「ビタミンB12」の欠乏により、動脈硬化や筋力低下の原因に
ビタミンは人が生きるうえで重要な栄養素だが、体内で合成することができない。ビタミンは13種類あり、なかでも「ビタミンB12」は血液成分の一つである赤血球の形成や成熟、および細胞の遺伝情報であるDNAの合成に必要な成分だ。また、神経の機能を正常に保つことにも関係している。
「ビタミンB12」が不足すると、疲労や便秘、食欲不振のほか貧血の症状が現れることも。さらに、手足のしびれや痛みといった神経系の不調を招くこともあるという。
また、「ビタミンB12」は胃で産生される因子と結合しなければ体内に吸収できないが、この因子は食物中のたんぱく質が胃酸によって分解されてはじめて産生されることから、「ビタミンB12」の吸収に、胃酸が重要な働きをすることがわかっている。
しかし、50代を過ぎると胃酸の分泌量が減少する人が多く、「ビタミンB12」の体内へ吸収率が低下して「ビタミンB12」不足になりやすい。すると、血中のアミノ酸の一種「ホモシステイン」が増加。血中のホモシステインが増えると、血管内皮障害や血小板の凝集を引き起こして動脈硬化を発症することが最近の研究で明らかになり、注目されている。※1※2
日本人の男女3万9232人(40~79歳)を対象に1988~1999年までの約10年間、行った調査によると、血中のホモシステイン濃度が上昇する中高齢者の「高ホモシステイン血症」が、動脈硬化による脳卒中や心血管疾患のリスクとなることが明らかになった。※3
また、アメリカや中国で行われた調査では、血中のホモシステイン値が高い人は、筋力の低下や骨粗しょう症による骨折、アルツハイマー病のリスクが高まることが判明している。※4※5※6※7
食事とサプリで、ビタミンB12をしっかり補給
以上のように、「ビタミンB12」が不足すると、さまざまな不調や病気の原因となるとわかってきた。そのため「ビタミンB12」の不足にならないよう、食品やサプリメントを摂取し、補うことが必要だ。実際に「ビタミンB12」を摂取することで、血中のホモシステインが減少することがわかっている。※8※9
体の不調や病気を防ぐためにも、30~40代の比較的早い年齢から、普段の食事で積極的に「ビタミンB12」をとるよう意識することが大切だ。「ビタミンB12」は、アサリやシジミといった貝類のほか、牛や鶏のレバーなどに多く含まれる(図表2)。
今回は、上記の食品の中から「アサリ」と「鶏レバー」を使ったレシピを紹介しよう。
〈あさりたっぷりクラムチャウダー〉
アサリの水煮缶は料理に活用しやすいのが魅力。汁ごと使うと「ビタミンB12」を残さず摂れるうえ、アサリのうま味もたっぷりと味わえる。
・アサリの水煮缶 50g
・タマネギ 1個
・ニンジン 2分の1本
・ジャガイモ 2個
・ベーコン 50g
・牛乳 600ml
・小麦粉 大さじ1
・コンソメ顆粒 小さじ2
・塩 少々
・バター 30g
【作り方】
① ニンジンとジャガイモをさいの目切りにし、耐熱容器に移して電子レンジで約7分加熱する。
② タマネギをみじん切りにし、ベーコンと一緒にバターで炒める。しんなりしたら小麦粉を加えてよく混ぜる。
③ 牛乳を温めて②に少しずつ加え、ヘラでなめらかになるように混ぜてクリーム状にする。
④ アサリの水煮を汁ごと入れ、①を加えて約10分煮る。塩で味をととのえたら完成。
〈鶏レバーのパテ〉
レバーのなかでも、鶏レバーは比較的臭みが少ない。好みでスパイスをプラスすると、ワインにも合う。
・鶏レバー 180g
・牛乳(下ごしらえ用)30ml
・牛乳(調理用)50ml
・クリームチーズ 40g
・タマネギ 2分の1個
・ニンニク ひと片
・バター 30g
・コンソメ顆粒 小さじ1
・オールスパイス(好みで) 少々
・塩 少々
・バゲット 2分の1本
【作り方】
① 鶏レバーの脂肪部分を取り除き、流水で洗って血抜きした後、牛乳に浸して冷蔵庫で約1時間置く。
② 牛乳を捨て、クッキングペーパーで水気をとる。
③ クリームチーズを常温でやわらかくしておく。
④ タマネギとニンニクをスライスし、バターで炒める。しんなりしたら、②とコンソメ顆粒、好みでオールスパイスを入れ、しっかり火を通す。
⑤ 牛乳を入れてひと煮立ちさせたら塩で味をととのえ、火をとめて粗熱をとる。
⑥ ⑤と③をフードプロセッサーに入れて攪拌し、ペースト状になったら完成。バゲットにのせていただく。
とはいえ、食事だけで「ビタミンB12」を摂取するのは難しいもの。手軽に栄養が摂れるサプリメントを活用するといいだろう。日々の生活に「ビタミンB12」の豊富な食品やサプリメントを摂る習慣を取り入れ、健やかな体をキープしよう。
(参考文献)
※1 厚生労働省「統合医療」に係る情報発信等推進事業
※2 廣川 誠,自己免疫性血液疾患:診断と治療の進歩 Ⅲ.診断と治療 3.悪性貧血,日本内科学会雑誌第103巻第7号
※3 RenzheCuiet al. Serum total homocysteine concentrations and risk of mortality from stroke and coronary heart disease in Japanese: The JACC study;AtherosclerosisVolume 198, Issue 2, June 2008, Pages 412-418
※4 YuefengZhu et al. Plasma homocysteine level is a risk factor for osteoporoticfractures in elderly patients , Clinical Interventions in Aging 2016:11 1117–1121
※5 Robert Ret al.Homocysteine as a Predictive Factor for Hip Fracture in Older Persons, N Engl J Med2004; 350:2042-2049
※6 Kuroda T,et al,Plasma level of homocysteine associated with severe vertebral fracture in postmenopausal women, Calcif Tissue Int 93, 269-75(2013)
※7 Sudha Seshadri et al, Plasma Homocysteine as a Risk Factor for Dementia and Alzheimer's Disease, February 14, 2002N Engl J Med 2002; 346:476-483
※8 Toole JFet al, Lowering homocysteine in patients with ischemic stroke to prevent recurrent stroke, myocardial infarction, and death: the Vitamin Intervention for Stroke Prevention (VISP) randomized controlled trial.JAMA. 2004 Feb 4;291(5):565-75.
※9 Kaare Harald Bønaaet al,Homocysteine Lowering and Cardiovascular Events after Acute Myocardial Infarction,N Engl J Med 2006; 354:1578-1588