※本稿は菅原洋平『「疲れない」が毎日続く! 休み方マネジメント』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。
仕事を「先延ばし」するだけで脳は疲れてしまう
仕事でやるべきことを「面倒くさい」と感じて先に延ばしてしまったら、その先延ばしによって、脳は疲労してしまいます。
1つの仕事を終えたら、次にやることに少しだけ手をつけて動作を区切ってみましょう。これだけで、先延ばしが起こらない脳をつくることができます。
脳には、行動の辞書のような働きがあります。補足運動野や、帯状回という部位で、各動作を辞書のように保存しています。
先延ばし行動が辞書に保存されていれば、課題を受けたときに無意識に先延ばししてしまいます。それを防ぐため、課題を受けたときにすぐに手がつけられる行動を意図的に保存するのです。
きりの良いところで区切ってはいけない
辞書機能をうまく使うには、行動をどこで区切るかがポイントです。
たとえば、「企画の打ち合わせ」という行動は、どこまでが区切りでしょうか?
打ち合わせが終わった時点が区切りだ、と思うかもしれません。しかし、ここで区切って保存すれば、脳は、打ち合わせ内容から資料をつくる作業に移るときには、新しく行動を組み立てて体に命令しなければなりません。これは脳に負担がかかるので、「面倒くさい」と感じて、先延ばしが発生します。
行動の区切りは、自分で勝手に決めることができます。「デスクに戻って企画書を1行書くまでが打ち合わせ」と保存し直すことができれば、脳は、打ち合わせの次に行う作業をあらかじめ下見することができます。すると、作業を再開するときには、すんなり体に命令することができるのです。
脳に「次の作業を少しだけ見せて準備させておく」つもりで、少し手をつけて区切ってみましょう。
脳を疲れさせないタスク管理のコツ
「片づけなきゃ」と思ったら、「デスクを片づける」とつぶやくのではなく「書類をファイリングする」とつぶやくことが大切です。
「○○する」と言葉を変えるのを実行してもらうと、最初は「ちゃんとする」「しっかりやる」という感じで、大きな概念をつぶやいてしまいがちです。
これも脳にとってはわかりにくいので、もう少し具体的にします。
「ちゃんとする」よりは、「片づける」と言えば少し具体的になります。しかし、片づくまでにはいくつも工程があるので、脳はまだまだどの動作を検索すればいいのかがわかりにくいです。実際、片づけるとは言っても、「どこから手をつければいいんだろう」と立ちすくんでしまうこともあると思います。
そこで、いまから確実に実行できることを具体的につぶやいてみましょう。「片づける」を「書類をファイリングにする」に変えるのです。
これは、さまざまな場面で応用できます。外出から帰ってきてバッグから書類を出したら、デスクに置く前に、「企画書をつくる」とつぶやきます。すると、いままではメールの返信から作業が始まって企画書が後回しになっていたのが、すんなりと企画書に取り組むことができます。
机の上にToDoリストを置かないほうがいい理由
やるべきことを忘れないように、その日にやることをリスト化する、という場合は、そのToDoリストは、デスクの上に置かないようにしてみましょう。
脳は、ToDoリストを見たときに、一つひとつの作業を記憶するのに容量を使います。
実は、脳が一度に覚えられる容量は「4つまで」ということが明らかになっています。
いま、何か作業をしていて、その途中でToDoリストを見たら、リストの5つ目を見たところから容量オーバーになってしまい、いま取り組んでいる作業に戻ったときに「どこからやるんだっけ?」と、作業再開に時間がかかってしまいます。
認知コストもかかりますし、再開するたびに時間をロスしてしまいます。
これを防ぐために、ToDoリストを書いたら、それをデスクやバッグにしまって、作業中は、直接目に入らないようにしましょう。
1つのタスクを終えたら、リストを取り出して1つ消して、次のタスクを確認したら、リストは見えないところにしまう。こうすれば、4つしかない脳の容量を目の前のやるべきことに費やすことができます。
今すぐやめた方がいい「PCに付箋でタスク管理」
もし、PCのディスプレイの周りにやることを書いた付箋を貼っていたら、それも脳が疲労する原因になります。
作業中に付箋に書いてあるタスクを目にしたとき、脳は、その行動を抑制しなければなりません。これに認知コストがかかるので、付箋がたくさん貼ってあるPCで作業をするだけで、脳は、疲労してしまうのです。
私たちは、忘れてはいけない用事を「忘れないように」と思って見えるところに書いておこうと考えますが、脳の立場では、いまやるべきことがわかりにくくなってしまいます。
脳が混乱せずに1つのことに集中できるように、やるべきことを付箋に書いたら、手帳に貼って手帳を閉じるなどして、見えない工夫をしてみましょう。