人前で眉間にシワが出ないようにするにはどうすればいいか。ANAの元CAで研修講師の三上ナナエさんは「眉間のシワは縦の線。縦のシワは、横に筋肉が動く部分を引いておくと寄りにくくなるため、横に動く顔の筋肉を常に横に引いておくようにすると自動的にシワが出にくくなる」という――。

※本稿は、三上ナナエ著『あらゆるタイプのお客様に選ばれる 一生使える「接客サービス」の教科書』(大和出版)の一部を再編集したものです。

クセは無意識のうちに出ている

自分でも気がつかないうちに出てしまうクセは、人間なら誰しもあるでしょう。

「無くて七癖有って四十八癖」ということわざもあるくらいですから。

クセは人間味でもあるので、親しみを感じられることも多々ありますが、そうは言っても接客の時には出てきてほしくないクセもありますよね。

私は「三上さん、困った顔してるよ」と新人の頃に言われたことがありました。

そうなんです。どうやら私は、忙しい時に眉間にシワを寄せるクセがあるんです。これは接客の時には、あまり出てきてほしくないクセの一つです。

あるウェディングコーディネーターの方が、「眉間のシワ」にまつわる失敗談を聴かせてくれました。

その方は、いつも打ち合わせに遅れてくるカップルの方を担当していました。

その日も他のお客様のご予約がビッチリつまっているのに、時間になってもいらっしゃらなかったそうです。

つい焦って眉間にシワが寄っていることに気づいたその瞬間、ちょうど遅れたカップルの方が自分のほうを見ながら歩いてお越しになりました。そして開口一番、「そんなに嫌なら担当しなくて結構です! 誰かと変わってください」と言われてしまったそうです。

意外に私の周りに、この“眉間のシワ”で困っている方が多かったので、ここで改善のポイントをお伝えしましょう。

口を覆って物思いにふける白人男性
写真=iStock.com/MangoStar_Studio
※写真はイメージです

クセが「出やすい場面」を覚えておく

どうすれば、眉間のシワが大事な時に出ないようにできるのでしょう?

まず一つは「出やすい場面」を覚えておくことです。

例えば、「書類の整理をしていたり、予想外の質問をされた時に、眉間にシワが寄りやすいな」などと覚えておきます。

すると、同じシチュエーションの時に「今、眉間にシワが寄っているかも!」と気づきやすくなります。意識して気づいては直し、気づいては直しを繰り返していると、だんだん出にくくなっていきます。

また目が疲れていたり、視力が落ちている時にも出やすいものです。定期的にチェックして、目を休めたり、今の自分にあった眼鏡やコンタクトにすることも必要です。

さらに、心の状態を整えることも大事です。

心にシワが寄る時は、表情にもシワが寄りやすいもの。自分の気持ちを観察して、イライラ・不安を解消するような自分なりの気分転換をいくつか用意しましょう。深呼吸をしたり、見えないところで大きな伸びをするのも効果的です。

眉間のシワは縦の線です。縦のシワは、横に筋肉が動く部分を引いておくと寄りにくくなります。横に動く顔の筋肉、例えば口角は常に横に引いておくようにします。口角を横に引きながら眉間に縦線を入れるのは難しいので、自動的にシワが出にくくなります。

スマートフォンの見過ぎに注意

日常で気をつけておきたいのは、スマートフォンです。

スマートフォンを見ている時は、画面が小さいので顔のパーツが中央に寄りやすく、ついつい眉間のシワも出やすくなります。表情のクセは日常の積み重ねなので、こまめに修正していくことが大事ですね。

ちなみにスマートフォンをずっと見ている時は、顔面を下に向けている状態です。これをずっと続けていると、重力に引っ張られてたるみやすくなるので、そういう意味でも見過ぎには要注意です。

眉間のシワは相手を心配する時にも出ます。そんな時は心配の気持ちが伝わりやすいので、必ずしも悪いことばかりではありません。とはいえ、相手に怪訝けげんな感じ、イライラしている印象を与えてしまうのは否めません。

ほんの一瞬の表情で、信頼が崩れてしまうのはもったいないですから、なるべく出ないように事前に対策できることはぜひ試してくださいね。

表情チェックで、いつも好印象な人になる
問題に悩みながらスマートフォンを使用しているアジア人女性
写真=iStock.com/Jajah-sireenut
※写真はイメージです

笑顔のポイントは「口元」

接客で大切なものの一つに笑顔があります。しかし、いつも同じような笑顔で応対するのは、つくられたような印象になり、営業的だなと思うお客様もいます。

場面、場面に応じた表情をすることが大切です。

どんな時にどんな表情であれば、違和感がなく伝わるのでしょうか。

ポイントは「口元」です。

口元の筋肉は表情筋全体に影響を及ぼすので、笑顔のバリエーションを、口元でコントロールしていくとよいでしょう。

【図表1】場面ごとの笑顔のバリエーション
場面ごとの笑顔のバリエーション 三森健太/イラスト  SHIMA 

場面ごとに笑顔を使い分ける

では、場面ごとにポイントを確認しましょう。

1 待機場面

口を閉め、口角を横に引きましょう。

口が開くと、どこか間の抜けた印象を与えてしまいます。

口角を重力のままにだらんとさせると、疲れを感じさせたり、不機嫌に見えたりもします。「閉めて横に引く」を意識してみてください。

2 歓迎の挨拶

上の歯を8本見せると、目の表情も生き生きと伝わります。

この時、下の歯は見せません。下の歯がはっきり見えていると、恐怖、怯えをあらわすような表情になってしまいます。

鏡で確認しながら、上の歯が8本出ている感覚を捉えてみましょう。

こうして文字にすると、何かとても難しい表情に感じてしまうかもしれませんが、口角を上げた自然な笑顔をつくると、だいたいそういう口元になっています。

3 お客様の話を聴く

口をギュッと結ぶと、こわばった表情で緊張を感じさせます。

力を入れず、唇の間に一枚薄い紙をはさんでいるような感覚で、少し隙間を開けると受け入れる表情に見えます。

4 お客様に説明する

話をする際は、上の歯4本が見えるくらい開くと適度に真剣な表情になります。

5 お客様の話に驚いて反応する、喜ぶ上の歯10本すべて見せるように、満面の笑みをつくりましょう。

感情のはじける様子があらわれ、お客様に共感していることが伝わります。

目元を変えるのは意外と難しいものですが、歯を見せることを意識すると頬が上がり、連動して目尻も下がるので、とても自然な笑顔をつくることができます。

自然と笑顔ができるか

いかがでしょうか? あまりに意識すると「その表情をしなければ」と注意が自分に向き過ぎてしまいます。普段から練習して、自然とそのような「表情・印象」が出るように感覚をつかんでください。

三上ナナエ『あらゆるタイプのお客様に選ばれる 一生使える「接客サービス」の教科書』(大和出版)
三上ナナエ『あらゆるタイプのお客様に選ばれる 一生使える「接客サービス」の教科書』(大和出版)

また、接客応対では場面が逐一変わるために、余韻を持たせながら変化させることも大事です。急激な変化はお芝居のように、不自然さや違和感を相手に抱かせます。

そういう意味では、スタッフ同士で会話をする際も十分注意が必要です。

笑顔でお客様と接しているそばから、急にスタッフと真顔で話し始めたりすると、その様子を見ているお客様は、興ざめしてしまうかもしれません。

特に店頭においては、常にお客様から見られていることを意識して話すように、心がけましょう。

場面に合ったスマイルで満足度が倍に!