まだまだ暑い日が続くとはいえ、暦ではもう秋。体温調整が難しい立秋の時期にくずしやすいココロとカラダの養生法を知りましょう。
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季節はもう秋。秋のサインはそこかしこに

立秋は8月8日~8月22日の時期で、秋の季節のはじまりですが、まだ暑さが続きます。実際、太陽の黄経は135度にあり、この頃から本格的な酷暑の時期といわれています。しかし、8月の暑さに時折、涼風が吹き、秋のはじまりを教えてくれます。虫の鳴き声や草木の種類も少しずつ変わりはじめ、秋のはじまりのサインを探すことができるでしょう。なお、立秋以降は夏の名残の残暑と呼びます。

立秋は、名前のごとく、秋を感じはじめる時期です。

季節のはじまりの初候、道端には紫色のツユ草が咲き乱れ、桃やシジミが旬を迎え、時どき吹くそよ風や朝晩の涼しさに秋を感じるかもしれません。そして、季節が進む次候では、朝夕に響くひぐらしの声で夏の終わりを感じ、赤く熟したホウズキの実を目にするようになります。

終わりである末候は、真ダコや新ショウガが旬を迎えるとともに、濃い霧が立ちこめる林を歩いていると、木の葉雨が落ちる樹雨(きさめ)を感じたり、子孫を残すために交尾をするオンブバッタを見かけたりと、本格的な秋のはじまりを感じるようになります。

自律神経機能低下による、夏バテにご用心

立秋は、温度調節が難しい時期です。日中はとても暑いにもかかわらず、朝晩は涼しくなるため、温度差が大きく、カラダが熱くなったり冷えたりと、体温調節を盛んにしなければなりません。そのため、自律神経機能が低下し、夏なのに冷えを感じたり、冷房が寒く感じたり、内臓機能が落ちることで消化機能が低下して食欲がなくなったり、食中毒を起こしやすくなることも。その結果、夏バテや風邪を引きやすくなるので注意が必要です。

なお、この時期は自律神経の乱れと体力の低下が際立ちます。自分の体調を知る意味で、目をつぶった状態で片足立ちを行い、何秒できるかを測定してみましょう。年齢にもよりますが最低30秒が目標です。15秒以下の場合は、カラダのメンテナンスが必要です。

立秋は、秋のはじまり。気温の変化により、自律神経の調節がうまくいかなくなり、消化吸収がうまく行えないため、ココロのバランスを整えてくれる「セロトニン」のような物質も少なくなり、気分が落ち込み、やる気が出ないという状態に陥りがちです。ココロの状態を変えることは難しいため、カラダの調子を整えることで、ココロを落ち着かせるようにしましょう。

軽い運動で汗をかくと、シミの改善にもつながる

「カラダとココロの養生法」

この時期は運動をして、汗をしっかりとかくことが大切です。特に、朝晩の涼しい時間に1日30分程度の散歩を行い、体力強化を図りましょう。単に歩くだけでなく、15分以上の継続的な歩行で軽く息が弾むくらいの強度で行うようにしましょう。息が弾む程度の運動強度は、有酸素運動のレベルであり、脂肪の燃焼を促進してくれます。

また、食事を工夫することで内臓の元気を取り戻すことができます。この時期は暑さのために、そうめんなどのさっぱりとした麺類や果物、スポーツ飲料などの糖分の高い物を多く取りがちです。これらは満腹感がありますが、消化が悪いうえに内臓を冷やすので内臓機能低下の原因となります。カボチャやニンジン、サツマイモなどの根菜類を加えて、内臓を温めることが大切です。また、カラダが冷えている場合には桃、熱い場合には梨など、季節の果物を加えるのもよいでしょう。桃は甘く酸味があり、温性の食べ物なのでココロもカラダも元気になる一方、梨は甘く寒性の食べ物で、清熱解毒作用と消炎作用があります。なお、汗をかくと肌の生まれ変わりが早くなるため、この時期はシミの改善に効果的です。肉のホルモンや貝類に含まれるコラーゲンや青菜のビタミンCなど、肌の栄養を考えた食事も大切です。

「食養生」

この季節は栄養価の高い食物を食べることが大切です。季節的に旬を迎えるシジミがいいでしょう。シジミは栄養価が高く、肝臓の機能を高めてくれ、疲労回復に優れています。また、利尿作用があり、体内の毒素を排出し、むくみなどを解消してくれる作用も。

ただし、貝類には時折毒素が多く含まれているため、産地や鮮度には十分気を付けて食品を選びましょう。

イラスト=acworks(イラストAC)
「お勧めのツボ」

立秋を乗りきるためのおすすめのツボとして「中かん」があります。中かんはおヘソとみぞおちの中間に位置し、内臓機能を高めてくれる場所です。おへそから指4本上の場所が目印です。内臓機能が低下していると、この部分が冷えているので、温かい手を当てるととても気持ちよく感じます。

もし中かん付近に手のひらを当て、手のひらが温かく感じる場合は内臓機能は低下しているかもしれません。食欲がなかったり、胃の調子が悪い場合は、中かんを気持ちがよい程度に押したり、お灸やカイロを利用するなどして温めるようにしましょう。

イラスト=acworks(イラストAC)

夏バテ防止には、栄養を摂り、ストレッチで体幹を鍛えよう

「タイプ別・夏バテの原因」

この時期は疲れが心身に影響を及ぼし、夏バテする人が目立つ時期です。

特に、一生懸命頑張りすぎている頑張り屋さんタイプの人は、暑さにより常に交感神経が亢進(こうしん)しており、自律神経の調節がうまく行えていません。そのため、カラダにブレーキをかけるストレッチが大切です。生活リズムが乱れることによっておこる生活習慣タイプの人は、栄養のバランスがくずれ、栄養が吸収されていない状態です。栄養価が高い食べ物を多く取るようにしましょう。

年齢による加齢タイプの人は、夏の疲れにより体力が落ち気味です。体幹トレーニングなどで体の中心部の筋力をつけることが大切です。

なお、自分のタイプに関しては、カラダの状態を入れるだけで簡単にわかる無料アプリYOMOGIを利用すると便利です。月に1回(毎月10日まで)入力すると、あなたに合ったその月の養生法が送られてきます。

「タイプ別:夏バテの対処法」

頑張り屋さんタイプの人は、体幹部のストレッチが大切です。椅子に座ったまま、カラダを丸めるようにすることで背中を伸ばしたり、首を前に倒すことで後頭部を伸ばしたりなど、簡単なストレッチをしてみましょう。また、耳はリラックスに関係が深い副交感神経を刺激できることから、耳をいろいろな方向に引っ張ることでカラダがリラックスすることも知られています(図表1)。時間がないときは耳のストレッチだけを行ってもいいでしょう。

耳を斜め上の方向へ広げるように引っ張り、しばらくそのままに。真横、斜め下と各同様に行う。

生活習慣タイプの人は、栄養価の高い食べ物が摂ることが大切です。この時期に旬を迎えるシジミをはじめ、オクラや山芋、ナメコなど、ねばねばしているものを食べるのも効果的。ねばねばした成分には、食物の消化吸収を助ける役割があるだけでなく、胃壁を保護したり、肝機能を高めたりする役割があります。

加齢タイプの人は体幹を鍛えることをお勧めします。隙間時間に腕と両足の4点だけで支えるプランクや、ヒジから下と腕だけで支えるサイドブリッジ、両肩とかかとの4点で支えるバックブリッジなどを1日10〜20回程度行うことで体幹部の筋肉を鍛えるようにしましょう(図表2、3、4)。

ブランク
サイドブリッジ
バックブリッジ

立秋は、秋のはじまりです。季節は夏のように感じても、ツユ草や樹雨など秋の気配が確実に迫っています。同じように、カラダも夏から秋に向かう準備を進めていきます。しかし、夏バテなどカラダに疲れがたまると、秋の準備が十分できずに、カラダだけでなくココロの調子までくずす原因となります。

そうならないためにも、この時期は栄養価の高い食事を心がけ、体力をつけると同時に、朝晩の過ごしやすい時間には散歩などの軽い運動を行いましょう。体力をつけることでココロを変化させ、これから来る秋や冬への準備も少しずつ行うようにしましょう。

「立秋の特徴」

●心身の症状
カラダ:自律神経機能の低下、冷え、内臓不調、疲れ
ココロ:気分が落ち込む、やる気が出ない

●季節に多い症状
夏バテ

●心身の養生法
ストレッチ、散歩

●食養生に効く食材
シジミなど、栄養価の高い食べ物

●ツボ
中かん