普段はそれぞれ、仕事や家事、趣味で忙しい夫婦が、新型コロナウイルス感染拡大で、24時間顔を突き合わせることになりました。どこにも行けないゴールデンウィーク、別々の部屋に籠って画面を見ながら過ごすよりも、一緒に楽しめるボードゲームはいかがでしょうか。しばしコロナを忘れて没頭できる、大人向けのボードゲームを、国内最大級のボードゲーム専門店「すごろくや」社長の丸田康司さんにお勧めしてもらいました。
チェスのカップル
※写真はイメージです(写真=iStock.com/vladans)

やっぱり女性が選んで

普段から仲が良く、コミュニケーションをよく取っているご夫婦であれば、話し合いながら一緒にボードゲームを選んでそれを楽しむのは、コロナ禍中の休日の過ごし方としてぴったりだと思います。

そうでない場合は……、女性の方が、2人で楽しめそうなボードゲームを選んで「一緒にやろう」と誘うのがいいでしょうね。男性の中には、自分が歯ごたえを感じるもの、楽しめるものを優先して、パートナーが楽しめるかどうかは二の次にするタイプの人もいるので、それだとなかなか一緒に楽しめません。

デジタルガジェット好きな人は、ちょっとややこしめのゲームではないと物足りないと感じる傾向があると思います。あとは、普段の生活を見て、勝ち負けにこだわるタイプかどうかも、ゲームを選ぶときに大きなポイントになります。

双方の「最大公約数」を選ぶ

相手も自分も、勝ったり負けたりする勝負が好きなのであれば、対戦型ゲームを選ぶといいでしょうね。そうでない場合は、協力してゴールを目指す協力型ゲームや、同じ対戦型であっても、戦略だけでなく運の要素があり、短時間で勝負が決まるものを選ぶといいでしょう。運の要素があって、短時間で勝負が決まるものであれば、勝っても負けても、「次は勝つか負けるかわからない。ちょっともう一回やってみよう」ということになりますから。

つまりは、お互いの趣向を考えて、「最大公約数」になるようなゲームを選ぶのがコツです。そうでなければ、どんなゲームであっても、「つまらない」「ずるい!」などの不満が生まれ、こじれる原因になります。

前回家族向けに紹介したボードゲームの中にも、大人2人で楽しめるものはありますが、ここでは、夫婦で楽しむのにぴったりの2人専用のゲームや、子どもにはちょっと難しい大人向けのゲーム、さらに、ちょっと1人になりたい時に楽しめる、1人用のゲームも紹介します。

進化型の三目並べ

ゴブレットゴブラーズ
2人専用 所要時間の目安:5分
ゴブレットゴブラーズ

9つのマスに、2人で順番に○×を書いていき、3マス並んだら勝ち、という「○×ゲーム(三目並べ)」を進化させた、対戦型のゲームです。

一度置いたコマを動かせるうえ、コマは大中小と3つのサイズがあって、相手のコマに自分のコマをかぶせたり外したりもできるので、一筋縄ではいきません。将棋やオセロのように、理詰めで考えるゲームではありますが、「自分がかぶせたコマの下に、どちらのコマが隠れているか忘れて逆転される」というアクシデントも起きます。記憶力も問われますね。

5分くらいであっという間に決着がつくので、「今の勝負は何かの間違いだったから、もう1回やろう」ということになることが多いゲームです。

オバケのチェス型心理戦

ガイスター
2人専用 所要時間の目安:15分
ガイスター

ボードの上でオバケのコマを動かすチェス風の対戦型ゲームです。それぞれが、「良いオバケ」4匹と、「悪いオバケ」4匹のコマを持っているのですが、「良いオバケ」の青い印、「悪いオバケ」の赤い印は、背中にしかついていないので、相手からは、自分お化けのどれが「良いオバケ」でどれが「悪いオバケ」かわかりません。

勝敗が決まるパターンはいくつかあって、「相手の青いオバケ4匹をすべて取った場合」「自分の青いオバケを、相手陣地の“出口”から出した場合」「相手が、自分の悪いオバケ4匹をすべて取った場合」に自分の勝ちになります。

戦略は大事ですが、お互いどれがどのオバケかわからないので、はったりをかましたり、相手の裏をかいたりという心理戦が楽しい名作ゲームです。ケンカをしたり、イライラを募らせたりすることのないように楽しんでください。

集中力のいる四目並べ

クアルト
2人専用 所要時間の目安:15分
クアルト

三目並べならぬ四目並べですが、並べる要素がコマの色、形、高さ、へこみと、たくさんあるので、集中力が求められます。しかも、次に自分がどのコマを置くかは、相手が選びます。相手にコマを渡すときには、どのコマなら相手の四目が成立しないか、よく見ておかないといけません。

自分が選んだコマで相手が勝つと、本当にくやしい。自分のコマだけでなく、相手のコマのどこがリーチになりそうか、集中して見ておく必要があります。シンプルで美しい、おしゃれな見た目ですが、さまざまな可能性を見通す力が必要な、歯ごたえのあるゲームです。

勇者が怪物たちに挑む壮大なストーリー

アンドールの伝説
1~4人用 所要時間の目安:60分
アンドールの伝説

「剣と魔法の世界で、勇者たちが協力し、怪物たちから城と王国を奪還する」。男子が盛り上がりそうなストーリーですね。壮大な世界観は、新型コロナのニュースばかりの日常からの、いい気分転換になりそうです。

参加者は勇者となって、邪悪な怪物の進撃からアンドール王国を守るという5章立てのシナリオを、協力してクリアしていきます。ルールの量がかなり多いうえ、誰がどの敵を担当するか、どのルートを選ぶか、など、話し合って決めることがたくさんあります。1つのシナリオをクリアするのは簡単ではなく、おそらく2、3回は失敗するでしょうね。でも、お話の続きが気になって、つい毎日やってしまうと思います。

協力型ゲームでは、いわゆる「鍋奉行」みたいな人が生まれがちです。自分の番ではないのに、鍋奉行がほかの人の動きまで仕切ってしまう。相談するのはよいですが、どうするかはあくまでも本人が決めるべき。相手が子どもでも同じです。自分で考えて遊べないと、つまらないですから。

文系の大人向け推理ゲーム

ワトソン&ホームズ
2~7人用 所要時間の目安:60分
ワトソン&ホームズ

これは、13章もある推理モノで、殺人などの事件に1章ずつ挑戦していきます。事件の登場人物や現場、自宅などの手掛かりカードを、それぞれが1枚ずつこっそり読んでいき、全容を早く解き明かした人が勝ちです。

手掛かりカードに書かれたさまざまな要素を組み立てていき、わかったらそれを紙に文章で書いて、答え合わせをします。理詰めの戦略系ゲームとは違った、文系の大人向けゲームです。手掛かりカードには、かなりの量の文章が書かれているので、文章を読んだり理解したりするスピードに、あまり差がない人同士で遊ぶ方がいいかもしれません。

楽しいゲームなんですが、僕も全然先の章に進めていないです。ゲームが終わったあとで、「あれってどういうことだったの?」「実は○○のカードに、こんなヒントが書かれていたんだよね」などと、種明かしの振り返りをするのも楽しいですよ。

1人で楽しむボードゲームも

思うように外出できずストレスがたまり、ちょっとイライラしたときなどにも、ボードゲームはいい気分転換になります。四六時中家族と一緒にいて、「ちょっと1人になりたい」と思ったときにも楽しめるボードゲームをご紹介しましょう。

かわいい羊が増えていく

シェフィ
1人専用 所要時間の目安:15分
シェフィ

ボードゲームには、1人で遊べるものもたくさんあるんです。既に紹介した『アンドールの伝説』のように、「複数で遊べて、1人でも遊べる」というものもありますが、ちょっと寂しい気持ちになると思うので(笑)、1人専用ゲーム『シェフィ』を紹介します。

1匹の羊を、最終的に1000匹まで増やすことを目指すカードゲームです。羊カードの上限は7枚なので、「1匹」カードばかりだと7匹にしかなりません。「統率(複数を1枚分に統合)」などのカードを使って、「3匹」カードや「10匹」カードなどにランクアップさせて、7枚の合計が1000匹にしていきます。「狼(1枚ランクダウン)」「疫病(1種類をすべて戻す)」などのカードが出ると、羊が減ったり全滅したりすることも。

結構没頭できるゲームです。何度も失敗すると思いますが、「なんでダメだったんだろう? あそこがいけなかったのかな」と、毎回反省材料が得られ、繰り返し楽しめます。

大人もなかなか成功しないゲーム絵本

ドラゴンをさがしに
1人専用 所要時間の目安:15分
ドラゴンをさがしに

冒険者となって、村を旅立って冒険をしながらドラゴンを探す絵本です。「戦士」「魔法使い」「忍びネコ」の3種類からキャラクターを選んで読み進めると、例えば「何をしますか?」という問いに対して、「粉ひきおばさんを訪ねる」「荒れはてた小屋を探る」などの選択肢が与えられます。選んだ選択肢に応じて、3分割されたページのいずれかを選んでめくると、物語の展開が変わります。

こうして読み進め、最終的に、うまくドラゴンを連れ帰ることができれば成功です。ひらがなとカタカナばかりの絵本なので、「子どもっぽい」と思うかもしれませんが、大人でも成功するのは簡単ではなく、やりごたえがあります。「前はこうだったから、あそこでこうしたらいいんじゃないかな?」と、何度もいろんなパターンで読み進めたくなる本です。

ボードゲームでは、たとえ勝ち負けのある勝敗型のものであっても、参加する人全員が「楽しくゲームを成り立たせよう」と協力し合います。なかなか会社にも行けず、友達にも会えない中で、家族や夫婦で楽しむにはぴったりですし、救いになると思いますね。