転職の面接では、わざと答えにくい圧迫系の質問をされることもある。キャリアカウンセラーの中谷充宏さんは「圧迫系の質問は、回答の内容そのものよりも『無茶ぶりに対してどんな対応をするかを見たい』という意図で行われることもある。感情的になると思うツボなので、落ち着いて、面接官の質問意図を考えて打ち返すとよい」という――。(第5回/全6回)

※本稿は、中谷充宏『30代後半~40代のための 転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

虫眼鏡を通してヘッドハンティングする3Dイメージ
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今の会社をすぐに辞めていただけますよね?

【面接官が知りたいのはココ!】
無茶ぶりに対する柔軟かつ適切な対応を見たい
「はい、すぐ辞めます」はいらないよ

面接官は、在職中の社員がすぐ辞めるのは困難なことを重々理解しています。あえて無茶ぶりして、人間性を見たいと思っているのです。

期待に沿わなければと、「すぐ辞めます」と回答すると、即退職できる明確な理由があれば別ですが、「引き継ぎや退職手続きをおざなりにする自分勝手でいい加減な人」と評価されて終わり。特にミドルの場合、この自分勝手さは致命的です。

経験あるミドルでも、人によって「面接~退職~入社日についての常識」には幅があります。

退職を申し出てから2週間で退職できるのが現在の日本の法律です。就業規則は「1カ月前までに退職の申し出をすること」が多くを占めています。ですので、「すぐは無理だが2~3カ月待ってほしい」はアリ(常識の範囲内)です。ただ、2~3カ月以上になると「そんな先では弊社の採用のタイミングに合わない」と見限られる危険性が高いことは知っておいてください。

たまに「すぐ辞められるわけないでしょう!」と感情的になる人がいますが、思うツボです。

まず、すぐには退職できない理由を説明し、できるだけ期待に沿う姿勢や想いを加え、できない理由をフォローします。「在職中なのですぐ退職するのは困難です。しかし御社の受け入れのタイミングもあるでしょうからご期待に沿えるように今の職場と調整します」という感じです。

たとえばこういう人の場合

39歳男性、大卒後2社に勤務。今回は3社目の転職で、同業種・同職種への応募。

NG!
「可能です。今の会社にもはや気持ちがありませんので、一刻も早く辞めたいです」

↑自分勝手さに満ちた発言は、慎むべきです。

OK!
「今はまだ現職で働いておりますので、すぐには退職できません。申し訳ございません。
特に今は、私がリーダーとなって推進している新規プロジェクトがあり、この完遂までは正直なところ、退職は厳しいと思っています。御社で働きたい気持ちは満々ですが、プロジェクトの途中で脱退するのでは、リーダー失格だと思います。
御社の今回の求人は通年採用であり、『入社時期については応談』とありましたので、応募させて頂いた次第です。もちろん、入社タイミングについて、スピード感を求められるようでしたら努力を惜しまない覚悟ですが、わがままを言わせて頂けるのであれば、本プロジェクト終了まであと2カ月頂きたいというのが、私の偽らざる気持ちです」

↑現況や仕事観を語るのは非常に効果的。求人情報に触れて柔らかく反駁はんばくするのも有効。期間短縮の努力に触れるのは必須です。なお、「すぐ退職に向け(内密に)動けます」とアピールするのは得策ではありません。この質問の局面では面接官は、入社意欲を知りたいというより「しっかり引き継いでから来てほしい」という心情だからです。

転職回数が多いことについて、どうお考えですか?

【面接官が知りたいのはココ!】
言い訳は聞きたくないからね
多いことに対する分析、反省、今後の意気込みは?

外資系のようなごく一部を除いて、ミドルであっても転職回数が多いのは明らかに不利な要素です。

だからといって事実は消せないし、何とかフォローしようとするあまり、たとえば「前職では成績不振という理由で退職を余儀なくされ、前々職では上司の理不尽な命令に職場の皆が不満を持っていて……」と、一つひとつ過去の勤務先の退職理由を長々と説明しても、聞き苦しいだけです。

回数が多い場合、面接官は、「当社もすぐ辞めてしまうのでは?」という点を一番危惧していますから、「大丈夫」と信じてもらえる回答ができるかどうかに、全てがかかっています。

まず、回数が多くなった理由について、反省や分析を述べた上で、心新たに応募企業で腹を据えて働く覚悟、たとえば、
「年齢的に御社がラストチャンスと腹をくくっております。もし御社にチャンスを頂けるなら、全身全霊を尽くして働きたいと思っております」
と語ってもらうことで、当社で頑張ってくれそうだという確信を持たせてほしいと、面接官は思っているのです。

会議室で握手するビジネスマン
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たとえばこういう人の場合

43歳男性、大卒。現在まで7社にて勤務。今回は8社目の転職で、同業種・同職種への応募。

NG!
「たまたま多くなったというのが偽らざる感想です。新卒入社した会社では上司とソリが合わず~」

↑過去の勤務先の退職理由を一つひとつ述べていくのは、やめましょう。

OK!
「今回で7回目ですので、確かに多い方だと自覚しています。
若い頃、30代前半までは、やりたいことに主眼を置いていまして、それが叶わないと辞めて次を探すといったパターンを繰り返しておりました。
しかしもう40代で、前職ではそういった若い社員の面倒を見る立場になり、いかに自分の振る舞いがわがままだったか、身につまされる想いでした。
正直に申し上げて、転職回数が多いことが今の転職活動でネックになっており、非常に苦戦しております。
もし御社に拾って頂けるのであれば、粉骨砕身で職務に励む所存です」

↑転職回数の多さがマイナス要因になるのは間違いないため、よけいな言い訳は聞き苦しいだけです。自身の立場の変化や今の切実な想いを、力いっぱいアピールするしか術はありません。

言うことを全く聞かない若手の部下がいたら、どうしますか?

【面接官が知りたいのはココ!】
論理的に自分の考えを話してね
時流に即した育成方法を教えてほしい

このような仮定の質問では、仮説を立ててから論理的に持論を展開する力が試されます。

中谷充宏『30代後半~40代のための 転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)
中谷充宏『30代後半~40代のための 転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)

特にミドルは人材育成を求められることが多いので、仮の話であっても、地に足の着いた現実的な人材育成力を語り、その力を発揮するシーンをイメージさせてください。

「私の若い頃は厳しく育てられたので、この部下にも同じ方法で言うことを聞かせます」と回答すると、「それは今の時代に現実的なやり方なのか?」という懸念が出くることでしょう。

応募者独自の育成方法があってもちろん良いのですが、今の若手社員に合ったものを述べることが大切です。面接官に「この人には当社の大事な若手を任せられない」と思わせないようにしなければなりません。

実際に同じような経験があり、習得したことがあれば、それを語れば納得感が高まります。

なければ、後輩と接した類似体験から今の若手の特性や思考を知っているので、このように対応していきたいといった回答をしておきましょう。

自分の経験に基づいた内容を盛り込む

たとえばこういう人の場合

39歳女性、大卒。現在まで2社に勤務。管理職経験あり。今回は3社目の転職で、同業種・同職種への応募。

NG!
「部下を持った経験がないので何とも言えませんが、一生懸命向き合うことで活路を見出したいと思います」

↑経験がないからといって、抽象論だけで終わるのは良くありません。

OK!
「若手社員の気持ちをきちんと把握するのが最優先ですので、まずマンツーマンでの面談の時間を確保し、若手の考えを徹底的に聴き出したいと思います。
私の経験では、1回で終わらないことが多かったので面談回数を増やし、時間をかけて粘り強く取り組んでいきたいと思います。
不満な点があるなら、本人に問題があるのか、職場環境に問題があるのかを見極めて、こちらで改善できる内容であればできる限り応じます。
育成には近道はないと思っています。時間はかかりますが、地道に真摯に本人に向き合うことが大切と考えます。特に今の若手はかまってほしい気持ちが強いので、声かけを欠かさない等、関わりを持ち続けることがコツだと思っております」

↑方法は独自のものでかまいませんが、問題は若手にフォーカスしているか否かです。育成経験がある場合は、自身の経験から導き出した内容を盛り込むと非常に効果的です。