2016年12月13日と14日、外務省による「国際女性会議」(WAW! 2016)が東京・グランドプリンスホテル新高輪にて開催された。女性の活躍推進にあたって、どんな議論が繰り広げられたのか。その内容をレポートする。
(写真左上から時計回りに)1日目にプレゼンをした安倍総理、小池都知事、経団連の榊原会長、ヌクカUN Women事務局長、インスタグラムCOOのレヴィーン氏。
WAW! を知っていますか?

▼どんな意味?
国際女性会議(World Assembly for Women)の略称。日本の女性分野に関する取り組みを国内外に発信するため、安倍総理大臣のイニシアチブで2014年に1回目を開催。今回は3回目。
▼内容は?
世界各国から政治、ビジネスなど、各界のリーダーや有識者を招いて、女性の活躍促進のためのアイデアを、東京から世界へ発信します。基調講演、パネルディスカッション、ラウンドテーブルなどさまざまなプログラムが用意されています。
▼参加する人は?
世界のさまざまな国や地域、国際機関から女性の分野で活躍するトップリーダーが参加。一般の人も事前申し込みによって傍聴することができます。今回は約800人が参加しました。

テクノロジーが女性に力を与えている

3回目となる「WAW!」のテーマは「WAW! for Action」、つまり「行動するWAW!」だ。「女性活躍について議論する段階は終わった。行動に移そう」とのメッセージが込められている。

2016年12月13日・14日に行われた公開フォーラムには、一般公募参加者も含めて約800人が参加。冒頭のスピーチで安倍晋三総理大臣は、長時間労働の是正に向けた関連法案の国会提出、「働き方改革」の実行計画作成、子育てのために仕事を辞めた女性の再就職支援などの取り組みについて発信した。

なかでも注目を集めたのは「男の産休」だ。安倍総理は、「妻の出産直後の休暇、いわば『男の産休』の取得を推奨する」と宣言。「隗(かい)より始めよ。妻が出産する国家公務員には全員、妻の産休中に数日間の休暇を取得してもらいたい」と述べた。

2016年度の国家公務員男性の、5日間以上の「男の産休」取得率は、前年度に比べ6.1ポイント増えたものの、30.8%と3分の1以下。安倍総理大臣の「宣言」によって、官民ともに取得に弾みがつくことに期待したい。

基調講演を行ったのは、インスタグラムの最高執行責任者(COO)マーニー・レヴィーンさんだ。レヴィーンさんは11歳の息子が、「今のお母さんの仕事で好きなこと」として、「家にいてくれること」と答えて驚いたというエピソードを披露した。「2009年、オバマ政権下で国家経済会議の首席補佐官をしていたときと比較しているのだと思う。当時は、一日中オフィスで働いていたから」

しかし、「息子は気付いていないかもしれないが、働いている時間数は、いまもホワイトハウスにいたときも、ほとんど変わらない。ただ、いまは家事の合間に自宅で仕事ができる。働き方が変わったのだ」と、テクノロジーの進歩が、より柔軟で効率よい働き方を実現していると話した。

レヴィーンさんはこのほか、インスタグラムに作品を載せたことがきっかけで会社員からイラストレーターに転身した日本人女性や、インターネットで情報を発信し、サウジアラビアでボクシングトレーナーになった女性の例も紹介。「テクノロジーが仕事のあり方を変え、女性に力を与えている」と述べた。

「東京都の職員の約4割、管理職の19.3%が女性で、全国の都道府県ではトップ。国や民間企業に比べても女性比率が高い」と話したのは、小池百合子都知事だ。都庁の午後8時以降の残業禁止などの取り組みについて紹介し、女性の活躍を推進するうえで「一番重要なのは働き方改革。長時間勤務は、女性が働き続けるうえでの大きな壁になるだけでなく、働く人すべてのスキルアップの時間も奪う」と強調した。

取得にうしろめたさ。「育休」の名前を変えるべき

2日目の14日は、「STEM(科学・技術・工学・数学)分野における女性の人材育成・活躍推進」「平和・安全保障における女性の参画とエンパワーメント」などの5つのテーマに分かれて、ハイレベル・ラウンドテーブルが行われた。

国や立場、性別の異なる有識者がそろって意見交換。各界のリーダーたちの生の声が聞けるとあって、一般参加者は立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。

「ワークライフ・マネジメント2.0」では、ウガンダ、スウェーデン、アメリカ、日本などで企業経営や政治に携わる男女15人が、柔軟な働き方を促進するうえでの課題や、克服するための方策などについて意見を交換した。

参加者の一人、イー・ウーマン社長の佐々木かをりさんは「育児“休業”という呼び名が良くない。周囲に休息をとっているような印象を与え、取得にうしろめたさを感じてしまう」と指摘。女性はもちろん、男性にとっても取得の壁となっているとの考えを述べた。育休は、地域社会への貢献について学んだり、社会的弱者への配慮について思索を深めたりする機会になるため、「たとえば『ダイバーシティ研修』など、別の名称にしては」と発言した。

約3時間にわたったハイレベル・ラウンドテーブルでは、それぞれのグループで意見交換を行った後、提案をまとめ、この日最後のプログラム、クロージング・セッションで発表した。その一つ、「女性のリーダーシップの推進」のグループでは、組織が女性の活躍推進に透明性を持ってコミットする、企業経営を担う女性のロールモデルを発掘する、管理職・役員候補者の女性を増やすための研修プログラムを提供する、などの取り組みを提案した。

日本も頑張っているけれど他国はもっと頑張っている

世界経済フォーラムの16年版男女格差(ジェンダーギャップ)指数で、日本は対象144カ国のうち111位と、前年に比べて10も順位を落として過去最低となっている。小池都知事が初日のスピーチで指摘した通り、「日本も頑張ってはいるが、他の国はもっと頑張っている」ということなのだろう。

会場では、15年のWAW!での議論や提言が、どのように16年の日本政府の取り組みに反映されたかをまとめた文書が配布されていた。WAW!が今後さらに、日本政府のコミットメントを示すだけでなく、具体的な施策の進捗や効果を確認するイベントとなることを期待したい。