いつの間にか夜はコオロギの大合唱。いよいよ秋も本番です。気温差が激しくなるとくずしやすくなる、心身のバランス。この時期に大切なカラダとココロの養生法を知りましょう。
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朝晩の気温差で草の葉先に露がキラリ。いよいよ秋本番

白露は9月8日~9月22日の時期で、日中の暑さは残りますが、朝夕には涼しい風が吹くようになります。そのため、朝晩の温度差で大気が冷え、草の葉先に露が結ばれる様から「白露はくろ」と呼ばれるようになりました。よってこの時期は寒暖の差が激しく、体調を壊しやすい時期でもあります。

なお、9月9日は五節句のひとつである「重陽ちょうよう節句せっく」で、栗ご飯などを食べて収穫を祝い、ようやく秋本番を迎えます。

白露とは、大気が冷え、露を結ぶ様子から名付けられたように、ようやく残暑が引いてきて本格的な秋がはじまります。秋を告げる赤トンボがあちこちで空を彩り、いたるところで秋の気配を感じるようになります。

季節のはじまりの初候は、秋の七草である萩、クズ藤袴フジバカマ、キキョウ、ナデシコ、オミナエシ、ススキが野山に咲き乱れ、海ではシマアジが旬を迎えます。季節が進む次候では、ナシやアワビが旬を迎え、セキレイの鳴き声やオシロイバナが咲きはじめて秋の深まりを感じるでしょう。

終わりである末候には、昆布や秋ナスが旬を迎えるとともに、雄鶏のトサカのような赤い花を咲かす鶏頭ケイトウが道端に咲くのを見ると、いよいよ秋本番のサインです。

ココロの状態が不安定になると、アレルギーが起こりやすい

白露はココロの状態が不安定になりやすい時期であり、ココロの状態は免疫機能に影響を及ぼしやすいと言われています。免疫機能と大きく関係する病気は、感染症と皮膚の疾患。特にこの時期は、朝晩の温度差も大きいことから、風邪も引きやすいでしょう。また、自己免疫機能が落ちているため、花粉症やアレルギー性鼻炎、さらにはアトピーなどのアレルギーが起こりやすいとされています。東洋医学では心身一如しんしんいちじょと呼ばれるようにココロとカラダは一体化しています。そのため、まずはカラダの調子を整えることが大切です。

なお、免疫機能を高めるには運動が効果的。季節のいいこの時期には、散歩などを積極的に行うと同時に、体幹部の筋肉を鍛えることをお勧めします。

白露は、夏のにぎやかさから秋のもの悲しさに変化する時期であるため、気持ちも少し物悲しく、センチメンタルになりがちです。あまり思いつめると、気持ちだけでなくカラダにまで影響が表れるので、悲しい出来事ではなく、楽しい出来事を思い出し、充実感を味わうようにしましょう。

特にネガティブな感情や後悔は、前頭前野という部分の活性を悪くします。前頭前野はやる気、意欲、計画性、機転などのポジティブな感情の中心的な役割であることから、ネガティブな感情は前頭前野の働きを抑制し、情動・記憶・運動能力などに影響を及ぼしたり、自律神経系の調整を悪くしたりします。そのため、カラダの管理だけでなく、ココロの管理もしっかり行いましょう。

インターバル歩行で、肺活量と免疫機能をアップしよう

「カラダとココロの養生法」

この時期は免疫機能を高めるための運動が必要です。運動の中でも歩行にはさまざまな予防効果があることが知られています。特に、うつ病の予防には1日あたり4000歩、そのうち5分間の早歩きを、ガンの予防には7000歩、そのうち15分間の早歩きを、糖尿病の予防には1日8000歩、そのうち20分間の早歩きが必要とされています。

また、風邪の予防には単に散歩を行うのではなく、3分間のゆっくり歩行のあと3分間の早歩き歩行という、インターバル歩行を3セットで合計18分行うことがお勧めです。インターバル歩行は筋力だけでなく、肺活量を鍛える効果もあります。秋から冬にかけて風邪や気管支炎などの呼吸器症状が多く現れやすいため、秋は筋肉だけでなく、肺活量も鍛えるようにしましょう。肺活量は筋力と同様、体力のバロメーターの1つ、季節のいいこの時期にぜひインターバル歩行をはじめてみましょう。

なお、インターバル歩行は、単に歩くのではなく、大股歩きで正しい姿勢で行うことが効果的。姿勢にも注意しながら行いましょう。

「食養生」

この季節は栄養を補充する山芋などがお勧めです。特に山芋は山薬やまぐすりと呼ばれるほどさまざまな効果が知られており、滋養強壮など加齢によるカラダの衰えを補ってくれます。また、呼吸器症状や不眠症、お肌の収れん作用なども知られています。

一方、唐辛子は気分を発散してくれる作用があるので、気持ちが落ち込みやすい人には向いていますが、全身の血流が良くなるため、発汗しやすく、炎症などを起こしている人にはあまり向いていません。また、過度の摂取は粘膜などを傷つけ、老化を早めてしまう可能性があるので注意が必要です。

イラスト=かえるWORKS(イラストAC)
「お勧めのツボ」

白露を乗りきるためのお勧めのツボは中府ちゅうふです(図表1)。中府は鎖骨と肩の骨の間にあるクボミから指幅1本分下にあります。このツボは、咳や痰などの風邪症状や肩こりなどの症状に効果があります。

中府を押してみて痛い場合には、風邪を引いているか、風邪を引く前兆と考えられます。イタ気持ちいい程度に10秒程圧迫し、5秒空けて5回程度刺激するようにしましょう。また、風邪が治りにくいときには、中府を定期的にマッサージしたり、米粒など小さな粒を絆創膏などで貼っておくとさらに効果的です。

イラスト=acworks

瞑想、呼吸トレーニングで肺を強化し、風邪を予防

「タイプ別・風邪症状の原因」

この時期は気温差が大きくなり、風邪などを引きやすくなります。風邪を引くと肺の機能が落ち、運動量が減少するため、さらに免疫機能が低下しやすい状態をつくります。

一生懸命頑張りすぎている頑張り屋さんタイプの人は、交感神経が亢進こうしんしているために、緊張状態にあり、呼吸が浅い状態です。呼吸に関わる筋肉の1つである斜角筋しゃかくきんのストレッチをしましょう。また、生活リズムの乱れによっておこる生活習慣タイプの人は、ココロの状態を安定させるよう、瞑想する時間を取ることをお勧めします。瞑想は前頭前野の働きを活性化し、脳の機能を高めてくれることで、気分を変えてくれます。

年齢による加齢タイプの人は、カラダの根本である肺の機能が低下してるため、呼吸法を利用して肺を鍛えることが大切です。

なお、自分のタイプに関しては、カラダの状態を入れるだけで簡単にわかる無料アプリYOMOGIを利用すると便利です。月に1回(毎月10日まで)入力すると、あなたに合ったその月の養生法が送られてきます。

「タイプ別:風邪症状の対処法」

頑張り屋さんタイプの人は、呼吸に関係する筋肉のストレッチを行いましょう。斜角筋のストレッチは手を反対側の頭の真横におき、ゆっくりと首を横に倒した後、天井を見上げるようにアゴを上げることで、伸ばされます。その際、体幹は真っ直ぐにし、肩が上がらないように注意しましょう(図表2)。

斜角筋ストレッチ①片方の手を反対側の側頭部に置く。②腕の方向に頭をゆっくり倒し、天井を見上げるようにアゴを上げる。(左右交互に5回行う)

また、生活習慣タイプの人は、1日1回瞑想を行いましょう。簡単な瞑想法は、目を閉じ、酸素がカラダを巡っているとイメージしながら4秒間深く息を吸い込みます。そして、8秒間かけて息を吐き出します。吐き出すときには、あなたが抱えているストレスがカラダから逃げていくのをイメージします。この呼吸を5回繰り返しましょう。

最後に加齢タイプの人は肺を鍛えるのがお勧め。空のペットボトル(500mL)を用意し、息を吐ききった後に隙間が空かないようにペットボトルの口をくわえます。その後、ペットボトル内の息を吸い込み、ペットボトルを凹ませ、次に息を吐くことで凹みを元に戻すトレーニングを10回程行いましょう(図表3)。

ペットボトルトレーニング①息を吐ききる。②空のペットボトルをくわえる。③息を吸い込み、ペットボトルを凹ませる。④そのままペットボトルの凹みを戻すように息を吐く。10回程度繰り返す。

白露は、秋のはじまりを感じる季節です。朝晩の寒暖差も大きくなり、体調管理が難しくなります。特にこの時期は自律神経の調節がうまくいかなくなり、免疫力が弱まるため、風邪やアレルギー症状が出やすくなります。

そのため、季節がよいこの時期には運動を行うことで筋肉や肺を鍛え、免疫力を上げるように努力しましょう。

「白露の特徴」

● 心身の症状
カラダ:風邪、アレルギー症状(花粉症・アトピー性皮膚炎など)
ココロ:センチメンタルになる

● 季節に多い症状
風邪、アレルギー

● 心身の養生法
筋力や肺を鍛える運動を行う

●食養生に効く食材
山芋、唐辛子

● ツボ
中府ちゅうふ