いよいよ春本番の「春分」。空気も暖かさを増し、陽ざしも強くなってきます。周囲の明るさとは裏腹に、気分が落ち込む人も多くなるそう。「春分」のココロとカラダの養生法をチェックしましょう。

周囲の活動についていけずに、ツラい、動けない……

3月21日~4月4日は春分(しゅんぶん)です。暖かい日も増え、春らしさを感じる機会が増えるとともに、昼と夜の長さが一緒になることから、活動量も増加していきます。

この時期は、サクラなどが咲きはじめるとともに、農作業をはじめる時期。街の景色も華やいできます。活動的な時期であるだけに、気分がすぐれない人にはつらい時期になります。特に感情はココロの状態を強く反映していますから、ココロを整え、穏やかな気分で過ごすことが大切です。

春分は、本格的な春のはじまりを告げる季節。春分のはじまりの初候には、野山にフキやタンポポが咲き乱れ、空ではヒバリがさえずる、のどかで暖かい日々が続きます。

次候には、ソメイヨシノやコブシの花が咲き乱れ、アスパラガスの収穫時期に。また、サクラエビが旬を迎えます。

終わりである末候にはモクレンの花が咲き、ウドや真鯛が旬を迎えます。また、春雷と呼ばれる、春独特の雷が鳴り、季節は徐々に春から夏へと移り変わりはじめます。

足がつって目が覚めるのは、エネルギー不足

春分は、活動量が増えたぶんだけ、カラダにさまざまな反応が現れます。朝起きたときに、口の中が苦く感じたり、ノドが腫れたり、イガイガするようなこともあります。また、脇腹が張ったり、痛みを感じたりすることも。さらにひどい場合には、筋肉がつったり、けいれんしたりすることもあります。このような症状は、エネルギーがうまく循環せずに、あちこちに停滞している証拠。エネルギーを循環させるためには、気分を整え、運動することが大切です。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

また春分は、いろいろなものが動き出すだけに、自分の思いどおりにいかないこともたくさん出てきます。そのため、自分や他人に対して怒りの感情が強く現れやすくなります。「怒り」には強いエネルギーがあることから、怒りが強ければ強いほど、たくさんのエネルギーを消耗してしまうことに。そうならないためにも、むやみに怒ることはやめましょう。

逆に、「怒り」の感情がなく、「あきらめ」に近い場合、または「感情が湧いてこない」場合は、カラダの状態が悪いことを表しています。このような場合は、ココロのマネジメントが必要です。

心身が不安定になったら、シイタケとレモン

「カラダとココロの養生」

この季節で大切なことは、カラダとココロを安定させること。特に、感情が湧き出て、ココロが不安定になるときは、カラダの疲れを取り除く作用のあるレモンやイチゴなど酸っぱいものを多く摂取するようにしましょう。また、緑黄色野菜、特に青物は消化を助け、解毒をする作用があるので、肝臓が弱っている人には効果的です。ただし、普段からアルコールなどの摂取は控えめにして、肝臓を労ることが大切です。

なお、カラダを休めても考え事ばかりしていては、本当の意味での休息にはなりません。考えを整理し、頭の中を空っぽにするメンタルトレーニングも必要でしょう。

「食養生」

この季節に効果的な食材は「シソ」です。「シソ」は辛味があり温性の食材のため、風邪の治癒や、発汗、解毒などの作用があります。さらには、抗アレルギー作用があることから、花粉症などの予防にも効果的です。

また、「シイタケ」も春にオススメの食材です。シイタケにはビタミンDが含まれており、神経や筋肉の機能を改善してくれます。特にこむら返りなどの身体症状、イライラによる血圧亢進には効果的です。

「お勧めのツボ」

この季節にお勧めのツボは、「百会(ひゃくえ)」です。百会は、頭のてっぺんにあり、両耳の先端を結ぶ線と、鼻から後頭部へ結ぶラインの交わるところに位置しています。頭のてっぺんは、ストレスなどで気が高ぶると、ツボの周囲が柔らかくなり、浮腫のようにベコベコしてきます。

春分の時期に多い「怒り」の症状の対処法を知ろう

「タイプ別・怒りの原因」

この時期は特に怒りの感情が出やすい時期です。怒りは感情の1つなので、コントロールすることは難しいと思われるかもしれませんが、実は、ココロやカラダの状態と大きく関係しています。感情と上手に付き合えるように、ココロやカラダを整えることが大切です。

まずは、一生懸命頑張りすぎで、自分にブレーキを掛けられない、頑張り屋さんタイプ。このタイプの人は、カラダが硬く、柔軟性が欠けているのが特徴で、むくんだり、こむら返りを起こしたりすることが多いです。

生活リズムが乱れることが原因となる生活習慣タイプの人は、いろいろなことをあれこれと考え、思い悩むことが多く、怒ったり、泣いたりと感情的になりやすいのが特徴です。

最後に、年齢による加齢タイプ。このタイプの人は、今までできたことができなくなることで、イライラしてしまいがち。それにより、体力が落ち、自信をなくしてしまいます。

「タイプ別・怒りの対処法」

頑張り屋さんタイプは、カラダが硬く、冷えていることが多いため、全身を温めることが大切です。特にお風呂は温度により作用が異なるので、注意が必要です。

38~40℃のぬるめのお湯は副交感神経を亢進させ、筋肉を緩めて全身をリラックスさせる一方、41~44℃の熱めのお湯は、交感神経を刺激し、全身をリフレッシュさせる作用があるので、頑張り屋さんタイプの人は、ぬるめのお湯が効果的です。

ぬる湯(38~40℃くらい)=リラックス カラダの緊張をとり、ストレスを解消(副交感神経優位) あつ湯(41~44℃くらい)=リフレッシュ 筋肉の疲れをとり、カラダが目覚める(交感神経優位)

生活習慣タイプは、気にしやすい性格であるため、感情をコントロールすることが大切です。特に無意識に表れる感情(自動思考)をコントロールするためには、怒りや不安などの感情を葉っぱに乗せ、それを川に流すようなイメージトレーニングが大切。何度も何度も感情が湧き出てくる場合にはその都度、その感情を葉っぱに乗せて流していきます。

最後に加齢タイプは、なによりも体力をつけることが大切。一番簡単な方法は歩行ですが、より効果を高めるには、5分ゆっくり歩いたら5分早く歩く、といったインターバル歩行が有効です。ペースを変えるということは、筋肉や心肺機能を高めるだけでなく、気分も変える効果があります。

春分はいよいよ春本番であり、気分だけなく、周りの景色までも大きく変化する時期。だからこそ、気分や体力が季節についていけないと、自分だけが変化できていないという焦りが生まれてしまいます。そのため、疲れがたまり、最終的には感情にも影響が表れてしまうのです。だからこそ、この時期はココロとカラダを整えることが何よりも大切なのです。

なお、東洋医学では、「心身一如」という言葉どおり、カラダとココロは一体化していると考えます。そのため、カラダを整えるにはココロを、ココロを調和するにはカラダをコントロールすることがとても大切なのです。

「春分」の特徴

●心身の症状
カラダ:口が苦い、ノドの腫れやイガイガ、脇の張り、こむら返り
ココロ:感情障害(怒り、無力感)

●季節に多い症状
怒り

●心身の養生法
入浴(熱め・ぬるめ)
メンタルトレーニング

●食養生に効く食材
シソ・シイタケ

●ツボ
百会(ひゃくえ)