研修もなく上司からも教えてもらえない、取引先とのメールや手紙の書き方。“一目置かれる”にはどんな書き方をすればいいのか? 「告白」「復縁」「お礼」「謝罪」「遺言書」など、あらゆる分野の相談を受ける代筆屋、中島泰成さんに教わります。
●挑戦者:杉本絵吏さん
保険代理店勤務。ネットにも本にも自分の状況に合った例文がない。「毎日のように、おわび文を書いています。一筆箋は相手によって使い分けできるよう、複数キープ。」

▼指令1
自分のサポート不足で契約書類に不備が出た際、書類と一緒に送る一筆箋を書いてください。

(※1)挨拶のあとに自分の名前を入れる
一筆箋でも手紙でも、誰からの便りかわかると安心し、読む態勢が整います。対面で挨拶するとき、名前を名乗りますよね。それと同じです。

(※2)謝罪してからお礼を伝える
冒頭には、「ありがとう」よりも、先に不備を認め、謝罪する一文を。最後に契約のお礼を述べると、一筆箋としてきれいにまとまるでしょう。

▼指令2
自分の不手際で、5、6枚の契約書を書きなおしてもらわなければならないことに。相手は忙しい50代男性。お怒りの様子で電話に出てくれません。菓子折りに同封する謝罪文を書いてください。

(※1)謝罪に始まり、謝罪に終わる構成に
怒っているであろう相手に対して「平素より格別の……」の文言は、火に油を注ぐようなもの。まずは謝り、謝罪で終わるのが、鉄則です。

(※2)失敗の原因をあやふやにしない
原因もわからず謝罪しているのかと、さらに怒りを買うかもしれません。不手際や失敗などミスの原因を端的に伝えましょう。

(※3)自分を落として、人情に訴える
「一社会人として恥ずべき行為」と多少オーバーな表現で人情に訴え、「もういいよ」と思わせましょう。怒っていても相手は同じ人間です。

(※4)重く受け止め、対応する姿勢を見せる
軽く扱われていると感じると、怒りは収まりません。「会社として対応策を考えている」と、失敗を真剣に受け止めていることを伝えましょう。

言い訳をせず、100%謝ることに徹しましょう

僕が請け負うわび状は、企業が大失態をしたときのような厳しいものがほとんどで、短文のわび状の経験はないのですが、いずれの場合も鉄則は、おわびに始まり、おわびに終わることだと思います。

杉本さんの文章は全体的には悪くなかったのですが、どちらも挨拶から始まっていた点が気になりました。自分が相手の立場になったときに、こうした手紙が来たらどう感じるでしょうか。何も思わない人もいるかもしれませんが、なかには、「お申し込みのお礼をしている場合じゃないでしょ」と思う人もいるかもしれないですよね。ここは、謝罪から始めましょう。

避けたほうがいいのは、言い訳と、相手のせいにすることです。謝罪文にあった「何度かお電話をさせて頂きましたが、タイミングが合わず」という部分は嫌みにもとれるので、省いたほうがよいのでは。

忙しい相手には時間を奪ったことへの謝罪もさりげなく伝えましょう。

中島泰成
代筆屋、行政書士。小説『代筆屋』(辻仁成著)をきっかけに代筆業をはじめ、テレビ、新聞などで紹介。「告白」「復縁」「お礼」「謝罪」「遺言書」など、あらゆる分野の相談を受ける。著書に『プロの代筆屋による心を動かす魔法の文章術』。