※本稿は、中谷充宏『20代~30代前半のための 転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)の一部を再編集したものです。
希望する給与額を教えてください
「御社の規定に従う」を期待しているわけではないよ
求人情報の内容を元に、具体的な根拠に基づいて希望してほしい
好きな額を言って良い、ということではありません。
まず現職(前職)と応募企業の仕事内容を比較するなど、適正に算出する必要があります。
また、求人情報の中にきちんとターゲットプライス(例.月収28万円~40万円)が表記されている場合は、この範囲で答えることが必須になります。
そしてここは現職(前職)から見て、現状維持、減額、増額のどのパターンであろうとも、なぜその金額なのか、明確な理由説明が必要になります。
たとえば、現状が年収400万円で希望年収を600万円とした場合、「前職退職後に、米国公認会計士資格を取得したので、これに見合った金額を希望します。私と同年齢の資格者の平均年俸が620万でしたので~」と、客観的な根拠を示してください。
なお、「御社の規定に従います」は、「最低限の自己主張もできない人」と見なされる危険性があるので、筆者はあまりおすすめしません。
たとえばこういう人の場合
30歳女性、大卒。新卒入社した会社で勤務中。今回は2社目の転職で、同業種・同職種への応募。
NG!
↑はっきりしない回答でお茶を濁すより、きちんと希望額を伝えましょう。
OK!
というのも、現職では年収ベースで500万円でしたが、今回店舗マネジャー候補職ということで、管理職の立場に就くため現職よりも重責を担うこと、並びに販売業務だけでなく、スタッフの教育担当、シフト管理といった店舗マネジメント業務も担当することになり、業務範囲も広がるためです。
ただし、御社の私に対する評価や、規定があることも重々承知していますし、私は御社のこの仕事に魅力を感じていて、御社で働きたい気持ちが優先です。
この希望金額に固執することなく、幅を持って柔軟に対応させて頂ければと思います。
↑希望金額の算出根拠をきちんと説明した後に、希望金額に固執しない柔軟な姿勢もPRできていて、理想的な回答になっています。
現職(前職)より給与が下がりますが、大丈夫ですか?
受け入れてもらうのが大前提
その上で、入社意欲や入社後の給与アップ策をPRしてほしい
同じ仕事でも、給与額の支給基準は会社によって異なります。そのため「転職により給与ダウン」は充分にあり得ます。
いきなり増額交渉を持ち出すのは、もちろんNGです。面接官は、給与が多少下がるとしてもぜひ当社で働きたいという強い決意、覚悟を聞かせてもらいたいのです。
たとえば、「御社の○○業務に就いて△△製品を扱いたい思いが強くて、今回の転職に踏み切った次第です。お金についてはあまり執着していません」というように、受け入れ可能な理由をちゃんと説明してもらいたいと思っています。
さらに、低額条件をそのまま飲むのではなく、「入社後に頑張って今以上の給与をとる!」というPR、もしくは今までの実績や入社後の目標数字必達を約束するなどの「売り」を再アピールして「有能さ」を認めてもらい、年収アップを交渉する方法もアリでしょう。
面接官は、有能な人材なら多少コストがかかっても欲しいからです。
たとえばこういう人の場合
25歳男性、大卒。新卒入社した会社で勤務中。今回は2社目の転職で、現職よりも企業規模が小さい同業種企業の同職種への応募。
NG!
↑本当に半分でも大丈夫なのか、この後にちゃんと説明してください。
OK!
確かに給与だけについて言えば、現職と同等の額は頂きたいのが本音です。
しかし実際まだ御社で何の実績もあげておらず、まだ誇るべき十分な経験・スキルを保有しているわけでもないので、贅沢を言える立場ではないと考えています。
ですので、御社から提示される額に従いたいと思います。
ただし、入社させて頂く以上、一生懸命仕事に励み、必ず求められる以上の結果を出して、同年代の誰よりも高い給与が取れる人物になっていきたいと思います。
↑給与について本音を語った後に、応募企業の条件を受け入れる理由を丁寧に伝えています。また入社後の頑張りも期待できますので、面接官も納得するでしょう。
当社は残業が多いのですが、大丈夫ですか?
大丈夫が大前提だが、「24時間働きます」は白々しいよ
残業の多さに対する考えや対処法について、具体的に語ってほしい
「はい、24時間フル稼働できます」は、明らかに白々しいでしょう。
ここは残業の多さについてどう捉え、どう対処しようとしているか、具体的に説明することが求められています。たとえば、「残業が多いのは覚悟しています。前職でも残業は日常茶飯事で、難なくこなしてきました」といった覚悟や経験だけでなく、「ただし、ダラダラ残業するのは会社にとっても社員にとっても良くありませんから、業務をもっと効率的に進められないかといった視点を持ち、生産性を向上させる不断の努力も必要と考えます」と、残業の多さに対する対処方法も述べることで、面接官への訴求力が高まります。
一方、残業の多さによっては対応できないこともありうる、たとえば過労死ラインの残業があるなら、「前職でそうした残業を経験したが、心身とも疲弊して継続勤務はできないと思いました」という旨の納得できる回答をしておけば、問題ありません。
たとえばこういう人の場合
24歳女性、専門学校卒。新卒入社した会社で勤務中。今回は2社目の転職で、異業種・同職種への応募。
NG!
↑残業できる日が限定的で、業務に支障が出ると見なされてしまいます。
OK!
前職では、今回の応募職種と同じウェブデザイナー職に就いていましたので、長時間勤務、長時間残業をこなして参りました。
この職業は、クライアントに認められる作品を創作しなければ、働いた時間そのものは評価の対象になりません。
また、高度な専門性を要するので、アルバイトのシフトでは対応できず、自分で最後まで責任を持って完遂しなければなりません。
だからやむを得ない事情があるならともかく、長時間残業に対応できないなら、この世界で働く資格はないと思います。
↑今までの経験や仕事観から、残業について覚悟ができている旨を説明できています。いい加減に「大丈夫」と言っているわけではないことが、確実に伝わるでしょう。
急な残業や休日出勤に対応できますか?
勢いだけの「できます!」は聞きたくないよ
できる・できない、いずれにせよ納得のいく説明を
「急な」がポイント。誰しもプライベートや日常生活がありますから、素直に「イエス」とは答えにくいでしょう。
もちろん「はい、御社のためなら24時間365日体制で頑張ります」では、面接官もうさん臭く感じるでしょう。
ここは緊急度によるでしょうが、基本的に「できる」なら、たとえば、「入社後は御社の近くに引っ越す予定で、前々職でもそうした経験があるので対応できます」といったように、過去のエピソードや具体的な方法論などを交えて語ってください。
できないのであれば、明確な理由説明が必要になります。
娯楽・遊興を挙げる人はいないと思いますが、「妻も働いているため2人で家事・育児を分担しており、私だけが仕事を優先するのは難しいです」というように、面接官にやむを得ないと感じてもらえる理由が必要になります。
たとえばこういう人の場合
33歳女性、大学院卒。現在まで2社にて勤務。今回は3社目の転職で、異業種・同職種への応募。
NG!
↑言い切りで終わるのではなく、対応できない理由もきちんと説明してください。
OK!
また私の経験上、そういった緊急性が求められるケースは、ある程度、事前に想定できると考えています。
たとえば前職では、納入後はどうしても様々な不具合が出ることが予見できていましたから、その時期に限ってはメンバー全員が臨戦態勢を取るようにしておりました。
今はWi-Fi環境も整っていて、時間・場所を選ばなくても仕事ができますし、前職でもそういった対応をして、急場をしのいだことが何度かありました。
↑対応しようとする意気込みや具体的な対応策、そして前職の経験を語ることにより、単なる思いつきで「できる」と答えたのではないことが分かります。
子会社や関連会社への出向に対応できますか?
在籍出向なら拒否はNGだよ
転籍出向なら拒否はアリだが、納得のいく説明を
対応できるのであれば、「できます」で終わりですが、なぜできるのか、面接官はきちんと納得のいく理由を聞かせてもらいたいと思っています。
また、ここは「イエス」が必須ではなく、実は「ノー」と答えて良い場合もあります。
出向には在籍出向と転籍出向の2つがあります。
前者は、社員の籍はそのままなので、社内人事異動と同じ扱いです。
後者は、籍を抜いて次の会社に移るので、いわば違う会社に転職をすると同じ意味合いになります。
なので前者を受け入れないとすると、通常の人事異動も受け入れない人と見限られるでしょうが、後者は法的にも労働者の同意を取ることが必須になりますので、「ノー」も可能です。
たとえば、「御社で働くことを強く希望していますが、仮に入社が叶っても、転籍出向となると希望とは大きく乖離してしまうため、今は受け入れがたいです」というように回答すれば、面接官も納得でしょう。
たとえばこういう人の場合
29歳男性、大卒。新卒入社した会社で勤務中。今回は2社目の転職で、異業種・同職種への応募。
NG!
↑感情的に食ってかかるのは論外です。
OK!
出向の経験はありませんが、友人も就職した会社の子会社に当たるカード会社に出向しております。
出向先から必要とされ、請われて行くわけですし、自分がやるべき仕事がある以上、どのような企業、職場であっても私はまったくかまいません。私にとっては大同小異な話です。
それよりも優先すべきことは、御社への入社が叶った場合、この業界はまったくの未経験ですから、できるだけ早く仕事を習得して、職場の皆様方に認めて頂けるようになることです。
まずは、そこに集中していきたいと思っています。
↑出向に対する考え方を明確に伝えた上で、それよりも優先すべきことがあるとして、入社後の仕事を頑張るPRにうまくつなげています。