解決へはこれまで通り険しい道のりとなる。
川勝知事のリニア妨害をこのままにしておいていいはずがないが、打つ手なしの状態だ。
本稿では、今回の田代ダム案の協議開始に対する静岡県の想定外のリアクションとともに、同案を通して、リニア妨害に固執する川勝知事の意図を伝える。