※本稿は、白澤卓二『Dr.白澤の実践メソッド 100寿をめざす認知症最新戦略』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
※アルツハイマー病専門医の第一人者が毎日食べたい必須の食材1~3(前編)、7~9(後編)はこちら
4 毎日食べたい必須の食材「青魚」
体内の炎症を抑えるオメガ3が豊富
●認知症予防、健康長寿のためには欠かせない必須の食材
動脈硬化も認知症も予防
オメガ3には、炎症を抑えるEPA(エイコサペンタエン酸)と、神経細胞の膜に必要なDHA(ドコサヘキサエン酸)のほか、えごま油やあまに油に含まれるα-リノレン酸(体内でDHAやEPAの合成に利用される)があります。
ドイツのベルリン医科大学神経学の研究グループは健康な高齢者に、オメガ3を含むサプリメントを6カ月間投与したら認知機能が向上したと報告しています。認知機能の維持にはオメガ3が欠かせません。
ところが、現代人はオメガ3が不足しがち。意識してとる必要があります。
さば、いわし、さんまなど青魚はEPA、DHA、どちらも豊富に含まれていて、動脈硬化、認知症予防に役立つ重要な食材です。積極的に食べましょう。

刺身で食べるのがおすすめ
EPAやDHAを効率よくとるには刺身で食べるといいでしょう。焼いたり、揚げたりするとせっかくのいい油が調理中に失われてしまいます。煮魚は味つけに砂糖が使われるのであまりおすすめしません。
脳や血管にいいとわかっていても、鮮度が落ちやすく、調理の手間がかかる魚を購入することに躊躇する人もいるようです。
そんな場合は缶詰を活用しましょう。缶詰は脂がのった時期に収穫して加工しているので、EPAやDHAがより多く含まれています。保存も長期間できるので、常備しておくと便利です。
白身魚ではありますが、EPAやDHAが豊富でおすすめなのが鮭です。アルツハイマー病の患者さんで、不足していることが多いビタミンDも豊富です。身の赤い色素には強力な抗酸化作用があります。
5 毎日食べたい必須の食材「発酵食品」
微生物のパワーで腸内環境を整える
●腸内の善玉菌を元気にする発酵食品を積極的に食べよう
●調味料、漬け物、納豆などが代表
自家製のみそ・しょうゆ
発酵食品とは微生物が食品のタンパク質やでんぷんを分解して、別のものにつくりかえた食品の総称です。みそのこうじ菌、漬け物の乳酸菌、納豆菌など、体によい働きをする微生物が発酵食品には含まれています。
日本食は発酵食品の宝庫です。その代表はみそ、しょうゆ、みりん、塩こうじ、酢、酒かす、甘酒などの調味料です。これらは1回に使う量は少量でも、毎食のように使っていれば1日の摂取量は多くなります。

腸内環境をよくするぬか漬け
キムチやぬか漬けなどの漬け物も発酵食品です。どちらも、腸内の善玉菌を増やす乳酸菌が豊富で、腸内環境の改善に役立ちます。
乳酸菌はヨーグルトやチーズなど乳製品からとるイメージがありますが、日本人は乳製品をうまく消化できない体質の人が少なからずいます。体質に合わないものを、無理に食べる必要はありません。日本古来の発酵食品を活用しましょう。
市販のみそやしょうゆ、ぬか漬けには、大量生産のため、あまり発酵していないものもあります。質のいいものをとりたいのであれば、手作りがおすすめです。館林の介護付き有料老人ホームでは、みそやしょうゆ、ぬか漬けは手作りしています。
もうひとつ、毎日食べたい発酵食品が納豆です。納豆は納豆菌が大豆を発酵させた食べ物です。発酵させることで、カルシウムやビタミンB2の量が増え、血栓を溶かすナットウキナーゼという酵素が発生します。
良質なタンパク質も豊富で、動脈硬化や認知症の予防には最適の食材です。1日1パックは食べましょう。日本食には、さまざまな発酵食品があります。毎日の食事に取り入れましょう。
6 毎日食べたい必須の食材「卵」
親鶏の生育環境やエサをチェック
●理想は平飼いで質のよいエサを与えられた鶏の卵
●卵の質はエサによって変わる。強化されている成分をチェックしよう
1日2個の卵を食べよう
健康長寿のためには、1日2個の卵を食べましょう。かつては、コレステロールに配慮して、食べ過ぎないよう注意されていましたが、2015年にアメリカで食事由来のコレステロール摂取に対する制限が削除されて、その健康効果が注目されています。
最近では、脳卒中や認知機能の低下を防ぐためには、毎日食べたほうがいい健康食材に躍り出ました。
卵の栄養で特に注目されているのが、コリンとレシチンです。コリンは神経伝達物質であるアセチルコリンの原料になり、レシチンはコレステロールの分解や排泄を促します。
また、卵は完全栄養食品と呼ばれるほど栄養価が高く、良質のタンパク質も豊富です。高齢者の栄養不足を補うには、最適の食材と言っていいでしょう。
質のいいものを選ぼう
卵の質は親鶏の生育環境に左右されます。理想は、平飼いで自然なエサ(穀物や野草)を食べて育った鶏の卵です。また、エサに有用な成分を混ぜて育った鶏の卵もあります。ラウリン酸、エルゴチオネイン、オメガ3(系脂肪酸)、ビタミンEなど、さまざまな栄養を強化した卵が市販されています。そのなかでも、私が注目している卵をいくつか紹介します。どれも取り寄せが可能です。
Dr.白澤おすすめの卵
●ラウリン酸卵
エサにココナッツオイルを混ぜて育てた鶏が産む卵。ココナッツオイルの主成分であるラウリン酸を含む。1日2個食べると血糖値が下がったという報告あり。https://tocofoods.thebase.in
●エルゴチオネイン卵
神経細胞を増やす、記憶力アップ、免疫力アップ、うつの予防・改善、老化予防などの効果があるエルゴチオネインを含む。https://www.chatamaya.com
●オメガ3卵
体内の炎症を抑制する不飽和脂肪酸(オメガ3系脂肪酸)を含む。抗炎症作用が高いα-リノレン酸、脳を活性化するDHAが通常の卵より多い。http://tamago.aidaegg.com/
(以下、後編=アルツハイマー病専門医の第一人者が毎日食べたい必須の食材7~9へ続く)