※本稿は、中谷充宏『30代後半~40代のための 転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)の一部を再編集したものです。
当社のような小さな会社で、やっていけますか?
現職と当社の差は認識してるよね?
小さな会社への入社意欲や、そこで働く覚悟も聞きたい
感情的にならずに「やっていけます」という回答をするのは大前提です。
その上で、次の3点を考慮して面接官に「やれる」と納得してもらわなければなりません。
まず「今の会社と応募企業の差」を認識できているかどうか。
次に「応募企業への入社意欲」です。なぜ、あえて規模が小さい当社で働きたいのか、何をやりたいか。
最後に「(入社後の)小さい会社で働く覚悟」です。「こんな雑用まで私がやるの?」、「前の会社ではこうではなかった」といったことがないように、確固たる気持ちを宣言してください。
たとえば「確かに前職では、首都圏の23店舗の売上集計や分析に従事していましたから、国内で店舗が1つの御社で、この経験が直接活かせることはないでしょう。しかし、私は首都圏限定の売上管理ではなく、会社全体の数字を把握し販売戦略を練り、経営層に提言していくような、今回の御社のポジションに非常に魅力を感じています。規模の違いがあり職場も変わりますから、仕事の進め方や社風、待遇などに違いがあることはもちろん覚悟しています」というように、上記3つのポイントを盛り込むように話すことが肝要です。
たとえばこういう人の場合
43歳女性、大卒。新卒入社した1社に在職中。今回は2社目の転職で、現職と比べて規模が小さい同業の同職種(営業課長候補職)への応募。
NG!
↑今の会社と応募企業の差を認識していないと見限られる、お世辞でしかない発言はNG。
OK!
しかし組織が大きいために分業制が確立していることに加えて、マネジメント業務と販促業務で手一杯で、私が営業現場に行くことは、ほぼなくなりました。
やはり私は、お客様に直接向き合って商品を提案していくのが一番向いていますし、何より20年のキャリアを活かせると思っています。
現職のままでは、今後ますますマネジメント業務にシフトしていくでしょう。私はプレイングマネジャーとして営業も管理も両方やる仕事が最適と思い、今回応募した次第です。この想いが実現できるなら、待遇面が大幅に下がってもかまいません」
↑「今の会社と応募企業の差」、「応募企業への入社意欲」、「入社後の働く覚悟」の3つのポイントがきちんと盛り込めていることが最も重要です。
待遇の良い会社で実績も上げていたのに、なぜ退職を?
何かネガティブ要素を抱えていない?
もう一度、退職について納得のいく説明を聞きたい
「現状にどんな不満があるの?」、「今の会社にいられないトラブルでも起こした?」という疑問を解消するための質問です。
実績や処遇を振り返り、それらを捨てて退職する理由を説明します。
一番NGなのは現職に対する不満や誹謗中傷等、ネガティブな退職理由を吐露することです。
「実績を上げても報酬に反映されるのはごく一部で、反映方法も不透明で」、「給与は良いのですが、職場の人間関係が本当に悪くて」等、事実でもそのまま伝えてはいけません。
たとえば、「周りの人達やお客様に恵まれたこともあり、この数年は連続して一定以上の実績を残すことができました。上場企業でしたから待遇も恵まれていたと思います」と、実績や処遇の振り返りをした後、「ただ、先ほど申した通り、今までの融資営業の経験を活かして、今後伸びが期待されるM&A業務に就きたいという決心は固く、1年前から計画を立てて転職の準備をしてきました。退職を決意したことに全く後悔はありません」と、前向きで先を見据えた自身の計画に基づく退職であることを説明するようにしてください。
たとえばこういう人の場合
39歳男性、大卒。新卒入社した1社に勤務中。現在は本社の経営企画部に配属。
今回は2社目の転職で、同業種の営業マネジャー職への応募。
NG!
↑現実的な話であっても、ネガティブな退職理由はご法度です。
OK!
ただ、私はやはり○○の営業現場に出てナンボの人間です。常にお客様と接点を持って、反応を直に感じたいのです。経営企画部への異動には正直、かなり違和感を抱いております。
今回、御社で自ら営業数字を背負い、課の数字も管理する営業マネジャー職に応募していますが、こちらであれば今までの約16年間の営業経験が最大限に活かせると考え、応募した次第です。○○の営業の現場に戻るのが私の最大の目的ですので、給与が下がろうと休みが減ろうと一向にかまいません。覚悟しています」
↑このように、「上司との折り合いが悪かった」、「会社のやり方に不満があった」等の単純でネガティブな理由で退職するのではないことを、きちんと証明する必要があります。
なぜ今まで、管理職にならなかったのでしょう?
くどくどとした言い訳はいらないよ
反省の弁と共に、将来に向けて前向きに語ってね
面接官は、管理職になれなかったことを追及したいわけではありません。
だから「私の前職での課長代理職は、管理職ではなかったのですが、ほぼ課長と同じ役割を担っておりまして」等と取り繕うのはNG。
また「元々、私は管理職志向ではないので」、「管理職にあまり魅力を感じていない」といった話は、自分に都合の良い解釈を並べているだけとマイナス評価につながります。
また、「管理職は責任が重くて自分の器ではない」などと降格を願い出た話を持ち出しても、無意味なのはおわかりでしょう。
管理職経験が求められる世代ですから、「前職ではポストが空かないとなれず、また年功序列が厳しく、課長に就けるのは早くて45歳からというルールでした」といった納得感のある理由ならともかく、自分の能力不足で出世が遅れたなら、素直に反省の弁を述べた方が潔いでしょう。
そしてその後に、管理職への想いやそのポジションでやってみたいことなど、将来に向けた前向きな話に切り替える方が得策と言えます。
潔く力不足を認め、将来に向けた話に切り替える
たとえばこういう人の場合
45歳男性、大卒。今まで新卒入社した1社に勤務。
今回は2社目の転職で、同業種・同職種(法人営業職)への応募。
NG!
↑実態は管理職ではないので、ごまかしにしか聞こえず、見苦しいです。
OK!
45歳ですから、他社で役員や部長に昇進している同級生もいます。差がついたと痛感します。
ただし、私は出世を諦めて惰性で仕事をするつもりは毛頭ありません。この転職活動もそうですが、少しでも高い地位に就き、自分の裁量を発揮し、チーム全体や部下の面倒を見ていきたいという強い想いがあります。
目の前の業務に励み、もしチャンスが巡ってきたら、通常の管理業務だけでなく、これは私だからこそできることですが、課長にもなれないミドル社員の気持ちを汲み、彼らがモチベーションを上げられるような仕組みづくりに取り組んでいきたいと思っています」
↑なれなかった理由の説明に時間をかけるより、潔く力不足を認め、将来に向けた話に切り替える方が、面接官の心証は良くなるでしょう。