転職の応募書類は何度も推敲できるが、面接は一発勝負になる。キャリアカウンセラー(キャリアコンサルタント)の中谷充宏さんは「本当は、面接までこぎつければ採用まであと一歩。しかし大半の人は、『仕事ができれば転職もできるはず』と勘違いして、準備ゼロで面接に臨んで失敗してしまう」という――。(第1回/全6回)

※本稿は、中谷充宏『30代後半~40代のための 転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

面接でうつむき、悲しそうにみえるビジネスマン
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30代~40代も転職は「当たり前」になった

「35歳転職限界説」がまかり通っていて非常に厳しかったミドル世代の転職ですが、最近になって強烈な追い風が吹いてきました。

40代の転職件数が、20代、30代を抑えて最も多くなり、しかも転職によって収入アップした人が多数派になっているという、かつてはあり得なかった驚愕の事実が報道されています。

雇用の多様化や終身雇用制度の崩壊、転職エージェントの普及により、転職は当たり前な時代になってきました。

また、前著『30代後半~40代のための 転職「書類」受かる書き方』(以降『受かる書き方』)でも触れましたが、自主的な転職だけでなく、リストラや廃業等で転職せざるを得ないケースも非常に増えています。「転職なんて他人事」と高をくくっていたミドルにも、転職せざるを得ない事態が起こり得るということなのです。

今の会社、今の仕事に満足していても、転職に向き合ってみるのは有意義です。超大手自動車メーカーや重電メーカーといった、日本が世界に誇るエクセレントカンパニーですら、終身雇用制度の維持の困難さを公表しています。

コロナ禍を予測できた人は、どれくらいいるでしょう? いつ不測の事態が起きるかわからないからこそ、今のうちから転職市場で戦える力を備えておくべきです。

知り合いの社長からの「ウチに来い」の一言で転職が決まる、というケースもありますが、それはやはり稀。追い風が吹いているといっても、ベテラン世代ならではの厳しい選考を勝ち抜かなければ、良い転職は実現できません。

選考を勝ち抜く上で、最も比重が大きいのが「面接」です。

「売り」がない人なんていない

「転職したいけど、自分には声高にアピールできるような売りがない」

という声をよく耳にします。

さらに、売りどころか、「転職回数が多すぎる」、「(働いていない)1年以上のブランクがある」、「持病を抱えている」といった「ネガティブ要素」があるので、転職なんて諦めているという人も多いのは事実です。

では、華麗な売りがない、あるいはネガティブ要素を抱えている人は転職できないかというと、決してそうではありません。

筆者は約20年間、1万人以上の就職・転職活動を支援してきました。特にミドル世代を中心に取り組んできた経験から、「転職できます」と断言しています。

この世代なら、誰もが転職市場でアピールできる「売り」を持っています。ただ単に、それに気づいていないだけです。

「あるがまま」で臨むと秒殺

いわゆる「ネガティブ要素」がある人もそうです。この世代ですから、すねに傷の一つや二つ、あって当然でしょう。完璧なキャリアの人なんてレア中のレアです。

ただ、面接時にそのネガティブ要素を突っ込まれると、どう対処していいかわからず、自己判断でいい加減なことを言って不採用になるのです。

「転職回数が多いようですが、どう考えていますか?」と聞かれたとしましょう。

「ポジティブに変換すべし!」といった誤った転職指南を信じ込んで、「転職回数が多い分だけ、人より多くの職場と仕事を経験しています。変化への適応能力は非常に高いし、仕事の覚えも早いです」

といった、的外れな回答をしてしまうわけです。

「就活生じゃあるまいし、長年第一線で酸いも甘いも経験してきてるんだから、いちいち対策なんてしていられないよ」という気持ちは痛いほどわかりますが、ここが運命の分かれ道です。

「豊富な経験があるんだから、変にマニュアルに頼らず、あるがまま、思いつくまま回答すれば良い」というものではありません。

面接官の本音や心理を把握した上で、自分に合った、あるべき正しい回答をすべきなのです。

仕事スキルと「転職スキル」は、まったく別物

仕事ができる人なら転職はスムーズに決まるかというと、実はそうではありません。

できる分だけ要求・要望も高いものの、そういった求人はなかなか出てきません。プライドの高さからくる傲慢な所作や受け答えが面接官の心象を悪くすることもあります。

筆者は約20年の支援経験の中で、スキルや実績は申し分なく、ターゲット選定も間違っていないミドルでも不採用が続くケースを、嫌というほど目の当たりにしてきました。これはひとえに「転職に必要なスキル」の習得をおこたっていたからに他なりません。

業務遂行能力に長けているという「仕事スキル」と、採用選考を勝ち抜ける「転職スキル」は、完全に別物と考えてください。

ターゲットを選定したら、興味のある求人に応募しますよね。その後は、書類選考があって、3回程度の面接があって、その間に適性検査があるというのが一般的な選考プロセスです。

この各プロセスを通過するために必要なのが、「転職スキル」です。

一つでも欠けると、採用が遠ざかってしまいます。

適性検査対策は、市販のSPI対策本をやっておけば大丈夫です。

一方、書類選考は『受かる書き方』で対策してください。

ビズリーチなど「転職エージェント」は、すっかり浸透した観があります。転職エージェントの登録や活用法も『受かる書き方』をご参照ください。

面接は『30代後半~40代のための 転職「面接」受かる答え方』で対策しておきましょう。

そして予算があれば、キャリアコンサルタントの力も借りましょう。転職スキルが格段に向上し、内定を勝ち取る可能性が一気に高まること必至です。

丸かバツの選択肢を提示している男性
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大多数が「準備ゼロ」で面接に臨む

「書類選考なしで面接に進める」というのを売りにした求人がありますが、その逆はありません。適性検査も、課さない会社は多くあります。最も重要なのは面接なのです。

応募書類は手間暇をかけ、さらに添削など専門家の支援を受けると、選考を通過できるレベルまで向上できます。しかし、面接は同席して代わりに話してもらうわけにはいかず、自身の力だけで何とかしなければなりません。つまり、面接対策が成功転職の鍵なのです。

だからこそ、面接対策に比重を置いて準備すべきなのですが、大半の人は準備ゼロで面接に臨んでいます。だから不採用が続くのです。

逆に言えば、しっかり対策をすれば、それだけで抜きん出ることが可能になるわけです。

本書には、ミドル世代の転職を支援してきた、筆者の約20年のノウハウを余すことなく詰め込んでいます。ぜひ、『受かる書き方』とセットでお読みになって、ミドル世代に必要不可欠な「転職スキル」を身につけて、チャンスをつかんでください。

面接まで来ればあと一歩

ミドル世代にとって、転職したくてもなかなか決まらないのは、よくあることです。

経験が問われる上、年齢という要素も加わるので、そもそも応募できる求人が乏しいのは仕方ないことです。

中谷充宏『30代後半~40代のための 転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)
中谷充宏『30代後半~40代のための 転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)

さらに、企業側は即戦力か否かをシビアに見定めるので、「なかなか転職が決まらない」というのは、ごく普通のことです。

ただ、面接まで進めたとなると話は別。採用される確率が非常に高いということです。

というのも、転職がうまくいかない最大の要因は、そもそもターゲット選定を間違えていて、全く合っていない所に応募すること。だから書類選考で弾かれまくるのです。

なので、そこを通過して面接までたどり着いているなら、あともう少しなのです。

言うまでもなく、リアルに双方向のコミュニケーションをとれる場が面接です。ミドルなら商談や会議、プレゼンを含め、類似したコミュニケーションの場を何度も経験しているはずです。

ただし、楽観視は禁物。本書を熟読して、想定される質問への回答案を書き出す等、準備を怠らないようにしましょう。もちろん、こうした面接対策を行った方が、内定獲得率が高くなるのはおわかりだと思います。

私の実感になりますが、面接対策を全く行わずに面接に臨むミドルは約8割。

となると、きちんと準備をすれば上位2割に入れるわけです。