CASE1:定着のカギは取得自由にしたこと
制度:「金曜どうしよう?」
どんな制度?:毎月第3金曜日が午後休
効果は?:社員の生産性と創造性が上がった!
政府の懸命な旗振りで働き方改革が進んでいる。残業時間の上限規制は実現したが、一方で進めなければならないのが、休暇取得の推進だろう。エクスペディアの調査によると、日本人の有休取得率は諸外国に比べて低く(図表上)、取得の際に罪悪感を抱いている(図表下)。
貧乏性の国民性といえるが、前向きにとらえればこうも考えられる。一度休みを取ってそれを楽しみさえすれば、日本人も長時間労働の不毛さに目覚めるかもしれない、と……。
東京・渋谷にあるIT企業、ユナイテッドには、毎月第3金曜日は正午以後の半休が可能という制度がある。名称は「金曜どうしよう?」、略して「金どう」。スタートは2015年5月で、「プレミアムフライデー」開始より2年近くも前だ。コーポレートカルチャー本部マネージャーの柏山奈央さんが話す。
「以前は毎月第3水曜日がノー残業デーだったのですが、もう一段インパクトのある制度を、ということで導入しました」
映画や買い物、美容院、あるいは子どもの予防接種やパスポートの更新など、使い方はさまざまだ。直接旅行に出かけるため、スーツケース持参で出社する社員もいる。
「“金どう”が浸透したカギは、半休を強制していないこと。仕事をしたいという社員も一定数はおり、2割くらいの人がそのままオフィスで仕事を続けています。それに営業部門の場合、一斉退社はお客さまに迷惑をかけるので、2週に分けて交代で休んでいます」
導入後も売り上げは毎年伸びる一方で、社員一人あたりの残業時間は減っているという。仕事につきものの無駄がキュッと締まって、確かに生産性が向上したのだろう。
CASE2:強制休暇で生まれたもう一つの効果
制度:「山ごもり休暇」
どんな制度?:全社員が1年に連続9日間、交代で休暇を取る
効果は?:業務の見える化、共有、効率化
大阪市に本社があるIT企業、ロックオンにも変わった制度がある。有休2日に特別休暇3日、前後の土日を足した9日連続の“山ごもり休暇”だ。電話やメール連絡含め、仕事の持ち出しは厳禁で、職場との隔絶が要求される。人事部長の桐生明子さんが話す。
「副社長の提案で、2011年10月からスタートしました。目的は2つ。一つは心身のリフレッシュ、もう一つは仕事の属人化の排除です」
前者は明快だが、後者はどういうことか。「仕事が特定の個人に集中すると、その人が病気で倒れたり、退社したりした場合、業務が滞ってしまいます。そうしたリスクを避けるための『仕事の見える化』を進める仕組みでもあるんです。休暇前には詳細なマニュアルを作成し、引き継ぎを行っています」
休暇の使い道として多いのは海外旅行。「タンザニアの奥地にホームステイしました。身ぶり手ぶりでのコミュニケーションでしたが、言葉が通じなくてもどうにかなる、逆に私たちは言葉に頼りすぎではという気づきを得ました」(桐生さん)
百聞は一見にしかず。百見は一体験にしかず。そこから生まれる何かがある。社員を休ませるのは働かせることと同じくらい大切なこと。経営者は早く気づくべきだ。