散らかりっぱなしの部屋を前にして、「いざ片づけよう!」と思ってもなかなかやる気が起きない! その理由が自分の過去の記憶にあるとしたらどうでしょう? 自身も片づけられない人だったという大人気心理カウンセラーの大嶋信頼先生に片づけられない人の深層心理について教えてもらいます。

※本稿は大嶋信頼『片づけられない自分がいますぐ変わる本』(あさ出版)の一部を再編集したものです。

散らかった部屋でソファーに座っていた絶望的な女性
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Prostock-Studio)

完璧に片づけようとするから片づけられない

かつて「あなたは、何もしない完璧主義者ね」という言葉をある人から言われて「本当に自分はそうだな」と思ってしまったことがありました。

「汚い部屋をきれいにしたい!」

と思うのに実際に行動しないというのもまさにそれだと。

なぜなら、私は何でもやるのだったら完璧にやりたい人なので、「片づけるには、あれも、これもやらなきゃいけないよな」といった具合に頭の中で片づけの作業量がどんどんと増えていき、最終的に「そんなのいますぐやるのは無理!」という感じになってしまうからです。

たとえば、読んでいない本がたくさんあって「必要な本といらない本を選別する」ということを考えてしまうと、「本を開いて内容をちゃんと確かめないと無理」となります。

もし、後で必要になる本があったら? と考えてしまったら、チェックなしでは捨てられない。これは前回の記事で触れたように優先順位がつけられないからですが、結局完璧にできないならやらないとなります。

さらに、選別した本を捨てるのはもったいないから、古本屋さんに持って行かなきゃ、ということを考えるだけでもめんどうくさくなってしまって「今はできない」となります。

本が片づかなければ、部屋の掃除ができない。すると本の上にホコリが堆積し、自己免疫の暴走でハウスダストアレルギーになり、動かそうにも動かせない、となります。

だから、まずは本を仕分けして、いらない本を売って、ということをやらなければならない、と頭の中で計画しているだけで疲れてしまう……。

結果的にいつまでたっても考えているだけで部屋がちっとも片づかない。

これが私のいつものパターンです。

「完璧にできない」と頭で考え、疲れてしまい、いつまでも部屋は汚いままとなってしまうわけです。

私の場合はちょっと極端かもしれませんが、完璧主義者の方は思い当たることもあるのではないでしょうか?

完璧主義者への嫉妬が片づけの邪魔をする?

そんな私ですが、ある時、急に片づけができるようになるという不思議な体験をしたことがあります。

それは大学時代の話で、実家から離れて母親の意識が届かないところに住んだら、どんどん片づけられるようになったのです。

本とか、それまで捨てられなかったものもバンバン捨てることができるようになって、部屋は「ムダなものが一切ない」シンプルな空間になりました。

さらに自分が理想としていたような、絨毯の目がきれいにそろっていて、人が歩いた跡がわかる、というぐらいに、部屋をきれいにすることまでできてしまいました。

この経験は一時的なものでしたが、大人になって「なんで実家にいる時はできなかったんだろう?」と考えた時に、「脳のネットワーク」と「嫉妬」ということが自分の中でつながりました。

私の母親も「ものを捨てるのが苦手」だったので、私の家の中はいつもものであふれていました。そんな家の中で私が「母親よりも部屋を完璧にきれいにしよう」とすればするほど、その意志は母親に言葉で直接伝えなくても、無線LANのような脳のネットワークで伝わってしまいます。

すると母親は「私よりもきれいにするなんてずるい!」と嫉妬の発作を起こします。嫉妬の発作って脳内の電流が「ビビビッ!」と過剰に発電しているような状態ですから、それが脳のネットワークで私に伝わってきて「ビビビッ!」と母親の嫉妬の電流に感電してしまいます。

このようにして私は、脳のネットワークで嫉妬に感電した時に「めんどうくさい」という思考状態になり、「片づけができない」となっていたわけです。

これが、母親から離れてしまえば「脳のネットワーク圏外」になったような感じで「嫉妬の電流」が飛んでこなくなります。

だから「完璧に掃除をしよう」と思っても「めんどうくさい」という感じにならなくて自分の理想の部屋にすることができてしまったのです。

片づけは記憶を整理すること

もう一つ、片づけられない人の原因として心の「トラウマ」が関係していることもあります。もしあなたが散らかった部屋を前にして、

「いまの部屋が片づいてきれいになった状態を想像できない!」
「いくら想像をしようとしてもちっとも片づいてきれいになった部屋が出てこない!」

となったら、「もしかして記憶から抜けてしまっている心の傷(トラウマ)があるのかも?」ということを疑ってみるといいでしょう。

大嶋信頼『片づけられない自分がいますぐ変わる本』(あさ出版)
大嶋信頼『片づけられない自分がいますぐ変わる本』(あさ出版)

片づけには記憶を整理する、という意味があります。

どいうことかを簡単に説明すると、いつまでも取っておいてあるプレゼントの包装紙には「プレゼントをもらった時の喜びの記憶」が、またテーブルの上に歯医者の領収書がいつまでも放ってあるとしたら、それには「歯医者に行った時に、何度も麻酔を刺されて怖い! 痛い!」という記憶が宿っていて、それらを捨てたり、片づけたりするというのは、「いらない記憶を捨てて、必要な記憶をきちんと本棚や引き出しにしまっていく」みたいな意味合いがあるわけです。

ですから、もし「イメージでも片づけができない」というようならば、それは「記憶を整理したくない」⇒「トラウマと向き合うのが怖い」と心のどこかで感じている可能性があります。

一気に片づけてしまったら、心の準備ができていないのに、自分の心の傷に触れてしまうかもしれない、という恐怖がそこにある。だから「片づいた部屋がイメージができない」となってしまうのです。

でも、逆に考えてみると「コツコツと片づけをして記憶を整理していくと、自分の記憶から抜けていた片づけができない原因が見つかるかも!」ということにもなります。

ただ注意したいのは、心の底から「片づいた部屋をイメージするのが怖い」という場合は、無理をしないこと。そんな時は専門家と一緒に記憶の整理をすることをおすすめします。