※本稿は、中谷充宏『30代後半~40代のための転職「書類」 受かる書き方』(秀和システム)の一部を再編集したものです。
同じ実力なのに「通る/秒殺」を分けるものは何か
同じレベルの実力なら結果も同じようになるはずですが、そうはいかないのがミドル年代の特徴です。転職して本当に良かったという人と、後悔する人の2パターンに分かれるということです。
分かれ目はズバリ「転職スキル」が備わっているかどうか。仕事のスキルとは別物です。
仕事はできても転職市場において自分に合った仕事や会社を見つけられない、自分をうまくPRできない。そういう「転職スキルを欠いている人」は、残念な結果に陥りやすいのです。
「転職スキル」を習得するには
ではどうすれば「転職スキル」が身に着くのでしょうか?
転職活動をしていることを周りに知られたくないと、一人でこっそり取り組む人がいますが、どうしても自分だけでは限界がありますし、望まない道に進んでしまうことも多いのです。
同期入社で転職経験なしでも、積んできたキャリアは人それぞれで、同期の社員と全く同じではありません。
最もシンプルで効果的な方法は、「専門家を頼る」です。
20社受けて全滅
実際に筆者が支援した事例です(若干編集しています)。
状況:20社を受験するも、全て不採用
相談内容:結果が出るよう、転職活動のやり方を大幅に見直したいが、一体どうして良いか、わからない
話を伺った上で「大幅な見直しは不要、今のやり方を継続して下さい」とアドバイスしました。
ターゲットやPR内容がずれているといった根本的な問題によるものではなく、この年代だし応募先もそれなりに競争率が高そうなので、20社程度なら不採用が続くこともあるという分析に基づくものです。
今はクリック操作だけで大量応募が容易です。
20社も不採用になるとさすがにへこむでしょうが、複数内定を得ても転職するのはたった1社。へこんでいる暇があったら、母数を増やして運命の1社に出会う確率を上げていくべきです。
この方はその後、応募した5社で最終面接まで進み、意中の会社の内定を獲得し転職されました。
応募社数の合計は25社でした。
例えば「5社受けたうち1社は最終面接まで進んだ」を繰り返すなら「自分のやり方は間違っていない」と思うでしょうが、「20社受けて全てダメ」だとすると、大幅な軌道修正が必要と考えるのは当然のことです。
専門家を頼る方が確実
不採用が続いているのに「このやり方で良い」と判断するのは、一人では無理です。
せっかく正しいやり方でやっているのにこねくり回してこじらせてしまうケースは「この年代あるある」です。
ダイエット、筋トレやゴルフでは、プライベートコーチのような専門家をつけるのがメジャーになっています。
もちろん、一人でもできなくはないでしょうが、専門家を頼る方が確実かつ効率的です。
だからこそ、転職シーンでも専門家を頼ってみて下さい。
標準的な中途採用の流れ
ターゲット求人を見つけたら、その会社に応募しますが、大まかな流れとしては、次の通りになります。
②面接選考を受ける(2、3回程度)
③適性検査等のテストを受ける
転職は需要と供給のバランスで決まる要素も強いです。例えば、人手不足の会社の決定権者である社長との面接で意気投合して即内定ということもありますが、そういったのは稀。標準的なのは上記だと思っておいてください。
①書類選考
履歴書&職務経歴書のセットを提出するのが今まで通りで、定番中の定番です。今はこのセットの代替となる「キャリアシート」をWeb上で入力して仕上げて送信するのが主流になりつつあります。なお、今も散見される手書きバージョンの履歴書ですが、脱ハンコやデジタルファーストが進められる中、応募企業から要求されない限り、手書きでなくて大丈夫です。
ちなみに郵送は減少傾向で、メール添付やクラウド上へのアップロード等、オンラインで受け渡しするのが主流です。この場合、セットのファイル形式がワードやエクセルならPDF変換して送ります。
②面接選考
2~3回程度実施されることが多いです。就活生と違って、グループ面接やグループディスカッションが課されるケースはほとんどありません。
ZoomやTeams等を含め、オンラインでのやり取りに慣れていないと面接どころではありませんので準備が必要になります。
③適性検査等
書類選考と同時に課されることもあり、タイミングはそれぞれと思っておいてください。適性検査で有名なのがSPIで、転職者向けの対策本も発行されていますので、ぜひ一読しておいてください。
その他、応募会社独自のテストなどもありますが、書類と面接で選考していた以前と違って、テストが課されるようになったのも最新のトレンドと言えます。
うまくいかない人の9割は「対策不足」
内定を獲得するには、それぞれの工程で応募企業が求める基準をクリアしないといけません。「文書を書くのが苦手だけど、会ってもらえば私の良さは絶対に伝わる」という人も多いのですが、最初の書類選考で不採用となったら、会ってもらう機会すら巡ってこないということを肝に銘じなければなりません。
四の五の言い訳や愚痴を言っても仕方がなく、それぞれの工程の対策をきちんと打って、「転職スキル」を向上させる。これしか成功転職への道はありません。
筆者の経験上、「転職活動がうまくいっていない」と相談に来る人の約9割は、無対策が原因です。
逆に言うと、各工程の対策をきちんとやれば、ライバル達を置き去りにして抜きん出ることができるということです。
大事なことなので何度も言いますが、仕事上のスキルと「転職スキル」は違います。
絶対に手を抜かずに、この「転職スキル」を磨いてください。
ミドル世代に要求される「マネジメントスキル」
この世代なら、マネジメントスキル・経験を求められるのはお分かりでしょう。
では、「そんな輝かしいものはない」といった場合、どうすればよいのでしょうか?
たとえば、年功序列の職場のため、管理職は全員年上で、同僚も自分も管理職に就けないでいる場合はどうでしょうか?
結論、「ないものはない」ので、たとえば「マネジメント経験5年以上」との必須条件があったら、そもそも応募すらできません。
また、マネジメント経験を問われたとして、「いや、単に上が詰まっていただけで、私自身、マネジメント能力なしと特に烙印を押されたわけではない」というくどくどした言い訳は、かえって採用人事の心証を悪くしますので、やめておきましょう。
なお、会社のヒエラルキー上のチームや組織、人材のマネジメントではなく、他のマネジメントスキル・経験を求めている場合もあります。
たとえば、あるプロジェクトの進捗管理、工数管理、スケジュール管理というのもそうですし、在庫管理や売上管理、店舗管理、ファシリティマネジメントというのもそうです。
もちろん前者を要求されるのが一般的ではありますが、マネジメントと一括りに言っても、求人情報で何を求めているのか、詳細に紐解いておく必要があります。
どこで嘘を見抜くのか
たまに「嘘をつくのも立派な能力で、こと営業職では高く評価される」という意見を目にすることがあります。
確かに世の中には「嘘も方便」というシーンもありますが、筆者は転職活動中の嘘はお勧めしません。
特に経歴詐称になるような嘘は、入社後に重罪となりますので、絶対にやめておきましょう。
採用人事は、どこで「怪しい」「嘘っぽい」と見るのでしょう?
答えとしては、「最初から全て疑ってかかっている」と思っておいてください。
「貴社で活かせるスキル・経験」とか「自己PR」とか、しょせん自己申告の世界で、みんな良いことしか書かないよね。これらが書いてある通りだと額面通りとらえるわけにいかないよ、というスタンスです。
短絡的には判断しない
中高年によくあるのが、組織の功績をさも自分一人の力で成し遂げたように表現するケースです。
確かにその組織の長に就いていたなら、ある程度は貢献したのでしょうが、部下達が超優秀で長は特段何もせずに成果が出たのかもしれません。
偶然のヒットをいかにも自身が綿密に計算した成果のように装うというのも同じです。
こういったケースでは、
・その功績・ヒットが生まれた背景、経緯は?
・そこに行き着くまでに立ちはだかった壁は?
・それをどう乗り越えたか?
・そこでの自身の具体的な取り組みや周りの働きぶりは?
など、面接で詰問されます。
そこで、その成果に導くあなたのやり方が、応募先でも活かせると採用人事が判断したら、「再現性あり」と、高く評価されることでしょう。
一方、
「成果と取り組みの因果関係が乏しい」
「何か怪しい」
「引っ掛かる」
となると、他はOKだとしてもこれがボトルネックになって、全体的な評価を下げてしまうということもあります。
さすがに今ではかなり減りましたが、罰点がつかない限り、ある時期までは同期横並びで昇進、昇格するといった旧態依然とした人事評価制度がある企業は現存します。
そうした企業なら、40代半ばともなるとそれなりに部下もいますが、マネジメントスキルは全くと言っていいほど備わっていないという人も存在することは、採用人事も把握しています。
つまり短絡的に「会社のヒエラルキー上の管理職経験=マネジメントスキル」とは見ていないということです。
面接での詰問に対してきちんと回答できて、初めて感じ取ってもらえるものです。