※本稿は、中谷充宏『小さな会社の採用お金をかけなくてもここまでできる!』(秀和システム)の一部を再編集したものです。
応募者のメンタルの強さを見抜く
ストレス社会の昨今、メンタル不調で休職する人が多いのはご存知の通りです。
とはいえ、人的余裕がない中小零細企業で多数の休職者が出たら、会社経営が止まってしまいます。実際には、面接だけでは自社に必要なメンタルの強さは測りにくいですが、これを感じ取るのに有効的な質問を、次にピックアップします。
NG!
「ストレス耐性はありますか?」
OK!
②「ストレスはどう解消していますか?」
③「ご自身の長所、短所を教えてください」
④「物事を真剣に考える方ですか? それともテキトーで楽観的な方ですか?」
⑤「ストレスを感じるのはどんな時ですか?」
①「前職で小さなミスをして叱られた」といったショボいものでなく、たとえば生死をさまようレベルの困難を経験しているかで強さを測ります。
②入社後も健康なメンタルを保つことができるかをチェックします。
③一概には言えませんが、たとえば「神経質、心配性な人は、メンタルに支障をきたす可能性がある」と見るやり方です。
④メンタルに支障をきたす可能性をあぶり出す2択の質問です。
⑤これも自社の基準において子細なレベルならば、メンタルに支障をきたす可能性が高いと見ます。
転職回数が多い、長期のブランク…経歴の謎を解くには
中小零細企業にピカピカの経歴を保有する人材はなかなか来ない一方、妙に転職回数が多い、失業期間が長い、長期のブランクがある、といった謎の経歴をお持ちの人材は集まってきます。もちろん、だから自社に合わないとは即断できません。
次のような質問が有効です。
OK!
②「転職回数が多くなった理由をお聞かせください」
③「失業期間が少し長いように感じますが、いかがでしょうか?」
④「2年間のブランクがあるようですが、その間は何をされていたのですか?」
⑤「こうしたブランクを、あなたはどう捉えていますか?」
①「決して多くない」とか「多くの仕事を経験したのは私の強み」などと回答する人は、事実を受け止める素直さを感じられず、疑問符が付きます。
②「転職回数が多いから、当社に入社してもすぐ辞めるだろう」は早計で、納得の理由があるかもしれません。それをきちんと聞いておきます。
③一般的には、半年以上だと長いと言えるでしょう。「再就職活動に全力を尽くしたけれども、思うような成果が得られなかった」なら、納得の答えです。
④⑤放浪の旅や資格の勉強、療養、アルバイト、ワーホリなど、2年間の過ごし方は自由ですが、その内容が自社で受け入れられるかがポイントです。再就職にはネガティブ要因になりかねない「ブランク」をどう見ているのか、チェックしておきましょう。
腰を据えて仕事をする気持ちが感じられないならマイナス評価になります。
面接慣れしている人には意表を突いた質問を
面接慣れしすぎている応募者は、一定数います。慣れていない中小零細企業の面接官の一枚も二枚も上を行くでしょう。とはいえ、面接でうまく話せるからと言って、自社に合うとは限りません。
面接慣れしている人は、一般的には定番質問の回答に慣れています。噺家レベルにアドリブが効く人は別として、想定外へのアドリブ力を測る質問が有効です。
OK!
②「快晴時の空って、何で青いのでしょうね?」
③「面接慣れしていますよね?」
④「自分の意見をしっかり話せる人ですね。その分、敵も多いのでは?」
⑤「ここまでの面接を振り返って、10段階評価で自己採点してください」
①自己PRや長所・短所、志望動機といった定番質問ではなく、こうした漠然とした質問は効果的。「私ならこうする!」が、自社の方向性とマッチするなら、高評価につながっていくでしょう。
②仕事とはまったく関係のない想定外の質問で、面接慣れと関係のない部分の人柄を見ます(科学的な正解を知っていたとしても評価ポイントではありません)。
③ズバリ聞いて反応を見ます。
「何事にもしっかり準備するタイプなので、そう感じていただけたのだと思います」といった回答なら、入社後の期待も高まり高評価につながっていくでしょう。
④こうした少しイヤミの混じった圧迫質問で反応を見るのもありでしょう。
⑤想定外&点数での自己評価と、面接慣れしていても有効に回答するのが難しい質問により、自社の見立てと本人の評価が過剰なのか過少なのかを選考材料とします。
「他社に行かないか」を見抜く
応募者にとっては、複数の企業から内定を獲った上で、処遇面や社風、やりがい等を比較検討して転職先を決めたいのが当然の本音です。
自社に合いそうな良い人材なら、早めに決めてもらわないと、すべての採用工程に影響が出てしまいます。そこで次のような質問が有効です。
OK!
②「いま転職活動中とのことですから、他社も複数受験されていると思います。差し支えない範囲でかまいませんので現在の進捗具合を教えてください」
③「弊社から内定をお出しした場合、受諾するかしないかの決断にはどれくらいの期間が必要ですか?」
①応募者側から他社の存在を語ってもらう、いわば誘導尋問の一つです。ここで他社よりも自社を優先している旨が伺えたら、高評価でしょう。
②たとえば「それは回答を差し控えます」と、まともに回答しない人が自社に合うのかが一つの判断ポイントです。
ここで他社の選考がまだあまり進んでいない情報を得たら、ぜひ③の質問をしてみましょう。
③誤解のないように要注意ですが、「実際にいつ入社できるのか?」ではなく、当社で働くかどうかの決断に必要な時間を問うています。一般的な「2週間以内」を一つの目安として、あまりに長いようなら縁がないと見限ることも必要でしょう。
「社風に合うか」を見抜くための質問
社風というのは、なかなか言語化、定量化しづらいものです。また、「当社は社長も含め、重役も部長も課長も若手も、みんな『さん』付けで呼び合う風通しの良い文化です」と、求人広告でPRしたとしても、たとえば儀礼的に「さん」付けで呼んでいるだけで実はパワハラが横行しているなら、風通しが良いとは到底言えません。
したがって、「こんな会社だと知ってたら入社しなかった」となりかねないと思われる、自社ならではのネガティブ要素に目を向けて、事前に確認するのが間違いないやり方です。
次のような質問が有効となります。
OK!
②「当社は大半が職人気質で、既存の社員達から認められないと、やっていくのは難しいのですが、大丈夫ですか?」
③「当社には、いわゆるお局さん的な存在がいますが、そのような方の下でもやっていけますか?」
①強制しなくても、こうした組織風土がそもそも「無理!」という人も一定数います。
②簡単には「大丈夫」とは回答しづらい、かなりハードルの高い質問です。ただ、自社の社風がそうなら、ごまかさずにきちんと確認して入社の覚悟を問うべきです。
③ここも②と同じです。「お局さん」を「部下に厳しい部長」「細かい報連相を求める課長」など、自社なりに置換してください。自社にいるそうした既存社員を軸に、その部門を運営していく方針なら、事前にこのようにきちんと伝えておくべきです。
配属先や上司と合うかを見るには
中小零細企業ゆえに、「採用後はこの部門のこのポジションに配属する」と決めているケースが大半でしょう。
たとえば「社長とは相性が良く高評価で採用したが、現場ではソリが合わず短期退職」というのは枚挙にいとまがありません。実際に一緒に働く現場の職員を面接に参加させるやり方を推奨します。
それに加えて、次のような質問が有効です。
OK!
②「配属先の仕事は、閑散期と繁忙期の差が激しく、月単位で勤怠が大きく違いますが、そうした勤務体系は大丈夫でしょうか?」
③「配属先のメンバーは皆、あなたと年が離れていますが、やっていけますか?」
④「配属先の上司は、面倒見が良い反面、厳しい指導で知られていますが、やっていけそうですか?」
①配属予定先の部署に自社特有のものがあれば、先回りして伝えておき、その覚悟を問います。
②ここも①と同じで、配属先の働き方に特徴があるなら、大丈夫かを事前に確認しておきます。
③ここも①②と同じで、職場の人員構成や雰囲気を事前に伝えておき、やっていけるかを確認します。
④業務上、最も関わりが出てくるはずの上司の特徴を伝えて、やっていけそうかを確認します。