ドラッグストア業界2位のツルハホールディングスは、北海道で圧倒的なシェアをもつ。だが、ほかの地域ではそこまで知名度が高いわけではない。日本経済新聞記者の白鳥和生さんは「ツルハはM&Aで店舗数を増やしてきた。その特徴は、買収先の社名や屋号はそのままで、社長も残留して経営を続けさせること。買収先にもツルハという文化を押しつけないところが、ツルハの強みになっている」という――。

※本稿は、白鳥和生『不況に強いビジネスは北海道の「小売」に学べ』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

一部店舗で精肉コーナーを導入している
撮影=本田匡
一部店舗で精肉コーナーを導入している

薬だけでは売り場は埋まらない

コロナ禍のなか、ドラッグストアで食品を買い求める生活者が増えている。例えば九州から西日本を地盤とするコスモス薬品。食品の売り上げ構成は55%を超える。野菜など生鮮食品の扱いは少ないが、冷凍食品の売り場を大展開し、冷凍肉、魚やカット野菜を充実。EDLP(エブリデーロープライス)で食品スーパーの下をくぐる価格の商品も目立つ。郊外を中心にスーパーからお客を奪って勢力を拡大中だ。

ドラッグストアの成長の歴史は、商品のラインロビングにあった。平たく言えば既存の小売り業態が扱っている商品を取り込み、浸食していくのだ。ドラッグストアの出自は薬局が多いが、米ウォルグリーンに倣い売り場を広げ、ドラッグストアを構築する上で難点となったのは、OTC(一般用医薬品=大衆薬)だけで売り場を埋められないことだった。

結果、日用雑貨、菓子、加工食品、化粧品、果てはホームセンター商材など多様な商品を置いてきた。そうした商品群で集客の目玉に使われたのは、日用雑貨や菓子、加工食品など。安売りでお客を集め、高額で粗利が稼げる医薬品、化粧品の購入へと導くのだ。

そんなドラッグストア業界で売上高2位につけるツルハホールディングス。ラインロビングを積極的にしてきた代表格。顧客の利便性を高めるため、精肉・青果、100円均一コーナーの導入を進める。2022年5月15日時点で精肉・青果は880店、100円均一コーナーを246店に導入済み。青果、精肉はテナントやコンセッショナリー(委託)を起用し、100円均一は、ワッツと組む。

全国のローカル企業との提携で1000店を突破

同時に、M&A(合併・買収)で規模を急速に拡大していることで知られる。2006年に中堅ドラッグストアの「くすりの福太郎(千葉県鎌ケ谷市)」と資本・業務提携を結び、翌年には当時としては大型のM&Aを行った。当時から単独での成長にはこだわらず、志を同じくする企業と一緒になり、ともに歩むことによる成長を目指していた。

その後、ウェルネス湖北(島根県松江市)、ハーティウォンツ(広島県広島市)、レデイ薬局(愛媛県松山市)、杏林堂薬局(静岡県浜松市)、B&D(愛知県春日井市)、ドラッグイレブン(福岡県大野城市)など、地域で愛されているドラッグストア企業と資本・業務提携し、規模拡大を一気に進めた。

その根底にあるのが「20倍理論」。わずか5店舗の時(1975年)に鶴羽会長の兄、肇氏(2代目社長)が掲げたのが「100店舗構想」。さらに50店舗の時(1985年)には「1000店舗構想」という端から見たら無謀とも言える目標を掲げた。しかし、1989年には実際に100号店を達成し、2012年には1000店を突破した。