※本稿は、田中遥・加藤紘織『「どうせ私なんて……」がなくなる「謙遜さん」の本』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
毎日使っている言葉が世界をつくっている
私たちが毎日使っている「言葉」。謙遜さんの頼りになる味方であり、人生をよい方向へ変えるための最強のツールです。
あれこれ考えたり、人と話したり、誰かにメッセージを送ったり、SNSに投稿したり……。私たちが言葉を使わない日はありませんし、これからも一生使い続けます。
私たちが日々使える身近な「道具」である言葉を変えれば、毎日が変わります。
なぜなら、「言葉が世界をつくる」からです。
言葉が世界をつくるなんて、大げさだと思いますか?
でも、言語学にこんな調査報告があります。
虹の色を「2色」と表す国もある
私たち日本人は、「虹の色は、何色?」と聞かれれば、迷わず「7色」と答えますね。学校でも、「虹は、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7色」と教わるはずです。
しかし、アメリカ人は「6色」と答えるというのです。
ドイツでは5色、インドネシア(フローレス島)では4色、台湾(ブヌン族)は3色と認識されているとか。
それで驚くのはまだ早く、南アジアのバイガ族は、虹の色は「2色」と答えるとのこと。
なぜなら、バイガ族には、色を表す言葉が、暖色(赤や黄色など)と寒色(青や青紫など)の2種類しかないからです。
空に架かる虹は同じなのに、なぜ国や地域によってこんなに違いがあるのでしょう。
答えは、それぞれの「言葉」が違うから。つまり、適切な言葉がないと虹の色さえ減ってしまう。言葉によって、虹という世界共通の現象すら変わってくるのです。
私たちは普段、コップやカバン、本、鉛筆などいろいろなものに囲まれています。しかし、「コップ」「カバン」「本」「鉛筆」という言葉がなければ、どうなるでしょう。それらのものは、私たちの世界の中には「存在しない」ことになってしまいます。
こう考えると、言葉が世界をつくっていると実感していただけるのではないでしょうか。
言葉が変われば、思考や感情が変わる
私たちの世界が言葉によってつくられることを、アメリカの臨床心理学者アルバート・エリスは、「ABC理論」を用いて説明しています。
「ABC」とはそれぞれ、出来事(Activating events)、信念(Belief)、結果(Consequences)の略でくわしくは次のとおりです。
・B 信念(Belief):その刺激や出来事に対する個人の信念や評価
・C 結果(Consequences):その信念や評価に基づいて生じる特定の感情や行動
この理論では、起きた出来事(A)が同じでも、とらえ方(B)によって、結果(C)が変わってくると述べています。
物事をとらえる(B)のは、自分自身の「言葉」です。
ですから、同じ出来事でも、自分が言葉でどうとらえるかによって、受け取る現実(結果)は変わります。
つまり、人は言葉によって自分自身の世界をつくっているといえるのです。
謙遜してばかりの言葉を使い続けるとどうなるか
では、「私なんて」「どうせ私は……」が口癖になっていたら、どんな世界をつくると思いますか? ちょっと想像してみてください。
それは、とても生きづらい世界ではないでしょうか。
でも、言葉が世界をつくっているのですから、当然、言葉を変えれば世界は変わります。今、生きづらかったとしたら、言葉を使って生きづらい世界から抜け出せばいいのです。
一生涯を貧しい人たちのために尽くしたマザー・テレサは、次の名言で、言葉を変えると、運命が変わっていくと教えています。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから
自分が毎日使っている言葉をよい言葉に変えれば、行動パターンやふるまい、考え方、性格が変わり、結果的に、運命まで変わる。
つまり、未来が変わるのです。とても勇気が出る言葉ですね。
具体的にどんな言葉に変えればいいかは、これからしっかりお話ししていくので楽しみにしていてください。
落ち込みやモヤモヤしたときに気分を変える便利な言葉
実際の場面でどんな言葉を使えば、自分を気持ちよくほめられるのでしょうか。
本稿では、さまざまなシーンで、謙遜さんの脳内でくり返されがちな言葉、うっかりいってしまいがちな言葉を「謙遜さんフレーズ」としてピックアップ。
それぞれに対応した「切り替え言葉」をご紹介していきます。
「切り替え言葉」は、気分が落ち込んだり、「私なんて」とモヤモヤしたりしたときに、気持ちをパッと変えられる便利な言葉です。
もちろん、すぐにネガティブな言葉をポジティブな言葉に変えることはむずかしいものです。
しかし、そんな無理はいいませんので、ご安心ください。
この切り替え言葉のいいところは、最初からポジティブな言葉だけをいうのではなく、ネガティブな言葉をいってしまったとしても、そのあとに必ずポジティブな言葉をつければいいという部分です。
最初からポジティブな言葉をいえるようになれば、それはそれでOKです。
文末にポジティブな言葉をつけるだけでいい理由
「どうして最後にポジティブな言葉をつければいいの?」と思うかもしれません。
もちろん、最初からポジティブな言葉をいうのは、難易度が高いというのもひとつの理由です。
もうひとつの理由としては、ポジティブな言葉で締めくくると、ネガティブな気持ちを引きずらず、またポジティブな言葉によって前を向けるようになるのです。
そしてその言葉が自分を労わる言葉であったり、ほめてあげる言葉であったりすれば、どんどんあなたは自然に「自分を認め、ほめられる」ようになっていくのです。
ですから、終わりの言葉を大切にしていただきたいのです。
これからは、謙遜さんフレーズをいったり、考えたりしても大丈夫!
切り替え言葉で気持ちをリフレッシュさせて、言葉の“魔法”を実感していきましょう。
自分の成功や努力を素直にたたえられないとき
「自分なんてダメだ」と内心思っている謙遜さんは、人から「すごいね」といわれると反射的に「とんでもない!」と否定してしまいます。自分に厳しいので、もちろん自分自身をほめるのは至難のワザ。
でも、ほめ言葉に否定してしまうと、相手の好意を拒否してしまうことにもなりかねません。またこれまでお話ししてきたとおり、自分で自分を認めるのは、すこやかに生きるための基本。次の切り替え言葉をぜひ活用してください。
謙遜さんフレーズ
「こんな私をほめられても……。私って普通だから」
「自分だけの力で成し遂げられたわけじゃないので……」
「そんなことないです。たまたまです」
切り替えフレーズ
「自分をほめてくれたことに感謝しよう」
「みなさんのおかげでがんばれました」
「そんな……でもありがとうございます」
自分のために行動できないときや、自分の気持ちがわからないとき
いつも周りに気を使って、あれこれと動き回っている謙遜さん。
「他人優先、自分はあと回し」が基本になっているので、自分の気持ちは無意識に押し殺してしまいがちです。
ですから、時には「私って、なにを望んでるんだっけ⁉」と、ふと我に返ることもあるかも。
あるいは、「人の世話ばかりしてないで、たまには○○さんの好きなことをやったら?」といわれて、「えぇ⁉ そういわれても困る!」と思った経験もあるかもしれません。
それは、自分の望みや感情がわからず、「他人軸モード」になっている状態。そんな謙遜さんが「自分軸」に戻れる切り替え言葉です。
謙遜さんフレーズ
「いつも損な役回りだけど、しょうがない」
「相手が喜んでくれるなら、私が我慢しよう」
「『あなたはどうしたいの?』と聞かれてもよくわからない……」
切り替えフレーズ
「誰かのためでもあるけれど、自分の成長にも役立っているはず」
「他人の期待に応えることばかり考えず、自分の理想に向かって進んでみよう」
「今は質問に答えられないけれど、これから挑戦していこう」
周りの状況に振り回されていると感じるとき
謙遜さんは、周囲の状況に気がつきすぎるせいで、場の空気や相手の態度に影響を受けやすいのも特徴。その結果、人の言動に振り回されたり、自分を犠牲にして他人のために奔走したりしがちです。
「みんなにとっていい状況をつくりたい」「相手を大切にしたい」という思いが強いのは素晴らしいのですが、結果的に自分を苦しめてしまっては本末転倒ですね。
なによりも大切なのは自分自身。次の切り替え言葉で、自分の幸せを真っ先に追求していきましょう。
謙遜さんフレーズ
「周りの人が喜んでくれなかったらどうしよう」
「今は少し無理をしてでも、人に尽くさなければ」
「毎回○○さんの発言に振り回されて疲れちゃう……」
切り替えフレーズ
「みんなの幸せも大切。でも、自分の幸せも同じくらい大切だ」
「自分のできる範囲で、人を助けよう」
「○○さんに振り回されているから、今度は提案してみようかな」