「上司と意見がぶつかったらどうするか」「自分の意思や価値観にそぐわない指示をされたらどうするか」……。転職面接で、こうした答えにくい質問をされた場合はどう返したらいいのか。キャリアカウンセラーの中谷充宏さんは「企業側は、何でも言うことを聞く人がほしいからこういった質問をするわけではない。なぜその対応になるのか、具体的なエピソードを交えてわかりやすく説明するといい」という――。(第4回/全6回)

※本稿は、中谷充宏『20代~30代前半のための 転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

従業員と面接する管理職の男性
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オフタイムの過ごし方を教えてください

【面接官が知りたいのはココ!】
応募者の日常や、意外な一面があれば知っておきたい
仕事に差し支えのない過ごし方かな?
ライフスタイルや信条は、当社とマッチするかな?

この質問により、応募者の意外な一面が見えてくることもあります。

家族サービスに費やす、恋人と過ごすなどのアットホームなものから、スポーツや趣味への傾倒、資格取得といった自己啓発など、いろいろと想定されますが、ここは自分の現実の過ごし方をありのままに伝えてください。

やはりオン・オフの切り替えは非常に大事ですので、ここは仕事に直結していないとNGということはありません。応募者の違う面を見せる良いチャンスと捉えてください。

ただし、一点だけ面接官が懸念することがあります。オフタイムの縛りが強すぎて、当社の業務に影響が出ないかということです。

たとえば、夜間大学院に通学中で、その勉強に余暇の大半を費やしている場合、修士論文前だと超多忙になり、仕事に支障が出かねません。

面接官にこうした点を憂慮させないフォローも必要になります。

たとえばこういう人の場合

24歳男性、大卒。今まで新卒入社した会社に勤務中。今回は初めての転職で、同業他社の営業職への応募。

NG!
「オフは司法試験の予備試験の勉強に充てています。~」

↑高難度の独立系資格の勉強は、応募企業勤務への本気度を疑われてしまいます。

OK!
「オフタイムはスポーツジムに通うようにしています。
『社会人になると、大人の体育の時間が必要ですよ』、というジムのトレーナーの提言に共感し、必ず1週間に3日は体を鍛える時間を確保するようにしています。
学生時代、アメフトサークルに在籍していました。体重を増やすために制限を設けず食べていましたが、今では旺盛な食欲だけが残り、日常の運動量は学生時代と比べて遥かに減っています。
このままではメタボまっしぐらです。
ダイエット効果もありますが、ジムで心地よい汗をかくことは、ストレス発散にもなりますので一石二鳥と考えています」

↑健康管理にもストレス発散にもメリットがあるジム通いは、多くのエグゼクティブ層も取り組んでいますし、仕事にも影響がないので、納得の回答と言えます。

集団の中で、どういったポジションをとりますか?

【面接官が知りたいのはココ!】
リーダー的役割を担う人ばかりを求めているわけではない
今回の当社の募集にマッチしているのかな?

就活の影響からか「リーダーだと高評価される」と誤解されていますが、縁の下の力持ちでも参謀役でも裏方でもかまいません。

確かにリーダーシップを発揮できる人材は重宝されますが、しょせん自己申告レベルですから、自分を客観視して、面接官が納得できるポジションを伝えてください。

組織から任命されたものだけではなくインフォーマルなものも含めて、集団での立ち位置を聞き出すことで、本来の応募者の姿を確認できると面接官は考えているのです。

また、面接官は具体的な配属先を意識して採用活動を行いますから、面接シーンでは、「あの部署で、あの課長の下ならうまくやれそうだ」とか「あの部署では彼がいるからポジションがバッティングする」などのシミュレーションをしています。

つまりこの質問で面接官は、応募職種の組織で応募者が働く具体的なイメージを抱かせてくれることを期待しているのです。

たとえばこういう人の場合

27歳男性、大卒。今まで新卒入社した会社に1年勤務。今回は2社目の転職で、前職とは異業種・異職種への応募。

NG!
「リーダー的役割を担うことが多いです。学生時代、仲間と一緒にフットサルチームを創って、対外試合の窓口も担当していました」

↑裏付けのエピソードが古すぎて、説得力がありません。

OK!
「私は今まで集団の中で上をサポートする役割を務めることが多く、こうしたポジションこそ自分の力を最大限に発揮できると思っています。
前職では主任として、管理職である課長と、パート、アルバイトといった現場スタッフの間を取り持つポジションを担っておりました。
双方との意思疎通をしっかり図りながら、課長の会議出席時には、現場の動向や現状を報告するなど、課長のマネジメント業務もサポートしておりました。
実は中高大と部活やサークルの主務を任された経験があり、こうした経験も現在の仕事上の役回り、立ち位置につながっていると考えています」

↑仕事上の実体験を交えて話すことで、分かりやすく説得性のある説明に仕上がっています。こうした流れなら、学生時代の話を持ち出すのもありでしょう。

チーム構築のコンセプト
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上司と意見がぶつかったら、どうしますか?

【面接官が知りたいのはココ!】
受け入れるのが鉄則だが、イエスマンも困るよ
角を立てずに上司を説得した経験があるなら、ぜひ聞かせてほしい

若手ですから指示を出すよりも、受ける方が圧倒的に多いはずです。

会社で働く以上、会社の秩序、ルールを忠実に守らなければなりませんから、上司と意見が合わなかったとしても、まずは不平・不満をこぼさず、きちんと受け入れなければなりません。

つまり、上司の意見を素直に受け入れられる姿勢があるかを、まず把握したいと面接官は思っています。

しかし、だからと言って、「何でも言うことを聞くイエスマン」を若手に求めているわけではありません。

自ら何も考えようとしない社員は要らないし、これでは会社も発展しません。業務経験豊かな上司にも、習得していない方法論や考え方が何かしらあるはずです。

だからこそ、自分の主張や意見を、相反する上司にどのように認めさせていけばいいのか、その交渉術や成功体験があるなら、ぜひ聞かせてほしいと思っています。

たとえばこういう人の場合

26歳男性、大卒。今まで新卒入社した会社に勤務。今回は2社目の転職で、前職とは異業種・異職種への応募。

NG!
「私が間違っていないなら、まず自分の意見をはっきり伝えますね」

↑端的に言い切って終わりではなく、ぜひその交渉術を展開するようにしてください。

OK!
「そうした場合でも、まずは上司の意見を聞いて、その主旨を理解することに集中したいと思っています。そうすれば、表面上は相反しているように見えても、実は根底は同じだったり、違いは些細だといった部分が明らかになることもあると思います。
それでもダメなら、私との違いを誠実にお伝えしたいと思います。後でグチるのではなく、同じ組織の一員として正々堂々と伝えることの方が大切だと考えます。
前職でも同様のことがありましたが、私なりの提案をし、その後周りの賛同も得ながら、資料を見せるなどして地道に交渉しました。
その結果、上司が『君がそこまで真剣なら』と、私の提案を一部取り入れて下さいました」

↑上司の意見を受け入れる姿勢があるとともに、自分の意見をきちんと伝えることの大切さも感じられます。上司と交渉した経験も具体的で、面接官も納得でしょう。

自分の意思や価値観にそぐわない指示をされたら?

【面接官が知りたいのはココ!】
従順さと自己主張の強さのバランスを見極めたい
仮説から回答を展開する想像力・構成力はある?

もちろん、コンプライアンス違反の命令を従順に受け入れる「イエスマン」は求めていません。

中谷充宏『20代~30代前半のための 転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)
中谷充宏『20代~30代前半のための 転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)

一方、自己主張が強すぎて業務に支障が出るのも困ります。

要はバランスです。

いずれにせよ、なぜその対応になるのか、具体的エピソードを交えて分かりやすく説明してもらい、当社で働く上で問題がないかを見極めたいと、面接官は思っています。

また、仮説を立てて、こういうケースではこう対応するといった組み立ても必要になってきます。

「緊急を要するケースなら、つべこべ言わず受け入れるが、自分の意見を反映してもらえるような雰囲気であれば、そのまま従わずに上司に提案してみる」といった具合です。

このような条件分岐や、仮説を展開する想像力や構成力も、見極めたいのです。

たとえばこういう人の場合

28歳女性、大卒。今まで新卒入社した会社に勤務。今回は2社目の転職で、同業種・同職種への応募。

NG!
「勤め人である以上、業務命令は絶対ですから、自分の意思に関係なく従います」

↑これでは単なるイエスマンといった印象しか残りません。

OK!
「2つにパターン分けして考えます。まずは組織の一員として、私見をはさむ余地がない指揮命令であれば、きちんと従います。
逆に、提言できる状況なら、命令系統に向き合った上で従うようにします。
前職では2年前に社員の反対を押し切ってノルマ制が導入され、納得しない社員は辞めました。売上増が本来の目的なのに、戦力である社員を辞めさせるのは本意ではないはずと考え、上司に冷静に掛け合って一部を改良して頂いた経験があります。
素直さも大切ですが、声を上げることも必要と実感した次第です。
今後も状況を判断して行動していきたいと思います」

↑最終的には従うという結論でも、プロセスを構成立てて説明できています。前職の実体験を語ることにより、応募企業での活躍も期待されることでしょう。