※本稿は、内藤誼人『気にしない習慣 よけいな気疲れが消えていく61のヒント』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
あなたの心はどうせ相手にはわからない
人の心は、当然ですが目に見えません。ですから、あなたがどれほど不安であろうが、どれほど動揺していようが、相手にはどうせわからないのです。ということは、どんなに不安に思っていてもいい、とも言えるでしょう。
私たちは、自分の心は相手に見抜かれているのではないかと、ときに不安に思ったりするものです。
こういう思い込みは、「透明性幻想」(イリュージョン・オブ・トランスペランシー)と呼ばれています。自分の心は、ガラス張りのように透明で、全部が相手に筒抜けだと思ってしまうのですね。
もちろん、そんなことはありません。
相手には、あなたの心など見抜かれていませんので、まったく心配はいりません。
「透明性幻想」が分かればスピーチで緊張しなくなる
米国マサチューセッツ州にあるウィリアムズ大学のケネス・サヴィツキーは、透明性幻想という現象があることを説明してあげると、人は不安にならずにすむことを確認しています。
サヴィツキーは、スピーチをするときに、「あなたがどんなに緊張していても、聴衆には絶対にバレません。緊張していることがわかるのは自分だけ。相手に見抜かれていると思ってしまうのは、“透明性幻想”という心理効果があるからなのですよ」と丁寧に教えてあげると、スピーチ不安がなくなることを実証しています。
私は大学の先生をしていて、自分ではものすごく講義をするのがヘタくそだと思っていました。10年以上もずっとそれを気にしていましたが、透明性幻想というものがあることを知って、心のつかえがおりました。
どれほどオドオドしていようが、学生には見抜かれるはずがないと考えられるようになったからです。
もしかすると、「私は、考えていることが顔に出やすいのではないか」と感じていて、気にしている人がいるかもしれません。
でも、そういう心配もいらないと思いますよ。
人の心を読むのは、ものすごく難しいので、そんなに簡単に見抜かれることもありません。
ウソをつくときだってそうですね。
「ウソをついていることがバレているんじゃないか」と感じる人もいるでしょうが、ウソを見抜くのはとても難しく、普通はそう簡単にバレることはありません。
心理学の研究でも、正しくウソを見抜ける確率はだいたい50%であることがわかっています(50%ということは、ウソをついているかどうかをデタラメに選んで、偶然に当たってしまうのと同じ確率です!)。
それくらいウソを見抜くのは難しいので、相手にバレるということは、めったにないんですね。
「ウソやホンネがバレてしなうのではないか」と心配する必要はない
仕事をするためには、どうしてもウソをつかなければならない状況が出てきます。営業やセールスをやっている人なら、お客さまに言いにくいことは、こっそり隠しておいたりすることもあるのではないでしょうか。
どんな仕事をしているにしろ、上司に報告しなかったり、ウソをついたりすることは、いくらでもあるはずです。
そんなときは、だれしも「相手にこちらのウソやホンネがバレてしまうのではないか」と気にしてしまうものですが、それもあまり心配せず、堂々としていましょう。
相手に下心を見透かされることはない
カナダにあるマニトバ大学のジャッキー・ファラウは、実験参加者をペアにして、疑似的な交渉をさせてみたことがあります。
ただし、交渉に先だって、参加者には5つの目標のうち、どれか1つが与えられました。その目標とは次の5つです。
①自分の考えを決して曲げないように
②相手を満足させるように
③双方が譲歩する回数が同じになるように
④ベストな解決策を探るように
⑤相手に好かれることだけを考えるように
交渉が終わったところで、「相手の目標はこの5つのどれだったと思いますか?」と推測してもらったのですが、26%しか当てることができませんでした。選択肢が5つなので、あてずっぽうで選んでも20%は正解することになりますから、26%というのは、あてずっぽうとそんなに変わりません。
この実験が面白いのはここからで、「あなた自身の目標がどれだったのか、相手にはどれくらいバレたと思いますか?」とたずねたら、何と60%が「たぶん、見え見えだった」と答えたのです。
つまり私たちは、自分がどんなことを狙っているのかは、相手にバレていると思い込んでいるわけですが、現実にはバレないことがこの実験からわかるのです。
たとえば「絶対に契約をとってやる!」と意気込んでいても、もうお客さまにバレることを心配する必要はありません。
なぜなら、そう考えていることはバレないからです。
あるいは女性を食事に誘うとき、「下心が見透かされてしまうのでは?」と不安に思って、誘うことを躊躇してしまう人がいるかもしれません。でも、それだって心配のしすぎだと言えるでしょう。
あまりよけいな心配をせず、気楽に誘ってみてください。わりとあっさりOKしてもらえるかもしれませんよ。
笑顔は「うまいヘタは関係ない」とにかく笑顔を見せる
人間関係においては、笑顔がとても重要です。
細かいことはどうでもいいので、とにかく笑っていれば、たいていの人間関係はうまくいくものです。
「そうは言っても、私、うまく笑えないんです」
「愛想笑いは、どうも苦手で……」
そう思う人がいるかもしれませんね。
ですが、はっきりと申し上げておきましょう。
笑顔というものは、「見せる」ことが重要なのであって、うまいとかヘタは関係ありません。どんなにヘタでも、「見せない」よりは、「見せる」ほうが、絶対に好印象を与えます。
作り笑いでも、愛想笑いでも、ぜんぜんかまわないのですよ。
無表情とか、不機嫌そうな顔に比べれば、作り笑いのほうが、はるかにマシ。ですから、たとえ「自分は笑顔を見せるのがヘタ」だという自覚があっても、あまり気にせず、どんどん作り笑いを見せるようにしましょう。
少しくらいギクシャクした笑顔でも、見せないよりは見せたほうがいいのだ、と割り切って頑張りましょう。
「無表情」より「作り笑顔」の方が10倍好かれる
イギリスにあるアバディーン大学のリンデン・マイルズは、男女3名ずつのモデル写真を用意しました。それぞれ、①自然な笑顔 ②作り笑い ③無表情の写真で、それを40名の大学生に見せて、どれくらい好意を抱くのかを調べてみました。
その結果は、やはりというか、もっとも好まれたのは①の自然な笑顔でしたが、作り笑顔のほうも、決して悪くありませんでした。無表情に比べると、作り笑顔のほうが10倍も好ましく評価されたのですから。
ということは、作り笑顔でもかまわず、どんどん笑うことが得策ということになります。
「そうは言っても、私は笑顔を見せるのが本当にヘタで……」と言う人もいるでしょう。
けれども、最初からとびきり魅力的な笑顔を見せられる人なんて、この世にいません。だれでも練習をくり返して、少しずつ上達していくものです。
どんなにヘタな笑顔でも、毎日、人に会うたびに練習していれば、そのうちうまくなっていきます。
人に声をかけられたり、目を合わせたりしたら、もう自動的に笑顔のスイッチが入るくらい、練習してみてください。
これを心がけるだけで、たいていの人間関係はうまくいくようになるはずですから。